1.プロローグ~キャラメイク
長いので、次話の前書きにいい加減なあらすじ書きます。
2018.10.2 長かったので、無駄な部分を大幅削除しました。
「はじめまして」
「…へ?」
どこだここ?
真っ白で何にもない場所。
目の前には、カッチリとしたダブルスーツを着込んだナイスミドル。
「突然のことで驚かれていることでしょう。今の状況をご説明させていただきます。
ここは、世界と世界の狭間のような場所です。あなたにお願いがあって、この場所に来ていただきました。
これからあなたには、あなたが住んでいた世界とは別の世界に行っていただき、思うままに生活して頂きたいのです」
な、なんと………
「異世界転移ですか!!!ぃやっほーう!!!」
つらい現実から逃れるためにゲームやラノベを読み漁り、主人公に自分を重ねて妄想しまくっていた俺、富毛受 魂、31歳。
とうとうチャンスが巡ってきた。
「喜んでいただけて大変結構です。
今なら元の世界にお戻しすることも出来ますが、ご協力いただけると考えてよろしいでしょうか?」
「はいっ!もちろ…
いや、ちょっと待ってください!もう少し詳細を聞いてから判断しても良いでしょうか?」
まてまてまて、転移はチートとセットが主流とはいえ、そうではないパターンもあり得る。
老いを感じ始めた引きこもり気味の白豚が備えもなく異世界に行ってしまったら、即ゲームオーバーだ。
「そうですね。では、次の世界について簡単に説明させていただきます」
説明によると、
・異世界にはモンスターと呼ばれる、生き物の天敵が存在する
・彼らへの対抗手段として、生き物たちは、ステータスやスキル、装備といった様々な恩恵を所持している
・スキルも何も持っていない俺のために、今回の転移では、5つのスキルと1つの装備をもらって転移できる
「ちなみに、どのような恩恵でしょうか?」
「まずは、言語能力をあらかじめスキルとしてお渡ししておきます。
次に、アイテムボックスです。過去の転移では、多くの方がこのスキルを希望し、また、希望しなかった方々も転移後にアイテムボックスを取得しなかったことで大変ご苦労されているケースが多くみられたため、今では必ず付与するようにしております」
過去にも転移者がいたのか。
「残り3つのスキルと1つの装備に関しては、転移される方それぞれのご希望を聞いて付与することになります。存在しないスキルであっても、内容によっては対応させていただきます。
いかがでしょう?ご活躍いただけるよう、かなり強力な恩恵だと思いますので、ぜひご検討いただきたいのですが…」
希望によってはオリジナルのスキルも付与できるのか…
「付与できるスキルですが、何か制限はありますか?
たとえば、見るだけで相手を殺すスキルとかは?」
「申し訳ありませんが、やはり限度はあります。
我々は世界の管理を任されている存在。あまりにバランスを欠いた恩恵を付与することはできません。例えば、最強の魔法を無限に使う、というオーダーは不可です。過去の例でお話すれば、そういったご希望の場合には、人間の平均値と比べてとても大きな魔力とMP、いくつかの高レベルな魔法関連スキルを持って転移する、という状況を3つのスキルの枠で実現することなりますね。それでも、人類トップクラスのステータスと魔法をあらかじめ所持して転移、ということですから、恩恵としては文句なしに強力です」
なるほど。制限内でどんなスキルと装備の組み合わせにするか…
やはり安全第一の回復魔法特化だろうか、いや、某忍者お得意の影分身での特訓も捨てがたい…
「ぜひ受けさせていただきます。それで、転移先の世界やスキルなんかの仕様についていろいろ聞かせてほしいのですが……」
その後、1時間ほどかけて、異世界の仕様を確認していく。
ずいぶん細かいことも質問したが、管理人さんは嫌な顔もせず丁寧に応対してくれた。
「最後に、これまでの転移者たちについて聞いてもいいですか?どんなスキルが人気だったか、とか、転移後の失敗で多いのはどんなことか、とか」
「他の転移者の情報ですか…
そうですね。あまり他の方々の詳細な情報をお伝えすることはできませんが、特定の誰かではなく一般的な傾向程度ならお話しても問題ないでしょう。
まず、人気といえばやはり魔法関係ですね。特に、けがや病気を心配して回復魔法、火力の高い火魔法、用途の多い水魔法が人気です。
あるいは、気配を遮断して相手に気付かれないようにするスキル構成や装備は希望される方が多いですね。
あとは、生産関係でしょうか。栽培や製薬、鍛冶などですね。スローライフを、とおっしゃられて、自給自足を目指す方は何名かいらっしゃいました。
それから、失敗例ですか。
能力の種類にかかわらず、傍若無人なふるまいをして同族から疎まれる方は一定数いらっしゃいますね。特に男性の方は、女性を多く囲もうとして恨みを買うケースが多いです。
あとは、やはり死因として一番多いのは魔物との戦闘でしょうね。皆様の世界の遊戯から得た知識に惑わされることが多いように思います。弱い魔物だろうと油断していたり、探索の準備を怠ったり。
例えば、転移者の方々は状態異常を軽んじる傾向が強いように見受けられますが、実際には状態異常はかなり強力です。初心者のうちに毒を受けて、何もできずに死亡するケースはとても多い」
状態異常の影響はゲームによるからなぁ。確かに有名どころのゲームしかやったことない人は、毒なんて軽いアクセント程度にとらえるかもしれない。終盤にはほとんどかかんなくなるし。ものによっては、致命傷になるようなゲームもあるんだが。
しかし、状態異常か……
おっと、ずいぶん長々と話しこんでしまったな。時間制限がなくてよかった。
「そろそろよろしいでしょうか。次の部屋にスキルを付与する担当がおります。そのものに希望スキルを説明して頂ければ、確認や調整をしてくれるでしょう」
「了解しました。では、長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。頑張ってみようと思います!」
「いえ、こちらこそ、冷静にお話を聞いてくださったおかげで、スムーズにご説明差し上げることができました。あなたの来世が幸せであることを願っています」
ナイスミドルが手を振ると、真っ白な部屋に、木製のドアがポツンと現れた。
次はこっちに行けばいいのだろう。
コンコン
「失礼します」
一応ノックして、中からの応答を待つ。が、特に返事がない。おそるおそるドアを開けて、中をのぞき込む。
そこは、さっきと変わらず、真っ白な空間が広がっている。
「早くこっちに来なさい」
部屋の中には、金髪で、両耳のあたりで髪を縛った美人の女の子がイライラした様子で腕を組んで立っていた。
あれはツインテールと呼ぶのだろうか、などとどうでもいいことを考えながらドアをくぐり、閉める。
「初めまして。このお部屋でスキルを頂けると聞いたのですが…」
「ええ、そうよ。というかずっと待ってたのよ。ずいぶん手間取ってたわね。スキルの詳しい話はこっちでもできるんだから、ちゃっちゃとくればいいのよ」
どうやら少しせっかちさんのようだ。
「それで、どんなスキルにするか決めてるの?具体的に決まってないなら相談に乗るけど」
「はい、まず1つ目のスキルですが、欲しいのは、状態異常に対する備えです」
「ふむ………
いくつか特定の異常に絞れば無効化することは可能ね。それでも、2つか3つってところだけど。初心者が受けやすい毒とか、睡眠、混乱なんかがいいかなぁ。全部の状態異常を防ごうとすると、さすがに無効化は無理ね。せいぜいかかりにくくなるって程度」
「……うーん。思ったより弱いなぁ…例えば、全部の状態異常の効果を反転したりとかってできないですかねぇ?」
「反転?毒で回復するってこと?いや、無理よ。さすがに強すぎるわ。スキル枠3つ全部使ってもできないわね」
どうやら今まで希望した人はいないみたいだ。ちゃんと前例はあるのに(なろう小説の中でだけど。)
まぁ、俺も初めて見たときは、その発想に感動したからね。なかなか思いつくことじゃない。
「状態異常に対して危機感を持つのは正しいけど、全部の異常を1つのスキルでいっぺんに、というのは少し乱暴よ。
本来は、戦う予定の魔物の情報を手に入れて、受ける可能性の高い異常に絞って装備やアイテムで対処するのよ。もちろん不測の事態はあるだろうけど、そのためにパーティを組むんだし」
「でもなぁ、心配なんですよ。死にたくないですし。困ったなぁ……」
「いや、困ったなぁって言われてもね。
うーん、ちょっと待ってよ………
例えばだけど、何かペナルティや制限を付ければ、できなくはないわね。たとえば、全ステータスが成長しないとか、魔法スキルが一切使えないとか。
でも、そういうスキルって、結局使いづらかったりするものよ。あんまり致命的なペナルティだと、そもそもまともな生活すら送れなくなるかもしれないし」
目をつむって、一生懸命考える仕草をしながら説明してくれる。怖い人かと思いきや、面倒見がいい人なのかもしれない。
「制限っていうと、例えば装備が1つしかできない、とかはどうですか?次の世界では、装備も非常に重要な要素だと聞きましたけど…」
「装備が一つて…
あなたさっきから極端過ぎよ。出来る出来ないで言えばできるけど、装備が1つしかないなんて、まともな戦闘にならないわ。武器だけあっても生身の身体を殴られたら掠るだけで終わりだし、防具一つで何もかも出来る訳じゃないんだから。生産活動でも装備は関わってくるんだから、すごく思い枷になるわよ」
今度は呆れた顔でこっちを見てくる。
しかし、できるそうだ。よかった。当初予定しているプランでいけそうだ。
そのあとも思いとどまらせようといろいろ説明をしてくれるが、俺の意思は固い。ありがたいことだが、是非に、とお願いする。
「……はぁ。わかったわよ。
ちょっと待って……」
また考える仕草をする金髪美人さん。5秒ほど考え込んだかと思うと、1枚のメモ紙が目の前に現れる。
「読んでみて」
ユニークスキル:状態異常反転
・あらゆる状態異常に対して耐性がある
・耐性の程度は装備の数が少ないほど高まり、1つだけの時、最大となる(反転する)
「そんな感じにしたわ。どう?希望通り?」
「はい、ばっちりです」
「はぁ、後悔してもしらないんだから…」
そんなことを言いつつも、心配そうな様子でこっちを見ている。
「……
…
それから、少しだけど、コストに余裕があるわ。スキルはこれ以上弄り様がないから、何かリクエストはある?」
「コスト、ですか…」
「ええ。ペナルティがすごく大きいからね。要は、私の権限でもう少し後押しできるけど、何か希望があるなら聞いてあげるってこと」
状態異常の反転だけだと絶対無理なのに、装備が1つだけ、という制約が付くと逆にコストに余裕があるとは…
装備ってそんなに重要視されているのか。少し心配になってきた…
最初少し楽になるように、お金や食べ物をアイテムボックスに入れてくれるよう頼んだが、それはサービスでやってくれるらしい。
思いつかなかったので、若くて元気な状態で転移させてもらうことになった。
「それじゃぁ、この部屋ですべきことは全てやったわね。
……
心配だけど、すんごく心配だけど、ま、あなたの来世が幸せであることを願ってるわ」
金髪さんがそういうと、またどこからともなく木製のドアが現れる。
「お世話になりました。何かご迷惑をおかけしたみたいですけど…」
「いいわよ。勝手に心配しているだけなんだから。苦労することがあるかもしれないけど、頑張んなさいよ」
やっぱりいい人だったみたいだ。
頭を下げて、次のドアに向かう。
コンコン
「失礼しまーす」
先ほどと同様、何の反応もない。
恐る恐るドアを開けて中を覗くと、さっきとそっくりの金髪の女の子が静かにこちらを見ていた。
特に反応もないので、勝手に中に入らせてもらう。
真っ白な部屋に浮かぶ、金髪美人さん。よく見ると顔立ちはさっきとほとんど同じだが、髪型は、長い髪を首の後ろあたりで一つに束ねている。
あれはポニーテールというのだろうか、としょうもないことを考えながら声をかける。
「あの、初めまして。スキルを頂きに来たのですが…」
「…
もう決めた?」
「え?」
「スキル」
「あ、ああ。はい、もう決めてあります」
今度はあまりしゃべらない人のようだ。さっきみたいに怒らせるのも申し訳ない。さっさと本題に入るのが吉だろう。
「ステータスやスキルの成長が早くなるスキルはもらえますか?」
「……
可能。希望の多いスキル。だいたい、倍率は2倍程度」
「2倍か…」
「不満?」
「もう少し倍率を高くすることはできないでしょうか?例えばペナルティを付けるとか」
先ほどと同じ対応を提案してみる。
「……
出来なくはない。が、おすすめはしない。軽いペナルティではあまり効果はないし、重いペナルティでは使いづらい」
「装備を一つしかしない、とかはどうでしょうか?あるいは、かかっている状態異常が多いほど成長が早くなる、とか」
「……
状態異常に関しては、ほぼ使えないスキルになると思われる。
確かに倍率は確かにとても高くなるが、異常を抱えたまま戦闘や生産活動をすることは、ほぼ不可能。一時的にはできたとしても、スキルを鍛えるためには長時間の訓練が必要であり、そのスキルを運用することは現実的とは思えない。
装備については、戦闘スキルは無理だが、生産活動については、訓練と割り切って装備を減らした状態で活動することで、通常より効率的に訓練を行うことができるかもしれない。しかし、それでも癖のあるスキルとなることは間違いない。やはり、おすすめはしない」
「でも、倍率は上がるんですよね?」
「……
状況次第ではかなり上がる。少なくとも、装備を1つに絞って状態異常を1つでも受ければ、それだけで2倍をはるかに上回る」
「なら、それでお願いします」
「……」
「お願いします」
「……警告はした」
そういいながら、やはり金髪2号さんは目をつむる。と、再び目の前に紙が1枚現れる。
「……
読んで」
ユニークスキル:成長促進
・ステータス、スキルレベルの上昇速度にプラスの補正を加える
・補正量は、装備の数が少ないほど、本人に付与されている状態異常の数が多いほど大きくなる
「はい。問題ありません」
「……
分かった。ここでの作業は終わり。次に行くといい。あなたの来世が幸せなものであるよう願っている」
「あ、はい。どうもありがとうございました」
そして、どこからともなくドアが現れる。
というか、少し目を離したすきに、すでに金髪2号さんは消えている。
そんなに俺に興味なかったのだろうか…
若干ショックを受けながら、次のドアに向かう。
コンコン
「失礼しまーす」
「どうぞ~」
お、返事があった。
「入りまーす」
声をかけながら、ドアを開ける。
中をのぞき込むと、またしても金髪の女性が、こちらを見てニコニコ手を振っている。
三つ子だろうか。
「スキルを頂きにまいりました」
「ようこそいらっしゃいました。どのようなスキルにするか、もうご自身でお決めになられていますか?」
今度の金髪さんはずいぶんと親しげだ。なんというか、お姉さんタイプ。
「はい。ある程度決めているので、可能かどうか教えて頂けますか?」
「はい。どんなスキルをご希望でしょうか?」
「攻撃を強化するようなスキルが欲しいのですが…
攻撃すると、敵に状態異常を与えることができるようなスキルは可能でしょうか?」
「状態異常ですか。できますよ。どの異常を付与しましょう?」
「えっと、全部です」
「え……?」
「全部です。無理でしょうか?」
「うーん、さすがに全部は強力過ぎますね。無理にやったとしても、付与確率はほとんど0%でしょう。
ただ、複数の状態異常を発生させる攻撃自体は存在します。もちろん非常に強力なモンスターが行う行動ですが、あなたが使えるようスキルを作ることは可能です。全部の状態異常とはいきませんし、すべての攻撃に付与するような汎用性はありませんが、攻撃手段としてはかなり強力です。いかがですか?」
モル〇ルの臭い息みたいなものかな。
「できないですか、うーん。あ、だったらペナルティもつければどうでしょうか?例えば、装備が1つしかできないとか、自分にも状態異常が100%付いちゃうとか」
またしても同じ提案をしてみる。
「ペナルティですか…
うーん、できなくはないですが、少し調整が必要でしょうね。えっと、ちょっと待ってくださいね」
そういって、金髪お姉さんは目をつむり、考えるような仕草を始める。
そして、10秒ほどたった後、3度目となるメモ書きがヒラヒラと目の前に落ちてきた。
ちなみに、さっき手に入れた2枚の紙はいつの間にやらポケットから消えていた。
ユニークスキル:状態異常付与
・過去経験した状態異常を自身に付与することができる
・自身が状態異常に陥っている場合、攻撃行動に状態異常付与効果が追加される
・装備の数が少ないほど、状態異常の付与確率が高くなる
「どうでしょう?
やはり、すべての攻撃行動にすべての状態異常を付与する、というのはあまりに強力過ぎます。
ですので、自身の経験した異常のみ、また先に自分が状態異常に陥る必要がある、というスキルにしました。
正直、使用が難しいスキルとなるので、あまりお勧めできません。
今ならまだ変更は可能です。汎用性の高いいくつかの状態異常に絞るだけでも、かなり使い勝手のいいスキルになると思うのですが…」
「いえ、ばっちりです。これでお願いしようと思います」
「うーん、大丈夫でしょうか…」
「はい、文句ありません」
「……
はぁ、わかりました。ではこれで作成させていただきます」
金髪お姉さんは、困ったような顔をしながらもOKをくれた。
「ありがとうございます!!」
「いえいえ、あなたの来世が幸せなものでありますように」
またも木製のドアが現れる。
ようやく最後のスキルを作成し、装備作成に移ることができるようになった。
コンコン
「失礼しまーす」
「おう、入れや」
お。これまでとは違い、野太いおっさんの声が聞こえた。
どうやら四つ子ではなかったようだ。
4度目となると慣れたもの。遠慮なくドアを開いて中に入っていく。
中には、相変わらずの真っ白い部屋に、背の低いムキムキ髭もじゃのおっさんが立っていた。
「初めまして。装備を頂けると聞いてきたのですが」
「おう。どんな装備にするか見当は付けてんのか?」
「はい、できるかわかりませんが、大まかには。
やはり長く使いたいので、できるだけどんな状況でも使える武器にしようかと思うんですが」
「武器か。まぁ、最初に持つ装備になるからな。いいんじゃないか。で、何にする?おすすめは槍だが、剣なんかも使いやすいぞ」
「いえ。武器です」
「おう、武器な。種類は何にする?」
「いえ、武器です。必要な時に必要な武器種に変わるような装備が欲しいのですが。あと、あらゆる補正や属性がまんべんなく手に入るものがいいのですが……」
「……
は?いや、お前、それはいくらなんでも無茶が過ぎるってもんだよ。無理にそんなもん作っても、ゴミみてぇな性能にしかならねぇぞ」
「え?そうかぁ、難しいですか…
あ、だったら、例えば、ペナルティとかあればどうでしょう? これ一つしか装備出来ないとか、状態異常にかかっていれば性能が上がるとか」
ここでもさっきと同じ提案。
「いや、そりゃできなくはないが… 逆に使いづらくなるぞ。長く使うどころか、ほぼ使える状況はないんじゃないか」
「そうですか?切り札的な使い方出来そうじゃないですか?ピンチの時にだけ使う最強武器、みたいな」
「うーん、正直、とても使える代物じゃないと思うが… ちょっと待ってろ」
そう言ってドワーフさんは、目をつむって独り言をブツブツつぶやき始めた。
いや、ドワーフかどうかは知らんけど。
1分近くたったころ、目の前に見慣れたメモ書きが落ちてくる。
変幻自在(ユニーク武器)
・攻撃力、防御力、全ステータス、全属性に補正
・使用者の希望に応じて形状変更可能
・性能は、装備の数が少ないほど、かかっている状態異常が多いほど良くなる
「文章だと伝わりづらいだろうが…
性能の目安だが、装備をこれ一つにしても、大した性能にはならんぞ。
初心者向けの装備でも、普通に全身に装備をした方が強くなるはずだ。1つ状態異常にかかってれば、ようやくおんなじくらいだな。
……
悪いことは言わねぇ。
いろいろ凝ったことをしたい気持ちはわかるが、普通の武器を作った方が良いぞ。
特殊な効果を付けなくても、これよりは長く使える武器になるだろうさ」
「いえ、理想的な装備です。本当にありがとうございます!」
「いいのか…?
いやまぁ、希望を叶えるのが俺の仕事だから、お前が良いってんなら良いんだが…
じゃあ、ここでの作業は終わりだ。
お前の来世が幸福であることを願ってるよ」
ようやく全部の設定が完了した。キャラメイクはこだわり始めるとどんどん時間が過ぎていくな。
それにしても、みんな親切な人達で助かった。
そして、再びドアが現れる。
もう慣れたものだ。これをくぐるといよいよ転移だろうか。
念のため、ノックしてみる。
コンコン
「どうぞ」
お。返事があった。あの声は最初のナイスミドルさんかな。
「失礼しまーす」
ドアを開けて中に入っていく。
予想通り、最初に説明をしてくれたおじさんが立っている。
「お疲れさまでした。いよいよ、次の世界へ転移して頂くことになります。スキルや装備はご満足いただけましたか?」
「はい、皆さん良くしてくださいました。ありがとうございました」
「いえ、ご満足いただけたようで安心いたしました。
それでは、名残惜しいですが、そろそろ転移を開始いたします。
あなたの来世が幸せなものとなるよう願っています」
「お世話になりました。いってきます」
真っ白な光があふれ、まぶしくて何も見えなくなる。思わず目を閉じて、光が収まるのを待つ。
……
30秒ほど待って、目を薄く開いてみる。
白い光はすでに収まっている。
無事、転移は完了したようだ。
見知らぬ場所に立っている。気温は、暑くも寒くもない。足元は3メートル幅ほどの道になっているが、周りはひざ下くらいの高さの草原になっている。
どうやら、小高い丘の上のようだ。見渡すと、遠くの方に街や森、山が見える。街の近くに転移できたようだ。
「ステータス」
目の前に半透明のステータス画面が表示される。
管理人さんに聞いた通り、好きな時に自分のステータスを確認できるようだ。ちなみに、声に出す必要はないらしい。
俺は時間をかけ、考えに考えて設定した、他の人からはわかりづらいこだわりのマイスキルとマイ装備を確認する。
ユニークスキル:
状態異常反転
・あらゆる状態異常に対して耐性がある
・耐性の程度は装備の数が少ないほど高まり、1つだけの時、最大となる(反転する)
成長促進
・ステータス、スキルレベルの上昇速度にプラスの補正を加える
・補正量は、装備の数が少ないほど、本人に付与されている状態異常の数が多いほど大きくなる
状態異常付与
・過去経験した状態異常を自身に付与することができる
・自身が状態異常に陥っている場合、攻撃行動に状態異常付与効果が追加される
・装備の数が少ないほど、状態異常の付与確率が高くなる
所持アイテム:
変幻自在(ユニーク武器)
・攻撃力、防御力、全ステータス、全属性に補正
・使用者の希望に応じて形状変更可能
・性能は、装備の数が少ないほど、かかっている状態異常が多いほど良くなる
……
さぁ、世界に存在するありとあらゆる状態異常を集める旅が始まるぜ!