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A・WA・I ──自然の歌をうたうもの 毒の歌をうたうもの──  作者: カノウラン
1:天才魔法使いの杖 『魔力の杖』編
14/19

勇者のつくった王国

「ドウシテ…………」


姫を助けたいのか。

アスランまでもが旅に出たのか。

おなじ魔物である自分を恐れないのか。

ハーピィには、わからないことだらけだ。

わからなすぎて、問うべきことが何かも、よくわからない。

それでも口をついて出たことばは、ハーピィの心に湧き出す、彼を知りたいというきもちの現われ。

問えば答えてもらえることも、もちろんうれしかった。

でも、答えてもらえることよりも、おしえてもらえることの方が、ずっとうれしい。

知りたい心に、明確で、嘘のない、彼の真実が返ってくる。

分けてくれているものが何なのか、ハーピィにはうまく言い表せないけれど。

それはきっと、魔物が人間から得られるようなものではないはず。

あるはずのしゅの壁を、なぜか素通りして行き交う、とてもあたたかなもの。

人間同士ならば当然のやりとりなのかもしれないが、ハーピィには、彼らも、彼らのことばも、返る心も、みな奇跡に他ならなかった。


「それは、もちろん──ステラ姫を、お助けしないと」


アスランが真っ先に語ったのは、どうやら、死にかけた兄を見てなお、自分も旅に出た理由のようだ。


「世界一美しいお姫様だっていうしな?」


ハリルのことばに、アスランはわたわたと両手を上下させる。


「そっ、そうらしいけど、そうじゃなくて。父上のひいおばあさんがリオレラ王家の出身で、俺と姫とは、多少なりとも血縁があるというか」


なぜか、アスランの視線がハーピィをまっすぐに見据えた。

間もなく地平に沈みきる太陽に、その横顔は赤く照らされている。


「──魔物を恐れるべからず、っていうのがリオレラ王家の、古くからの家訓らしい。俺たち兄弟もそう言われて育ったし、ステラ姫もきっとそうだったんだとおもう」


どうして姫をたすけたいのか、どうして魔物の自分を恐れないのか──その答えまでも、ハーピィは期せずして知ることができた。


「ソルパーニャ島は、魔王の復活までは人間と魔物が比較的平和に共存している、めずらしい土地だった。というのも、四〇〇年ほど前にリオレラ王国を興した初代国王が、時の魔王を倒した勇者で──彼は五人の……いや五匹の魔物を従えていたといわれているんだ」

「マモノを、シタガエ……?」


従えていた、という関係性がハーピィには理解できなかった。

ただ、勇者の仲間だった、とは言わなかった。

だから、仲間とはべつの何かだったのだ、ということだけはわかる。



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