第一話 んあ?
関白狙ったんちゃうで高校の春。
教室二階の窓から見た校庭には、美しく咲き誇る桜が涼やかな風に追われて、何かを探す旅に出る。
運動場にはスポーツを楽しむ生徒達が汗を流している。
そんな日常に溶け込む生徒達を横目に、歴史の授業が始まっていた。
「おい、石田ー。 次のページ読んでくれるかー」
「あっはい」
おもむろに、俺は名を呼ばれた。 俺は石田三成。 長年の夢でもあった高校生活を楽しみながら、早くも高校二年の春を迎えていた。
え? ああ、なんで大阪に、しかも現代におるんかって?
そんなもん、大人の事情やからあかんあかん。
でやね。
その高校生活過ぎ去る時の早さは火の如しなんて思ってみたりするんやけど、あんまり良い気分ちゃうねん。
なんでかって?
そんなの決まっとるやん……武田くんオコやん! 激オコやん! 卍やん!
とか、ちょっと思い出したりするねんな。
でやね……。
「はよ読めー石田ー」
「すいません!」
先生そんなせきなや! ほんま!
なんで俺を当てんねん……よー当てられるわ。
え……っと、千六百ページやな。
千六百ておい。 刀あったら斬られとるっちゅーねん。
俺振りかぶっておもっくそ斬るっちゅーねん。
「えっと、関ヶ原の戦いとは。 ん? 東軍徳川ぐぬぬと、西軍石田三成様様、この両軍の激しい……いや、石田様様優勢で戦いが始まり、やっぱり途中も優勢で戦った戦いで……こばの裏切りにより、形勢逆転され……されてへんけどね。 いやいや、予定やったし。 そんな気してたし。 みんな言うてたしな」
で。
えらいこの教室全体から激しい圧が俺の体突き抜けるてるやん。
でもやね……。 俺やっぱ続けて読むやんそりゃ読みたいやん。
でもやん、あの先生間違いなく俺になんか言うやん……。
絶対ツッコミ入れて来るわ。
そりゃ言うわな、読み上げたの俺の心の中の言葉やもんな。
しゃーないわこれは、うんうんしゃーない。
「……」
「言わんのんかい!」