異世界邂逅編2
ここから人種差別の描写が増える予定です。
気をつけてお読みください。
『狐』狩りは猟師である。『獣人』を撃ち、殺す仕事だ。現代でいうフードのようなものを頭に被っていて、鼻までしか表情がうかがえない。
彼が狐狩りたる所以は狐の隠れ里を一人で滅ぼしたことに由来する。その時、彼は一匹も狐を逃がしていないはずであった。その驕りがこの仕事を生み出したのだが。
「はあああ。ったく面倒な仕事だぜィ。鬼事は俺には向いてないんだがなァ。雇い主様のご命令ならしょうがねえなァ」
狐狩りは銃を担いで町を歩く狐の臭いは和人のものと違い、独特の獣臭さをもっている。狐狩りはその臭いを探して町を行くのだ。
「あいつは違う、こいつもだァ」
町ですれ違う平民たちの臭いをかぎつつ、臭いの元の狐を追う。
「しっかし町に逃げ込まれると、俺の鼻も見つけにくくなるなァ」
異常な嗅覚を持つ狐狩りでも、やはり多くの臭いと匂いが入り交じる町では見つけ出すのが難しくなるようだ。
「チッ。しょうがねえなァ。『精霊』に聞くとするかァ」
狐狩りは詩を歌う。
「万物に宿る五行の精霊よォ、畏みィ、畏み申し上げるゥ」
狐狩りの周りに人型が現れる。人型には顔は無く、手足は丸くなっていて指も無い。周りの人間には見えていないようだ。それどころか人型をすり抜けて歩いている。
ラァあアああ~♪
歌なのか声なのかわからない音を『精霊たち』は出す。
「いつ見ても気持ち悪りィなァ」
狐狩りは顔をしかめた。精霊は意味が通じているのか、いないのか。音を発し続けている。
「ちッ。『しきふいくう』」
『狐』狩りがそう唱えると精霊たちが急に消え去り、方々から先程の精霊たちの音が響き渡る。2,3分経った頃、一ヶ所に音が集中している場所があった。
「そこかァ!」
路地裏である。この城下町、『三上』は攻め込まれた際に敵を惑わすため各所に道がある。その為、城はあっても道が無い、ということを主軸に作られた。
路地裏では妙な風貌の男が現れた。現代人の服装である。狐狩りは身構えたが、男はそれにも気づかずに人の中に紛れた。
「なんだァ?珍妙な恰好しやがってェ…。まあ、俺が言えることじゃないがなァ」
路地裏には精霊たちが集まっていた。色不異空。精霊を従え、目的のものを探させる下位陰陽術である。
「散れェ」
狐狩りがそう言うと精霊たちは一瞬で消えた。
精霊が消えるとそこには少女が倒れていた。耳、足は人では無く獣のそれだが。
「狐狩りは楽しいなァ、楽しいなァ。なにが楽しいって苦労をして獲物を狩るのが楽しいよなァ」
少女は答えない。答える気力すらないのだろうか。それともこれから起こることを覚悟しているのだろうか。
狐狩りは銃を構える。エルフの銃を改造したこの銃は、長年にわたり狐狩りを支えてきた。
「鬼事は楽しかったかァ?」
少女は面を上げた。死の恐怖からだろう。しかし少女の目の前にある銃口は逃れられない恐怖を示した。
「あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
少女が悲鳴を上げると数人が路地裏を見たが、誰も見て見ぬふりをした。
「なんで…?」
「理由は簡単だァ。お前が獣人だからさァ。まあ町に降りてきてもこんなもんだァ。所詮忌み嫌われるゥ」
カチャカチャ。猟銃のように見える銃を狐狩りは装填する。
「んン?誰だァ?」
狐狩りの背後には人間が立っていた。その場において異様な恰好をした現代人が。
「おいおい、女の子相手に銃とは重すぎやしないかい?」
風の流れが変わり始めた。