噂の学校にて。
【Twitter企画20作目】
赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。赤い液体。
きれいだね。
ある夜の高校3階での出来事。
唐突にそれは始まった。右腕の折れた少女が現れてすぐに。
赤い服。返り血浴びた顔。幼いながら歪んだ笑顔。
それが少女の見た目であった。
僕が出会ったのは3階廊下。その日、財布を忘れた僕はひとりで夜の学校に乗り込んだ。ゆっくり静かに電気は点けずに行動した。警備員にバレたら困る。
そして、その途中。突然目の前に少女が現れたのだ。
少女は口を動かす。
『あーそーぼ?』
一瞬。僕は少女に対しての警戒心を緩めてしまった。相手は子供。そう安心していたのだろう。
僕が一歩近づくと少女はおもむろに手を制服の中にいれた。喉の方から。
そして、出てきたのは肉だった。赤黒く、すこし、鉄の匂いがした。明らかな血の匂いがした。
少女への歩みを止める。
『どーして?』
少女は僕に問いかける。
僕は一歩後ずさる。
『ねぇ、どーして?』
僕はすこしずつ離れながら、いまだにその場からは動かない少女に言った。
「お前は何だ」
誰じゃなく何かをたずねた。これで疑問に思うなら少女は人間だろう。でも、もし少女がそれに疑問なく答えるともはやその少女は少女ですらない化けものである。普通は何とは何だとなるはずだろう。
『わたしはなんでもないだれか。』
僕の言葉がキーワードのように少女は流れる水のようにすらすらと話し始めた。
『わたしにはなまえがない。からだがあってもなにもない。それがわたしであり、それがわたしのいきるいみでもあるのだ。それなのに、なんでみんなわたしをおそうの?なんでらんぼうするの?おかしいよ。』
すこし、様子がおかしい。なにか震えている。怯えているのか?わからない。少女は肉を握りしめて潰した。
ぴたぴたと液体が垂れる。しかし、それは肉の血ではないようだ。それは少女の手から出ているものだった。
肉の中から出てた爪による出血だった。先がとてつもなく尖っている。爪というよりはナイフのようだ。
少女は語りをやめない。
『わたしはなんでもないのに。みんながわたしをいじめるから。じごうじとくっていうことばがあるんだよ。あなたもどうせわたしをいじめる。だったらされるまえにいなくなってしまえ。』
僕は逃げた。なぜかと言われてもなにも言えない。ただそこにいてはいけない気がしたのだ。
少女は背中を見せた僕をただ見ていた。
怖い。僕の中にそんな感情が生まれた。これまで肝試しや、お化け屋敷で感じたそれとはまったくことなる現実味を帯びた感情だ。はじめての感情だった。
僕は走って玄関に向かった。
もう、財布なんていらない。いますべきことは今すぐにこの校舎から出ることだ。よく聞くだろう?地縛霊とか?
たぶんそれだ。わかんないけど。
十数秒後、玄関につくなり、僕はすぐにくつを履き替えて、外に出た。もうこんなところにはいれないんだ。どうせ、明日も学校だし。
外に出ると雨が降っていた。予報とは違ったが、気にしない。
校舎からある程度離れると僕はなんとなく、校舎の4階を外から眺めてみた。
────目。
少女の目がそこにはあった。不気味にそれだけが光を放っている。薄暗く、普段なら見えないようなそんな光だ。
それが僕の方を見てまったく動かないのだ。
でも、僕が気になったのはそれの他にもあった。
「窓が、、、」
窓が赤いのだ。赤い。赤い。真っ赤だ。
そんな真っ赤な窓から少女だけが僕を見ている。僕はそれが見えている。その他はまったく見えないほどに赤なのに。それだけがハッキリと見える。
なんで。なんで見えるんだ。
いやだ。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
それでも僕が正常なのは少女が中にいるからだ。
僕は外。少女は中。
だから僕は逃げれる。
僕は再び前を向いて帰ることにした。
校門まであと10メートルのところ。警備員の声が聞こえた。
「まちなさい」
見つかってしまった。たぶん僕の走る音が聞こえたんだ。
でも、助かった。やっと人に出会えた。この数分が僕には何時間にも感じてしまっていた。それほどまでに僕はまいっていたのだ。
僕は言われた通り止まった。
「きみなにしてたの?」
警備員の口調は存外優しく、安心した。
「財布を忘れてしまいまして」
僕は正直に言った。
「そうか。でも不法侵入のようなものだから気を付けてね」
「はい」
僕は本当に反省していた。こんなことをしなければ僕はあの恐怖に出会うことはなかったのだから。
僕が帰ろうとすると警備員はすこしトーンを下げて言った。
「アレにであってしまったかまずいからね」
「アレ?」
僕は思わず聞いてしまった。
「あぁ。あれ?きみはあの噂を知らないのかい?」
噂なんてこの学校にあっただろうか。
「知らないです」
僕は素直にそう言う。まさかさっきの少女じゃないだろうな。
「しょうがない。教えてあげよう」
警備員はすこし嬉しそうに語りだした。噂が好きなのだろう。
「噂はここ最近に広まったものだよ。でも、内容はそれだけに結構単純な脅かせみたいなものなんだよ。『女の子のお化けが殺しに来る』って感じでね」
女の子。
「真っ赤な女の子さ。なんでも近所で殺人事件があっとそうでその被害にあったお化けらしいよ。まぁ、噂だからわからないけどね。でも、その女の子が人を殺したところを見たって言う人もいるらしいからもしかしたらほんとにいるのかもね」
そんな噂はじめて聞いた。
「でも、噂はまだみんな知らないんだ」
え?僕はこれまでしていた思考を停止し、警備員の方を見た。
その人の手には鋭く光ったナイフが握りしめられていた。
「は?」
警備員が笑う。
「きみが死んではじめて効果を発揮する噂なんだよ」
警備員はゆっくりと静かにそのナイフを僕の腹に突き刺した。
向かい合っていたため、真正面にきれいに刺さる。
「うぅ、、」
血が大量に僕の中から出ていく。温かな血とは反対に僕の身体は冷たくなっていく。寒いのかさえもわからない。
警備員はナイフを僕の腹のなかをぐちゃぐちゃにするように動かしている。
あぁ。もう腹に感覚がない。そもそも腹がどこにあったのかわからなくなってきた。なんでまだ意識があるのかわからない。
ボト。
そんな音をたてて、僕の内蔵の一部が落ちたところで僕の意識はついに落ちた。
永遠の眠りへ。
「これで満足かい?」
私は空に向かって言った。いまはもういない私の娘の方へ。
いつも私は娘に無理をさせてきたのかもしれない。だからあんな事件に巻き込まれてしまったんだ。こいつのせいで。
私は殺した男の髪を持って吊るす。
こいつのせいで私の娘は死んだのだ。人殺しめ。
あのとき、もし私がお使いなんて頼んでいなかったら。
そんなことを私は毎日後悔し続けた。
あの事件は世間一般では事故とされている事件だ。
約1ヶ月前。私は娘にお使いを頼んだ。
「ミカンと食パンだよ?」
私は娘にそう確認してやった。
「うん!」
そう言って娘は出ていった。
そして1時間後。
私が家の前で待っていると向こうの方から娘が帰ってきた。あとは家の前の信号を渡ればお使いは完了だ。よかった。
娘はレジ袋を大事そうに抱えていた。
信号が青になるとわたり始めた───。
そしてあいつがきたのだ。高校3年になるなり、免許を取って運転し始めたなれない手つきの車が勢いよく。
娘を轢いた。
『ぐちゃ』という気持ちの悪い音がした。
私の娘はあいつの車に潰された。
そのくせして、あいつは法律に守られ、逃げた。
簡単に死体は運べた。
手袋は警備員としての服装としてあっているので常日頃からつけている。こいつの死に場所を3階の廊下にするため、そこに捨てておく。
こいつの死によって私の復讐は達成された。あとは私の娘に噂という名の命を吹き込むだけだ。
『ねぇ』
ん?
『ねぇ』
声が聞こえた。誰だ?
『私の名前は?』
後ろを振り返ると私の娘がいた。
『ねぇ、お父さん。私の名前は?』
私は落ち着いて名前を口にした。
「お前の名前は────」
────あれ?
『お父さん、私の名前は?』
あれ?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?
─────思い出せない。
「な、んで、、、?」
思わず声が出る。
目の前の少女は笑った。
『お前が死ねよ』
爪が顔を抉った。
声が出ない。息ができない。目が見えない。
「ァ?」
なんでだ。なんで思い出せないんだ。真っ暗な闇の中思考する。限られた時間を理解しながら確実に。
『死ね』
声が聞こえた。
思考はできずに私は最期に娘の声を聞いた。
『わたしをむしして、わたしをいじめて、さいごはわたしをころした。わたしにあきて、ころした』
『わたしをかんきんしておいて、おとうさんなわけないじゃん。』
ども!記念すべき企画20作目の短編です!
しかも!この企画でいちばん長い短編となりました!
その文字数なんと約3500文字!
こんな感じで頑張れば一応予定としている最後の40作目は5000文字を越えそうですね笑
内容はわかりませんが、、、。
では、今回の短編について。
この短編はホラーとなっております。
怖いと思ってくれたらうれしいのですが
どうでしょうか?
僕なりの『怖い』というものを晒しだした短編となっております!
では!また次機会にどーぞ!