憂鬼亭太白/鳥羽輝人『G-TANK!(ゴーストタンク)-祖父が戦車でやって来る-』
冒頭、物語は昭和二十年、一九四五年の大戦末期、激しい戦闘を終えた直後の戦場から始まります。
ソ連のT-34/85中戦車部隊に、寄せ集めの戦車部隊で善戦した帝国陸軍戦車部隊長、宮坂機十郎中尉。二十五歳の青年将校の青春は、その年の夏とともに終わりを迎えました。
そして、物語は一九九五年、機十郎の孫娘、由機が生きる時代へと移り変わります。
物語は一九九五年のロシアと日本、二つの視点で展開されていきます。
軍事パレード以来、ロシアで続発する、にわかには信じがたい兵器がらみの怪事件。そして日本で、生徒会長に加えて、文芸部の部長をも勤める優等生の女子高生、由機の日常。この二つがこれからどう交わっていくのか? 物語は始まったばかりです。
さて、私がこの『G-TANK!(ゴーストタンク)-祖父が戦車でやって来る-』を推薦する理由、それはいくつかありますが、まずあげられるのは『豊富な研究知識に裏打ちされた、描写の細かさ』です。
武器・兵器というのは、アクションジャンル作品において、切っても切れない人気要素です。
しかし、日本に住む一般的な人間にとって武器・兵器というものは縁遠く、中々、その実際的な知識を知ることは難しいものです。
その点、この作品は登場する兵器一つ一つの情報が細かく、作者の兵器への綿密な研究の気配が感ぜられます。
好きなものについて知識が多くなるのは当然ですが、だからこそ、綿密な研究でより深くしっかりとした知識を得るのは、創作の上で大事なことだと私は思います。
鳥羽輝人氏の作品は、そうした地道な研究の気配を感ぜられ、好印象を持ちました。
また、兵器についてだけでなく、時代考証もきちんとなされており、登場人物たちの周囲、当時の社会的環境なども再現されているように思います。
その点がしっかりしているおかげで、物語の時軸や舞台が大きく動いても、難なく読むことができるのではないかと思います。
こうした研究努力が、情報量・文章量が多くとも、読ませる文章、読ませる作品を作り上げることに成功し、まさしく勇ましい戦車のような重厚感と計算されたかのような緻密さを兼ね備えた文章描写となっているのではないか。
そのように私は考えます。
そうした情報量の緻密さのおかげで登場人物たちも個性豊かで、魅力的です。
以上から、私、憂鬼亭太白は、鳥羽輝人氏の『G-TANK!(ゴーストタンク)-祖父が戦車でやって来る-』、おすすめさせていただきます。
『G-TANK!(ゴーストタンク)-祖父が戦車でやって来る-』
作者:鳥羽輝人
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