憂鬼亭太白/三國 圭『ロスト・エイジ』
研究所と思われる場所の溶液に満たされたカプセルの中で目を覚ました主人公、セロ。
記憶の欠落が見られる彼が目を覚ました世界は、ゾンビなどのアンデッド、またエルフや獣人、さらには魔法といったものが存在する、ハイファンタジーな世界でした。
自分のことについての記憶は失われたセロですが、自分が生きていたと思われる科学で発展していた世界の記憶があり、どうやら物語の時間軸よりも遥か以前の時代の人間である可能性もあるようです。
この点について、私はファンタジーの世界観にSF的要素の融合が見られ、興味深いと思いました。
また、カプセルから目覚めた主人公に偶然、アンデッドの攻撃で自部隊が壊滅しかけていたところを助けられたヒロイン、イルミナ。彼女は、危ないところを助けられた恩義からか、セロを自らの所属する傭兵会社『アースラー』で身柄を保護し、世話をすることになります。
そうした経緯でセロは、右も左もわからない世界で傭兵業に従事することになります。
傭兵会社アースラーでは、セロを保護したイルミナをはじめ、イルミナの長年の相棒で狼タイプの獣人であるバスクや、傭兵会社アースラーにおけるトップランカーであるにも関わらず、いたずら好きなお姉さんといった感じの親しみやすい女性、エレナ、無精髭を生やし、一見だらしなさそうだが切れ者らしい社長のウルスなど、個性豊かなキャラクターたちに囲まれ、時には助け、時には助けられ、絆や信頼を育みながら傭兵として戦い、生きていきます。
現在作品は、エルフの村にて、イルミナの因縁の敵、『真紅のフードの男』、ゼイナードとの死闘から、物語がさらに新しい方向へと動き出そうとしているところです。
魅力的な世界観、キャラクターに支えられた『ロスト・エイジ』が、今後どのような物語になるのか、非常に楽しみな作品です。
また、そうした物語の内容的部分の他に、私個人的に評価している部分があります。
それは『作品における展開と情報量』についてです。
ハイファンタジーという物語のジャンルの特性上、必然的に説明すべき情報・設定は多くなるものです。
そのため、こうした作品は、情報をどの時点でどこまで開示するのか、非常に気を使う必要があり、難しいものです。
しかし、この『ロスト・エイジ』はその点について、非常に優秀で、展開と情報量のバランスが良く、無理なく、スムーズに物語を読み進めることができます。
やはり小説は、人に読んでもらってこそ価値のあるものです。読ませるための工夫、読者が読みやすくするための工夫が見られるというのは、書き手側から見ても非常に好印象なのではないでしょうか?
以上から、私、憂鬼亭太白は三國圭氏の『ロスト・エイジ』、おすすめさせていただきます。
『ロスト・エイジ』
作者:三國 圭
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