足軽三郎/留龍隆『明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア』
副題:『峻烈たる異能バトルと人情の交差点が見せるは、明治という時代に鮮やかに咲く華の生きざま』
ギヤマンの薄い板を通して見る風景にも似て、この作品が読後に与える印象はいい意味ではかない。ああ、そう、美しいのだ。ユラリと漂う陽炎のように心を掠めていく。掴まえようとすれば逃げてしまいそうな……そこにあるのにどこかもどかしい部分がこの作品にはあるんだ。
ただし、そんな不確かな美しさは確固たるストーリーと精緻なキャラ設定という土台があってこそ成立する。
時まさに時代が目覚めようとする明治。架空の島に追いやられた罪人達が四つの勢力に分かれ、人々はその行く末を巧みに行き交って生きてきた。
"殺し屋殺し"を掲げ、この物騒な島に生きている一人の美少女。その手には傘に偽装した一刃。その身にはある秘密。
少女の傍に控えるは銅貨幣と鋼糸を武器とする一人の青年。その眼差しは常に少女を案じて止まず。そして彼にもある秘密。
島を巡る陰謀と二人の秘密が絡み合い、展開されるは血風舞う戦いの舞踏。脱落者には死の抱擁がお待ちかね。
戦う者一人一人の信条が貴方の心に余韻を残し、斬線の一本一本にキャラの魂が響く。そんな小説を読みたくないか? もしもYesと言うならばページをめくっていただきたい。超一流の和風スチームパンクが鮮やかに広がると保証しよう。
『明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア』
作者:留龍隆
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