選評/月華 翆月
本作品に掲載されているのは、一言紹介の分を含めた二十九作品の小説と作品の素晴らしさを語る言葉達。
その全てに読み手であり書き手である人々の想いが詰まっている。
勿論、その全てにその書き手──作者様の個性が光り、紹介されている作品にも様々な色がある。
賑やかであり、華やかなこの雰囲気は、長く、短く、語られた言葉達の持つ力だろう。
寄せられた全ての作品紹介の文は、その作品の持つ雰囲気を壊さないように丁寧に、かつ読み手が興味を持つよう、様々な趣向が凝らされている。
時には短いもの、時には長いものとその語る言葉は色々だが、其処から伝わって来るモノは必ずあるはずだ。
短い期間でこれほどの言葉を寄せて下さった参加者の皆様には、感謝申し上げると共に、その思いの強さと技術に拍手を贈らせて頂きたい。
さて、今回審査対象となる二十五の傑作達の中で特に私が気に入った作品を三つほど紹介させて頂く。
一つ目は「足軽三郎/留龍隆『明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア』」だ。
本作で最初に紹介されているこの作品、本文もそうだが、副題が更に良いと思う。
足軽氏は、作品紹介にて「はかない」また「美しい」と最初に話し、徐々にその世界を語っている。
其処にあの副題、特に「華の生き様」というのは、なんとも心惹かれるモノがあった。
華がはかなくも美しいのは、きっと誰しもが知っていることだろう。
それなのに何故? そんな事を思わせ、作品の持つ世界へ旅立ちたくなるあの雰囲気は良いものだと思う。
そして、二つ目は「太ましき猫/深江碧『空の座』」だ。
この作品で語られているのは、一つの世界と主人公の情報、そしてその先にある期待だと思う。
散りばめられた言葉の中に見え隠れする作品を読んだ時の想いとその世界を創りだした作者に向ける期待……。
太ましき猫氏は最後の部分でその作品を「大好き」と語り、主人公の前へ進んでいく姿を「見届けたい」と語っている。
その言葉が、モノを書く人間にとってどれだけの喜びをもたらすか、想像するのは決して難しいことではないだろう。
だからこそ、この言葉を向けられた作品がいったいどれだけ素晴らしいのか、興味を持たずには居られなかった。
そういう点において、太ましき猫氏のこの紹介文は、とても素晴らしいモノだと思う。
さて、最後。
三つ目の作品は「呂彪 弥欷助/にゃん椿3号×オカザキレオ『黒猫と青猫のワルツ』」だ。
この作品は、恐らく紹介文らしい紹介文だと思う。
紹介している作品は上記二つと違うジャンルのものだが、だからこそ……なのだろう。
タイトルにある「ワルツ」という語を使っての紹介、さり気なく誘う言葉達。
短く、分かりやすく纏められたその世界から、紹介された作品の世界へと行きたくなるのは、極々自然のことなのだと思える程に、この紹介文は「らしさ」があると思った。
長々と書いてきたが、最優秀賞は誰の手に? と思う方も出てきているであろうから、早速話させて頂く。
最優秀賞は「本宮愁/こっこ『ルーフェイア・シリーズ』」である。
これは、私だけでなく他審査員も主催も同じ事を言っていた。
何が言いたいかといえば、上記三作品と違い満場一致だったということだ。
本宮氏の紹介文は正直に言えば長い。どの作品の紹介文よりも長い。
だが、不愉快な長さではない。尤も、これは私の個人的な感じ方だが……。
語られているのはタイトル通りシリーズ化している作品の世界……だけでなく、本宮氏の『想い』だ。もしかしたら、本宮氏の『想い』の方が語りとしては長いかもしれない。
だが、それも仕方の無いことだろう。
いかにその作品が素晴らしいか、自分が衝撃を受けたのか語っているのだから。
語る言葉一つ一つに見え隠れする『心』。
ソレは、どの紹介文よりも強く、熱く、雄弁に語りかけてきた。
本宮氏は最後にこう締めくくっている「──そのとき初めて、あなたは言葉が宿す力の真価を思い知るだろう。あるいは既に出会ったことのある方ならば、いまさら語るまでもなく、私の心は届いているはずだ。」と……。
きっと、私達審査員と主催はその心を受け取った、もしくはその想いに触れたのだろう。
だからこそ、全員が迷わずこの作品に最優秀賞を、と思えたのだと思う。
もし、まだ本宮氏の言葉に触れていない人がいたら是非、触れて欲しい。
本宮氏のその想いに……。
きっと、あなたにも伝わってくるモノがあるはずだから。




