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なろうレビュー祭り2014  作者: レビュー祭り運営委員会
おまけ!
35/41

選評/ジョシュア

 多くの人が作品の魅力というものを伝えようとしたのだとわかるレビューの数々であった。自分がこの作品が素晴らしいと思う理由をありったけ語れる機会というのは、ネット上では少ないかもしれない。そうした面で、今回の企画はよかったと思う。

 さて、選評へと参ろう。今回の企画に応募されたレビューの多くは、その作品の魅力の抽出が多く行われていたが、その作品に対して多彩な解釈を盛り込んでいたものが魅力的だったように私には見えた。あらすじや、その作品の核である部分に注目し、そこを読んだときに汲み取ってみてほしいと書くのは技術であるが、その中でも「自分の解釈」というものを盛り込めたレビューは感心した。

 それでは、レビューの中で私が気に入った一節を引用しながら、評価をしていこう。


 『ギヤマンの薄い板を通して見る風景にも似て、この作品が読後に与える印象はいい意味ではかない。ああ、そう、美しいのだ。ユラリと漂う陽炎のように心を掠めていく。掴まえようとすれば逃げてしまいそうな……そこにあるのにどこかもどかしい部分がこの作品にはあるんだ。』


 「足軽三郎/留龍隆『明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア』」の冒頭だ。作品を読んで感じたものを、詩的に描いていくのが氏のレビューのスタンスである。それは氏がいままで投稿してきた他の作品へのレビューにも見受けられ、彼のレビューを読む際の楽しみにもなっている。彼の他のレビューを読むのもまた、作品を読むのとまた違う楽しみがあるだろう。


『これは、神を殺すための物語でもなければ、世界を救うための物語でもない。

 臆病な二人にとっては、汚れ、傷つきながら、本当の意味で出逢うためのものでしかなく。

 どこまでも純粋な、不器用な男と女の、切ない恋の物語。

 だからこそ、最後は底抜けの──、』


 「綾埼空/きゃのんたむ『ラグナ録。』」の最後であるが、これもまた、あらすじでありながらも作品の雰囲気を大切にし、且つ自らの解釈を盛り込んでいる。こうした文章に、思わず「上手いな」と唸った。最後の引きを、読者に委ねるというのもまた、気に入った点である。


『私はこの読みやすさを、「読み触り」が良いと表現している。料理で言う舌触りを、文章に当てはめた造語である。単に読みやすいと言うだけではなく、所々にアクセントとなる言葉があり、それが次の話を読みたいと読者に思わせる呼び水となっているように感じられる。』


 「太ましき猫/深江碧『空の座』」の半ばにある文章であるが、「読み触り」といのは、言い得て妙な言葉である。この感覚を上手く言葉にできなかった者も多いのではないだろうか。氏は見事にその言葉を生み出し、当てはめており、目を引かれる箇所であった。この表現はぜひとも使っていきたいものである。


 が、そんなレビューの中で、ひと際目を引いたものがあった。審査員賞を、そのレビューへと送ろう。


『この文は、『ルーフェイア・シリーズ』に宛てたレビューであって、そうでない、ただの告白です。私の体験記。私とおなじ体験を、衝撃を、きっとあなたは味わえない。その代わり、いつか私の知らない体験を、衝撃を、別のどこかで味わうことでしょう。』


 この文章である。「本宮愁/こっこ『ルーフェイア・シリーズ』」から引用した。この言葉は私の中の審査基準を大いに揺るがしたのである。

 果たしてレビューを書く人間のうち、どれだけの人間がこの言葉を言えるだろうか。

 「読まないと損!」であったり「読んだら価値観が変わる」という言葉は、重みはあれど貴重ではない。そして心に届く言葉ではないのだ。

 けれども、氏はレビューの中で、作品ではなく、作品を読んだ自身のことを大いに語ってみせた。そして最後に、この経験は自分のものであるとして、レビューを読む者に自分とは違う衝撃と出会うことを願ってみせたのである。

 読んだ方がいい、ではなく、読んだらいいことあるんじゃないの、と。

 そして、初めて読んだときの衝撃ファーストインパクトが待っていることを、羨ましいともとれる言葉。これを言える人間の数のなんと少ないことか。映画にしろ、音楽にしろ、小説にしろ、結局のところ出会った人の感動というものを共有することはできない。だからこそ、他人の感動を羨むと同時に、自分の感動を語るのだ、と。

 私はそこを評価したいと思って、今回審査員賞に選ばせてもらった。


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