ベギンレイム/竹内すくね『ブルージャスティスここにあり!』
副題:『正義ってなんだ? 悪ってなんだ? ヒーローってのは、なんだ。』
正義ってなんだ? 悪ってなんだ?
人間、一度や二度くらいはふと考えたことはないだろうか。正義と悪。答えの出ない疑問であり、年を取るにつれ頭の片隅に追いやられるしょうもない問いだ。……くだらないと割りきってしまう問いだ。そして、この物語に何回も出てくることになる問いでもある。
何故なら、この物語の主人公、青井正義は、悪の組織の戦闘員であり、同時に零細ヒーロー派遣会社カラーズのヒーローでもあるからだ。
彼が生まれるよりももっと前、日本という国の国会と呼ばれる場所は、文字通り崩壊した。無法地帯となりグチャグチャになった日本を救ったのは、ヒーローと呼んで差し支えない傑物だった。当時の内閣総理大臣である、御剣天馬だ。彼はやり遂げた。成し遂げた。日本という国を、見事再生したのだ。ヒーロースーツで。
ヒーロースーツ、でだ。
ヒーロースーツという力の抜けそうな名前はどうあれ、性能は凄まじかった。着るだけで、誇張ではなく、パンチは岩を砕き、キックは鉄ですら粉砕する。
御剣は恐ろしい力を持ったヒーロー部隊を組織し、一年ほどで国を治めて纏め上げたのである。無論、反発する者も多く出たが、どれもこれも物理的に黙らされるか、それに怯えて口を噤んでしまった。
しかし、どれだけ機密にしようと。金の魔力に誰だって逆らえない。ヒーロースーツの技術は民間にも流出してしまった。力には力だ。力でもぎ取った平和なら、力で奪われる。スーツの使用に関して、規制、法案が可決されたが時既に遅し。好き勝手にやる者は後を絶たなかった。
再び、ヒーローは現れる。
だけど、彼らを応援するものはもはやいない。スーツを着た犯罪者を取り締まる為に、別のスーツを着た者が現れる。一般人からすれば、ある意味マッチポンプ。かくて、日本はヒーローとヒールが当たり前のように闊歩する国になってしまった。
もはや、ヒーローは職業になり、悪の組織は見慣れた犯罪者だった。
そんな世の中で、主人公、青井正義は、悪の組織の戦闘員として働いている。高校卒業してふらふらしていた際にスカウトされたのだ。かれこれ六年、下っ端として働いている。数多くの戦闘員がヒーローに捕まってしまったり、辞めてしまったりする中で、六年というのはかなりベテランだ。しかし、戦闘員は体力を使う仕事だ。いつまでも続けられる仕事ではなかった。
そんな彼が何を思ったか、できたばかりのヒーロー派遣会社カラーズ唯一のヒーローとして働くことになる。悪の組織の戦闘員と掛け持ちで。金のために。
それと同時期に悪の組織のほうでは、ただの下っ端戦闘員から、幹部である四天王付きの戦闘員として出世することとなり、何故か上司である四天王エスメラルドにも気に入られてしまう。
こうして、昼は派遣ヒーロー。夜は悪の組織の戦闘員としてきつくて愉快な生活が始まるのだった。
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青井正義。零細ヒーロー派遣会社カラーズのヒーロー。
彼は決して十代の青春真っ盛りではないし、かといって自分に酔ってるわけでも、夢見てる向こう見ずでも……たぶんない。
ガラも悪いし、チンピラだし、小悪党だし、そして悪の組織の戦闘員だ。
だけど、なぜか青い、なんでここまで青いんだろうか。熱いのだろうか。
彼の正義は青い。どうしようもなく青い。でも、縋りたくなる熱さがある。信じてしまいたくなる力がある。
言葉にすれば、文章にすれば、陳腐で青臭い言葉に過ぎない。そんなことは彼自身がよくわかっている。現実的に考えれば、口を紡ぎ、行動には移さない。普通はそうだ。それが賢い生き方だ。それが間違っている、道理に合わないことであろうと、ヒーローだって会社員だ、わざわざ危険の中に飛び込むバカはいない。
だけど、彼は言ってしまうのだ「ムカつくんだよ、気に入らないんだよ」と、それだけだ。それだけで彼は動ける。
彼が放つその言葉達は、力があった、信じたくなるなにかがあった、少なくとも私はそう感じた。そう感じとった。
青い炎のようにどうしようもない熱だ。ただ気に入らないというだけで悪の組織だろうがヒーローだろうが、当事者だろうが関係ない。「気に入らない」のだ。それだけでいい。その熱はすべてを飲み込む。その熱に飲み込まれたものは参ってしまう。どうしようもなく参ってしまうのだ。
【「うちのヒーローを舐めるな! 馬鹿にするな! あいつを馬鹿にしても良いのは、私だけなんだから!」
軽くなった体と心。気付いた時には、俺の全部はクモに向かっていた。
「ヒーロー! あんなもの、やっちゃえええええええええええ!」
「…………おう」
正義はどこにある。正義の味方はどこにいる。んなもん知るか。
俺の正義はここにある。俺の味方はここにいる。青い正義と笑わば笑え、ここで行かなきゃ俺は嘘になっちまう。そうに違いない。違いないんだ。】
(n3771r/80/ パスコードヲニュウリョクシテクダサイ より抜粋。)
笑いあり、涙あり、人情あり、そして青臭い熱がある。
この、どうしようもないほどに青くて、熱い物語を、是非読んでほしい。
『ブルージャスティスここにあり!』
作者:竹内すくね
URL:http://ncode.syosetu.com/n3771r/
:http://micromagazine.net/gcn/blue/#character(外部サイトです)




