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ただ今逃亡中  作者: 七
10/12

それはない

籠の鳥から4年後

『……サラ?』


サラの掌にある親指ほどの白く丸い石から聞こえてきたのは男の声。出会った頃より低くはなっていたが、それでも相変わらず鈴が鳴るような軽やかな美声だった。


「久しぶり、ルー」


淡く光る石に話し掛けながらサラは懐かしそうに目を細めた。


送声石【フォン】――魔力を込めれば特定のフォン同士で会話が出来る魔法鉱石で、ミール聖国でのみ採掘されるレアな特産品である。


一番市場に出回っている小指の爪ほどの大きさの石で小さな屋敷が買えるほどのお値段なのだが、そうとは知らないサラが「ありがとー」とルーから軽~く受け取ったブローチに見立てられた石はなんと親指ほどの特大サイズ――ルー特製☆国を跨ごうとも超クリアに聞こえるし勿論ノーマ中和作用付きと超高性能フォンだった。


初対面の時にノーマ内での魔力行使のコツを掴んだのだが、この天才ちょっと掴みすぎである。


渡されたのは初対面から2か月後。使節団の一員として再びマナーカ国に訪問した時だ。ルーの体調不良(原因不明(・・・・)の魔力減少)で断念せざるえなかった実験を魔法省の人間が懲りずにリベンジしようとしたからである。結果はルーの魔力をもってしてもノーマ内での魔法行使る出来ないとされガッカリされた。


実際は補助魔法であれば100%行使可能なのだが他国間との軋轢を考えて出来ない事にした方がよいてとルーが判断した結果である。恐るべき10歳である。サラと逢うまでは大人しく魔法省の人間の言うことを聞いていた為嘘を付いているとは思われなかった。


ルーから渡されたサラ(当時5歳)は必要になるまではと宝石箱に潜ませていた石がまさか一生遊んで暮らせる程の超希少鉱石だとはまだ知らない。王に献上しても全く問題がない代物である。


『久しぶり~前の家出が失敗に終わってから4年ぶり?あれから連絡も途絶えて社交界にも一切出てこなくなったから心配してたんだよね』


サラが鳥籠に入ってから4年が経った。


現在は14歳で貴族としては婚約者がいて当たり前、結婚してもおかしくない適齢期突入の年齢である。成長期を迎え背も伸びたサラは、「最近益々お母上に似てきましたね」と公爵家の皆に言われている。


「お陰様で生きてるよ。あの時はご免なさい。そっちに迷惑かからなかった?てかかかったよね?」

『表立っては何も。裏はちゃんと防いだから大丈夫だよ~』


――裏。


あの兄が素直にサラの協力者を帰すと思わなかったがやっぱり何かしてたか。兄様の嘘つき!まあ失敗してもルーなら大丈夫ってわかってたから協力を求めたんだし心配はしてないけれど。


『いやいや、噂に違わず君の兄上はなかなかやるね。危うくヤられかけちゃった』


命を狙われた割には軽すぎる口調は、実際彼を殺す事が社会的にも物理的にも不可能だからろう。


だからこそサラは今の彼の言葉も冷静に聞けた。自分の兄が人を殺そうとした事に最早驚くことはない。連れ戻されて籠に入れられてからの4年間で驚かない位の事は経験したからである。いまだ1人も死人が出てないのが救いか――あくまでサラが認識している範囲内で、ではあるが。


あの兄ならやる。むしろヤッパリねって感じだ。てかあのから逃げれるなんてさすがはルーである。


「……私には甘過ぎるくらい優しいんだけどね」


行き過ぎた行動制限を除けば父も兄もサラには優しい。愛されているのだと思う。でもその生活はサラには苦痛でしかない。


既に寝る間さえ寝ずの番の侍女と護衛が付いているサラに1人の時間は皆無であった。現に就寝時間の過ぎた今夜も同じ部屋の端に侍女が1人控えている。


だが侍女かサラ達の会話に気付いたよう様子はない。


ルー特製のスペシャルフォンは魔力がない人間でも特定のワードを言えば使用可能でオマケに使用者がサラ限定の上使用中は半径1mの範囲を完全防音結界付きと超優れものだからである。ついでに一目でフォンだとわかる鮮やかな紅色を魔術で白色にしているため周囲にはフォンだとバレない。高性能にも程がある。ちなみに魔法石の効果を変えずに色を変化させるなんて普通は難易度激高の泣きモードてある。


……訂正しよう。献上からの国宝認定即宝物庫コースの代物だった。ルーぱねぇ。


結界はサラのキングサイズのベットが丁度スッポリと収まる位だから、今夜は静かに寝たいからと天蓋から布を下ろしてもらっている今なら動かなければバレる心配はない。


勿論公爵家なのだから魔法対策は他よりも飛び抜けて高い。カイルが万が一を警戒して屋敷にはノーマが通常以上の数が設置されている――特にサラの部屋周辺は念入りだ。サラの脱走に協力したのがミール聖国の人間だとバレた4年前からはより純度が高いノーマを大量に設置するなど魔法対策が厳しくなり渡されていた通常用フォンが使用不可となったくらいだ。


『で?この緊急用フォンを使う程の状況なの?』


ルー特製の中でも更に特別。1回限定いつどんな場合でも必ず使えて即ルーと会話できる緊急用フォン。これの意味するところは――


「明日の建国祭が終わったら兄様と結婚だって」

『――なるほど、緊急だね』


――超ピンチである。

【時系列】

・2年前

・サラ14歳ー貴族的婚姻可能年齢

・ルー19歳ーサラとの出逢いをキッカケにせっせと感情育成中。ゆるい。

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