ティータイム
トメの正体が判明すると店の雰囲気は一気にら和やかになった。
時代、国籍は違えどそこは歳頃の女性たちだ。四人も集まれば決まってするのはやはりお喋りだ。
「ハーイ。お茶が入りましたよ~」
沙織が紅茶を淹れて来た。
「わーい!」香奈が一番に手を伸ばす。続いてジュディが手を延ばし沙織が最後に取ろうとしたがトメが遠慮深げにしてたので
「トメさん。遠慮なくどうぞ」
と促す。
トメは恐る恐るティーカップを手に取り口を付ける。
芳醇な香りが口から鼻に抜ける。まるで自分が宮廷の晩餐会にでも出てるような優雅な気分になった。
その次に脳天を突き抜けるように甘い味覚が彼女を襲う。
初めて飲む紅茶。
身も心も優雅な気分に浸ってしまった自分がそこにはいた。
「oh~今日の茶葉はアールグレイでーすネー」
ジュディは舌なめずりをしながら沙織に話しかける。
「ご名答」
「ジュディよく解るねースゴーイ!!」
「レディのたしなみデース」
「何がレディよ、あんなデカくてウルサイバイク乗り回して」
そう言って「フンっ」と鼻息を吐く沙織。
「ッデム!私の相棒を馬鹿にしないデー」
ジュディがアカンベーをしながら沙織に絡む。
「あのー、ばいくって何?」
トメはジュディに問いかける。
「バイクは単車の事デース!そうだ!私の相棒紹介するネ!」
そう言うとジュディはトメの手を引き表に出た。
「ジュディ待って!!」
慌てそれを香奈が追いかける。それを笑顔で見送る沙織。
「これが私の相棒。カワサキのZXー12Rデース」
両手を広げ得意満面にバイクを披露するジュディ。
ライムグリーンの車体が街灯に照らされて鈍く光る。
「川崎ってあの軍需工場の?」
トメが不思議そうにジュディに問いかける。
「Oh!私とした事がウッカリしてましたー!!川崎といえば三式戦闘機『飛燕』デース。勿論そこと一緒の会社デース」
「本当に詳しいのね。ジュディさん」
トメは感心と言うか呆れに近い表情でジュディを見る。
「ジュディはねー大学で日本の歴史を研究してるんだよ」
得意満面に香奈がトメに言った。
「なるほど。それで色々とお詳しいのね」
「専門は日本の戦史デース!トメさんは私の研究材料になってもらうネー!」
「軍規につき詳しい事は申し上げられません」
トメは突然凛々しい口調でジュディに言い放つ。
「No~」
おどけながら笑うジュディ。三人の笑い声が夜空に溶けていく。