突然に…
次の日
「トメさんおっはよー!!」
香奈が元気よく店のドアを開ける。それに続いて沙織も入ってくる。
しかし、店の中はしんと静まりかえっていた。
いつもであればトメがミシン台の所にいて今日一日の作業の段取りをしているハズだ。
「あれ?トメさん起きてないの珍しいね」
「そうね、具合でも悪いのかしら?」
沙織がトメがいつも寝ている二階を見ながら呟く。
「私ちょっと見てくる」
香奈はそう言って二階に通じる階段を昇っていった。
沙織は改めて店内を見渡す。どうにも先程から感じている違和感を拭えない。
先程、香奈と一緒に店に入った時に人がいる気配が感じられなかったのだ。
誰かしらいる建物は何かしらの空気のようなモノを感じるが、それが今のニコテスの店内には感じられない。
まるで空き家の様にガランとした空気しか感じられないのだ。
沙織は一抹の不安を抱く。
「オネーちゃん。トメさん二階にもいないよ」
香奈の声で我にかえる沙織。香奈の声も不安気だ。
「きっと何処かに買い物にでもでてるんでしょ。そのうち戻って来るわよ」
「そうだよね!」
沙織は努めて明るい声で香奈に言ったが自分の動揺を隠すので精一杯だった。
彼女の胸中は香奈と変わらない。
しかし、ここで自分が狼狽えてしまえば香奈にも伝わってしまう。
とりあえずそれらしい事を言って落ち着こうとした。
店内の時間が過ぎて行く。
しかしいつものように、まったりと流れて行くのではなく、何か例えようの無い重い、不安気な時間が粘っこく過ぎて行くような感じだ。
遂に日がくれた。その日トメが店に顔を出す事は無かった。
閉店間際、ジュディのバイクの音が外に聞こえる。
ジュディはいつもとは違い神妙な面持ちで店内に入って来た。
「やっぱり、まだ…」
予めトメの事を沙織のメールで知っていたジュディは静かに呟く。
三人は誰からも言い出す訳も無く店にあるテーブルに集まった。
時間の経過と共に一つの答えがチラつき始めた。
沙織が重い空気の中、口を開く。
「ねぇジュディ。トメさんひょっとして」
「沙織もそう思いマスカ?」
「…」
香奈が何かに気が付いたのか押し黙る。
「元の時代に戻ったんじゃ」
「その可能性は十分ありますネー」
香奈がうつむき震えている。両膝の上で硬く結ばれた拳には涙がポタポタと落ちていた。




