横須賀の夜
横須賀の空に星が瞬いている。沙織と香奈とトメは横須賀米軍基地の正面ゲートにいた。
「それじゃジュディ、お父様に宜しくね」
沙織はそう言うと深々と頭を下げた。
「OK」
と、ジュディは微笑みながら軽く言うと回れ右をしてハマーに乗り込んだ。
三人はそのハマーを見送ると駅に向かい歩き始めた。
夜空を見上げながら香奈が
「はぁ~。ホント夢みたいな一日だったな」
そう呟いた。
「本当、私もあんな所でイベントが出来るなんて夢にも思わなかったわ」
「明朗活発、自由奔放が米軍の強さの秘密ですね。私の頃の時代じゃ考えられないわ」
思い思いの感想を述べる三人。
「あー何だかイベント終わってるのに落ち着かないよー!」
香奈がそういいながら身体をくねらせてると
「気持ちが高ぶってるんですね」
トメが穏やかな口調で香奈に言う。
「ねー!オネーちゃん!どっかに寄って行こうよ!折角、横須賀まで来たんだから」
「香ー奈ー。明日もお店があるんだからワガママ言わないの」
「はーい」
香奈が少し拗ねたような態度をとる。
微笑ましく二人のやり取りを見ていたトメに香奈が思いだしかのように
「ねぇトメさんウチに来ない?」
そう言い放った。
「そうねぇ。細やかながら打ち上げでもしましょうか?」
沙織も香奈の意見に同調するようにトメに言う。
「そんなの悪いわ。私は何もしてないもの」
相変わらず他人行儀なトメ。
「そんな事ないわよ、トメさんが来たから私はお店の事以外で動けるようになったのよ、香奈一人じゃ危なっかしくて無理よ」
「あ、オネーちゃん。それはヒドーイ。香奈だってお留守番できるよ」
プイッとソッポを向ける香奈。
「フフフ。香奈さん、沙織さんはそういった意味で言ってるのでは無いとおもいますよ」
「だったらどういう意味なのさ」
「お年頃の娘を一人にしておくのが心配なんですよ」
トメが微笑みながら香奈に優しく言う。
「う~ん、解るような解らないような」
「トメさんって時々、お母さんみたいな事言うわね」
沙織がそう呟くと、香奈は
「お母さんかぁ…」
と夜空を見ながら先程までの喜々とした表情を収めポツリと言葉を漏らした。
香奈もまがりなりに成人女性だが、母親の母性が時折恋しくなるようだ。
その物悲しい横顔を見るとトメは、
「香奈さん。お夕飯何にしましょうか?」
と問いかけた。
次の瞬間、香奈は何かに弾かれたように明るい表情をするとトメの手を引き電車へと乗って行った。
沙織はそんな二人を見てるとまるで自分も忘れかけていた何かを思いだしそうになった。




