彼女たちの理想郷
楽しい時間は過ぎるのが早い。
ニコテス主催のシークレットパーティーは滞りなく進行していた。
食事以外にも企画があり、
ベストドレッサー賞。
有志によるファッションショー。
そして米軍によるDJのパフォーマンス。
人懐こく物怖じしない香奈がマイクを握りイベントをうまい具合に仕切っていた。
その様子を沙織がせっせとデジカメに収めていく。
「ハーイ!トメさん楽しんでマスカ!?」
ジュディが会場の端からパーティーの様子を眺めていたトメに肩を叩きながら話しかける。
明らかにいつものジュディとは一味も二味も違う容姿で彼女はそこにいた。
綺麗に巻き上げられた髪、豊かな胸を強調するコルセット、スカートのスリットから見え隠れするスラリとした足には膝上までのロングブーツ。
ライダー、研究者、どちらかと言うとお転婆、ジャジャ馬、そんな言葉が似合いそうなジュディだが
、さすがは軍属のご令嬢。ドレッシーな姿は様になる。
「どうですカ?今日の私キマッてるデショ」
おどけてポーズをとり自信ありげにジュディは問いかけた。
「えぇ、とっても。まるでジューヌベルグの小説に出てきそう」
「Thank you」
「わぉ!ジュディ決まってるぅ!!」
「本当!」
一息ついた、香奈と沙織も合流して賑やかさは更に増した。
四人のボルテージと会場の盛り上がりが絡み合うように上がっていく。
即席のDJブースからは止めども無く音楽が流れ続け宴に華を添える。
特に照明などの激しい特殊効果はないが潜水艦という一種独特な雰囲気が参加者達の気持ちを高ぶらせる。
閉塞感
密室感
秘匿性
特異性
巨大機械
スチームパンクのキーワードをこれでもかと盛り込んでいる潜水艦。
ディストピアをこれ程具現化できる空間があっただろうか?
戦略原潜アラバマの食堂はまさにこの瞬間だけ彼女達の理想郷となっていた。
いや、正確にはディストピア。つまりは
暗黒郷
が、彼女達の理想郷なのだ。




