実は
どちらからともなく、二人は先ほどまで香奈が通販の作業をしていたテーブルに向かい合わせになって座った。
トメは沙織のその覚悟を決めた瞳の奥にある「何か」を知りたくて思い切って聞いてみる決心をした。
もしかしたら自分でも力になれるかも知れないと思ったからだ。
「沙織さん。私はあなたには感謝できない位の御恩があるわ。もしよければ胸の内を話してもらえないかしら?」
トメが穏やかにかつ諭すように話しかけた。
沙織は伏せ目がちにトメの方を見ながら重い口を開いた。
「トメさん。私と香奈、はたから見るとどんな感じ?」
トメには少し意外な感じの質問に思えたが素直に
「仲のいい姉妹に見えますよ」
そう答えた。
沙織は微笑むと
「そうよね。よく言われるし。実際姉妹みたいなものなの」
「姉妹みたいなもの?」
沙織の奥歯に物が詰まった様な言い方にトメは違和感を憶える。
「でも実際は少し違うの。香奈は私が小学生の時、両親が養子に迎えた子なの、でも両親がその事を自身の口から彼女に伝える前に交通事故で他界してしまって…」
話しの途中で言葉を詰まらせる沙織。
「血がつながってない事を香奈さんは知らずに今まで生きて来た」
トメは単刀直入に沙織にそう問い正す。
沙織はコクリと頷いただけだった。
しかしそれだけで普段はオットリとした沙織があの様な思い詰めた表情をするだろうか?
トメには何か沙織がまだ隠し事をしているように思えた。
彼女の言う事は確かに二人にとっては伝えづらい事実であるが、それは二人だけの問題で何もトメに言う必要性をトメ自信は正直、感じられなかった。
血の繋がりが無い事は沙織が墓場まで持って行けばよいだけの話しだし、万が一バレても沙織も香奈も、もう十分大人な訳だ。止むに止まれぬ事情があった事を香奈もくみ取れる年齢だ。
「本当にそれだけか?」
トメは思わず軍隊の頃の癖で尋問をするような鋭く重い口調で沙織に質問をした。
一瞬、沙織の肩がビクンと震えたのが見えた。
視線は合わせてないがトメの眼光が自分に向けられている事が解る。
鷹のように冷たいその視線は自分の心の奥底まで見透かされているような気がして沙織は膝の上に載せた手を固く結んだ。
二人の間に重たい空気が滞留していく。
店内に流れているBGMのクラッシックが沈殿した空気に時間の経過を知らせる。
沙織は顔をあげた。その瞳はまるで何かにすがりつく様な表情を宿していた。
トメは沙織のその表情を受け取るとそっと身体を少し前に出した。




