花より…
沙織の冴えない表情が香奈にも伝播しそうだった。
その事を敏感に感じ取ったトメは少しワザとらしく大袈裟に香奈に話しかけた。
「香奈さん、昨日ジュディさんが三越に連れて行ってくれたのよ。何年たっても三越は豪華絢爛で素敵な百貨店ね」
「そうなんだ!トメさんが居る頃から三越ってあったんだね!で、何か食べたの?」
「やっぱり香奈さんも『花より団子』ね。」
「えへへ~」
「私もそうだけど、最上階のパーラーで『ちょこれーとぱふぇ』をご馳走になったわ」
「わー素敵!私もチョコパフェ食べた~い!」
トメが香奈の気を引いてるスキに沙織はいつも通りのビクトリア朝の格好になっていた。
すっかり先ほどまでの思いつめた表情は身を潜めており、とりあえずであるが吹っ切れた感じになっていた。
いつもの沙織の体裁を保っているようだ。沙織はレジカウンターに収まるとトメに目で合図を送った。
それをトメは受け取ると少し安心した表情を沙織に送り返す。
二人とも通じ合うものがあったらしい。
沙織の曇った心情は香奈に悟られる事はなかった。
香奈はいつも通り鼻歌交じりにテーブルの上で通販の作業を行い始めた。
開店してから幾らか時間が過ぎた頃。ソロソロ腹の虫が騒ぎ始める時間。
相変わらずニコテスに来客は無く、まったりとした時間が流れていた。
「香奈。お昼でも行ってらっしゃい」
「ハーイ」
香奈はそう言うと転げるように店を後にした。
店内はトメと沙織。二人きりだ。
「トメさん。さっきはありがとう。落ち込んだ所を香奈に見られなくて済んだわ」
「いいえ、沙織さん。私の事が荷重ならいつでも言って下さい」
「重荷なんてとんでもない!むしろ助かってる位よ。あなたが現代の人なら雇いたい位よ」
「そうでしたか。それを聞いて一安心しましたが…」
トメは一旦笑顔を見せたがその笑顔を引っ込めた。
それを見た沙織も真剣な眼差しでトメを見つめる。
その瞳は何か、覚悟を決めたようにトメには見えた。




