チョコパフェ
座ってお冷に口を着けた事で少し落ち着きを取り戻したトメ。
「まさか三越のパーラーに来れるなんて夢にも思わなかったわ」
溜息交じりにトメはジュディに話しかけた。
ジュディはトメの顔を改めて見た。
目はトロンとして数日前まで殺気を放っていた眼光はすっかり消えており、視線は焦点を合わせず遠くを見るようにボンヤリとしていた。
店の雰囲気を満喫するようにトメは両腕で頬杖をつきウットリとした瞳をジュディに向けていた。
同じ女性であるにも関わらず彼女のその艶かしい視線はジュディを困惑させるのに十分だった。
ジュディは内心「まさかこの仕草も陸軍中野学校で習ったのでは?」と一瞬思ったがその疑惑はウェイトレスが運んで来たものが吹き飛ばした。
「コーヒーのお客様は?」
ジュディが静かに手を上げてウェイトレスを促す。
ウェイトレスはジュディの前にコーヒーを置くと次にトメの前にチョコレートパフェを疑いも無くスプーンと一緒に置いた。
絶句するトメ。その反応を楽しむように見るジュディ。
「トメさん。どうぞ召し上がれ」
ジュディが外国人離れした日本語でトメにチョコレートパフェを食べるように促す。
「なんて言うのこれ…。何かを盛り合わせてるのは解るけど」
スプーンを手に取り恐る恐る天辺にある生クリームをすくうとそれを口にいれた。
身体を駆け抜けるように甘い味覚がトメの身体を支配する。それは口の中で淡雪のように消えると喉を通り過ぎて行った。
それを再び味わいたくてトメは必死に生クリームを口に運び続けた。
生クリームをすべて平らげると次は少し硬い感触がする乳白色の物に当たった。
それはユラユラと白い冷気を放っておりトメを惑わせた。
既にスプーンの上に載っているそれを思い切って口にほおると冷んやりとした食感がトメの口の中に広がった。
そして氷とも違うなんともいえないその食感と甘さは、えもいわれぬ香りを放ちながら口の中で溶けて消えた。
目をパチクリさせながらアイスクリームを貪るように食べ続けるトメ。
それを見たジュディは
「トメさん。アイスクリームはひょっとして…」
と言った。
「はひ、はひめてたへました」
アイスクリームの冷たさで舌が回らず舌足らずな口調になってしまったトメ。
彼女はアッというまにチョコレートパフェを平らげてしまった。




