ライムグリーンのかまいたち
ジュディはトメにヘルメットを被せるとリアシートにトメを乗せた。
さすがに陸軍の特殊部隊にいるだけあってスンナリとリアシートに収まってくれた。
「コンターーック!!」
ジュディはそう叫ぶとエンジンを始動させた。
辺りに響く轟音。その爆音は戦闘機のそれを彷彿とさせたが、不思議と恐怖心は無かった。
むしろ、どこか懐かしささえ感じる位だ。
やはり老舗メーカーである川崎重工だからなのだろうか?
「トメさんしっかりつかまってくだサイ!私の運転ベリーハードねー!!Here we go!!」
トメはギュッとジュディの身体に抱きつく。革ジャンの硬い感触の下に柔らかい女性らしい身体の存在を感じる。
「ズドン」とエンジンらしからぬ音がしたかと思ったらバイクは砲弾のようにスッ飛んで行った。
景色が溶ける様にながれていく。
見慣れぬ車列の間を縫うようにジュディはバイクを軽やかに走らせていく。
まるで疾風かカマイタチだ。
1200cc181馬力・ライムグリーンのカマイタチは二人を乗せて明治通りを新宿方面へ向け爆走して行く。
すると、トメにも解る建物が現れた。
「ジュディさんあれって百貨店の『伊勢丹』なの!?」
走行風と排気音に負けないように目一杯叫ぶトメ。
「イエース!」
ジュディはそう叫ぶと新宿三丁目の交差点を右折した。
新宿通りをひた走ると皇居に当たった。
そこに広がる景色はトメにも馴染みがあった。
70年近い月日が流れても皇居は青々とした緑をたたえその威厳を保っていた。
その向こうには帝国劇場に東京會舘のビル。
ジュディのバイクは外堀通りに入ると、その広大な車線を利用して一層スピードを上げた。チラと国会議事堂も左手に見えた。
日比谷公園の木々の向こうに帝国ホテルもあった。ビルの谷間に東京駅の赤レンガが見え隠れする。
トメの知ってる東京がそこにはあった。
勿論。殆どが知らない建物ばかりだが。東京、帝都を代表する建物は年月を得てもその威光を放ち続けていた。
戦前の煌びやかな東京。
空襲で焼け野原にされた東京。
そして見事に復興した東京。
それでも変わらないものは変わらないのだ。
トメはなんだか嬉しくなった。
この気持ちをどう言っていいのか解らないがとにかく嬉しかった。
そう思うと無意識にジュディの腰に回した腕に力が入った。




