働かざるもの
「ただいまー!!」
香奈の声が店内に響く。
「お帰りなさい香奈」
「オネーちゃんの言う通り色々買って来たよー」
香奈はそう言うといくつか持っていた紙袋を店の床に置いた。
レジカウンターにいて帳簿をつけていた沙織はそこから出ると。
「トメさん。チョットいいかしら?」
と彼女を呼んだ。
「おー!!トメさんもう働いてるの!?てーかオネーちゃん人使い荒いよ~」
トメは香奈のセリフにクスリとすると
「働かざるもの食うべからず、です」
と笑顔で言った。
「香奈、その通りよ。それにトメさんミシンがけとても上手なの。やっぱり昔の人は手先が器用ね~」
沙織が感心しきりでトメを見ながらそう言うと「おー」と香奈が納得した感じで声を挙げる。
「ところでトメさん。いつまでもその軍服みたいな格好じゃ窮屈でしょ。香奈に頼んで普段着買って来たからチョット着てみて」
沙織はそう言うと紙袋から色々な服を取り出してトメに渡した。
彼女はなすがまま上着を脱いだ。
白いシャツが露わになると沙織と香奈は息を呑んだ。
彼女の肩には傷があり血糊がシャツにベットリと着いていた。
「チョット、トメさんその傷は大丈夫なの?」
沙織が驚きの声を挙げる。
しかしトメはひょうひょうとした表情で
「ちょっと銃剣がかすっただけです。傷も塞がってるので大丈夫ですよ」
そう言い放つ。
「肩の所が破けてたのはガチだったんだ~」
香奈が気の抜けた声を挙げるがそれは安堵と言うか驚きと言うかなんとも言えない感じだ。
しかしトメは意外にも銃剣の傷を何事も無く語ったあとに
「なんだか女同士でも人前で肌を晒すのは恥ずかしいわ…」
と言い始めた。
やはりそこは昭和の女性。現代の女性とは貞操観念が違うのだ。




