はじめに
皆さんは「江戸しぐさ」ってご存知でしょうか。
政府広報(2014.4.27追記 すいません、事実誤認です。ACジャパンです)のCMなどでも紹介されたこともある、江戸の庶民たちが身につけていたとされるマナー群のことです。ピンとこない方でも、「傘かしげ」や「こぶし腰浮かせ」、「時泥棒」などの言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。わたしは普段電車を使っていないのでよく知らないのですが、今では液晶画面などで紹介されているそうです。また、最近では小学校の道徳の授業でも取り上げられ、もはやお国のお墨付きまでついているという格好になっています。
で、その江戸しぐさなんですが、実は色々な問題を孕んでいるものだというのをご存知でしょうか。
と、こんなことを書くと、皆様は小首をかしげると思うんですよ。「え? 学校の教科書に載っているものなのに、何か問題があるの?」と。
いや、教科書に載っているからといって問題がないわけではないのです。だって、かつてはあるおっさんの手により夜な夜な地面に埋められた石器が60万年前の本物の石器として教科書に載っていたくらいなのですから。教科書に載っている=正しいこと、という図式なんて今も昔もありません。
そして、この江戸しぐさを検討していくと、なかなか香ばしい事実が浮かび上がってきます。そのあたりのことを皆さんと一緒に見ていけたらいいなあ、というのがこのエッセイの企画趣旨になっています。
この江戸しぐさというものは、色々なレベルにおいてヘンテコなものなのです。
現代の神話、江戸しぐさ。その奥深い闇へ、ようこそ――。