第二話
緑生い茂る森の中、12班の4人が円になって中腰で話合っていた。衣服は先程まで着用していた訓練兵制服ではなく、青を基調とした天帝軍の魔導師用の戦闘服だ。ベルトには両腰に携行ナイフが一本ずつ、それと空のポーチが一つ着けられている。班長のレオンには周辺の簡易地図が持たされていた。今はその地図を囲んで作戦会議中をしている。
「さて、現在地は此処で。演習終了となる目標ポイントは此処だ。」
レオンが地図上の一点を指し、次にそこからかなり離れた一点を指す。
「縮尺は」
「わからない。演習条件的に敵から地図の一部分だけを奪ったような形なんだろ」
「んーー。それじゃ実際に地図の地形と照らし合わせながら歩いてだいたいの縮尺を掴まなきゃね」
リアンの質問へのレオンの答えにクエスは素早く次の行動を考える。ニコルもクエスと同様の事を考えながら貧乏くじを嘆く。しかし嘆いてばかりでは仕方がないので取り敢えず自分も行動案を出す。
「縮尺を掴むのも良いけど、食糧の確保も大事じゃないか。幻しとはいえ幻術中は空腹感とそれに伴う疲労も再現されるからな。」
「それは並行して行えば良い。地図上だと此処に岩山がある。此処からでは木が邪魔して見えないが、幸い真っ直ぐ北上すれば岩山に着くようだ。まずは此処を目指す。時間を無駄にできない、行くぞ」
ニコルの提案をレオンが受けて最終的な行動をまとめる。12班はそれぞれ立ち上がり、北へと進み始めた。
「しかし珍しく頭を使ったな。ニコル」
「リアン、てめぇは喧嘩売ってんのか」
「はいはい、喧嘩しないしない。声で敵に見つかったらどうすんの。此処敵地の設定でしょ」
「いやだって、リアンの奴がよ!」
「ニコル」
三人の私語に溜息を吐きつつレオンがニコルだけを咎める。
「レオン、注意は俺だけかよ!元はリアンが--」
「ああ、リアンが悪い。だが大声を出したお前はもっと悪い。そして静かにしろ……これ以上敵を増やすな」
「え……これ以上」
恐る恐る周囲に目を配る。前方に1、後方1、左2、右3……多くの人影が見える。
「ははは、だからお前は馬鹿なんだよ」
いつもなら言い返すリアンの軽口にも言い返せない。自分のせいだ、この状況は。いや言い訳できるならそもそも絡んできたリアンのせいだと言いたい。
「落ち込むのは後だ。リアンも反省しろ。ニコルは後ろ、クエスは前、リアンは左、俺は右を担当だ。40m以上離れないように、通信魔術にも気を配り無理はするな。各自魔術使用自由、散開」