中篇
大きな原色の花が主張する。
自らが一番である事を誇り、野蛮に広がる。
「まずは軽く取り調べを行う」
硬いパイプ椅子に座り、僕と妹はエリマキトカゲに尋問を受けた。
「君達はパスポートを持たずに祝日の国に入国した。これは間違いないか」
「はい、間違いないです」
「だろうな、じゃあ密入国を認めるんだな」
エリマキトカゲの声色は穏やかだったが何故か迫力がある。
「ですが、僕達は迷いこんだだけです、気付いたらいつの間にかこちらに居た」
「なるほど、いつの間にかか」
「はい、入国したくて入国したんじゃないんです」
「うむ、だが現にお前達はここにいる」
「出ていけるなら出て行きたいんです」
「あぁ、だがお前達をそのまま帰す訳にはいかない」
「どうしてですか? 」
「我が国の決まりでは密入国、もしくは自分の意志に関係なく入国した人間を保護する事になっている」
その言葉を聞いて、レイカが泣きそうになる
「でも、僕達は二人で入国したんです」
僕は人攫いの言っていた言葉を思い出した。
「ふむ、よく分かっているな。通常、この国に迷い込むのは一人と決まっている」
今はとにかくはったりでもいいので上手く話を進めたかった。
「僕達は例外なんですね」
「それは分からん、ただ今までにないケースではある」
その言葉に一縷の希望を僕は抱いた。
「あの、人攫いに会いました」
「なんだと」
「たぬきが僕を攫おうとしていました」
「ああ、なるほど」
「何か問題があるんですか? 」
「アンゴラウサギの所だな」
「はぁ」
「君達は管轄外ということさ」
事態が良い方向に進んだのか、さらに悪い方向に進んだのかは分からない。
ただ、ここで訳の分からない足止めをされるよりはマシな気がした。「少し先に領事館がある。そこで難民の申請を出して受理されればお前達はこの国で暮らせる」
「それじゃあ何も変わらない」
エリマキトカゲは不思議そうな顔をした。
「お前達には帰る所があるというのか? いやない。そうでなければここに居ないのだから」
「でたらめ言うな。仮にそうだとしても二人で帰るんだ」
「好きにしな、とにかくお前達に用はなくなった」