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『吉野先輩を守る会』  作者: 虹色
第十三章 ハッピー・エンド♪
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Fight! (1)



「いったい、何をしたの?」


吉野先輩と電話で話した翌日の火曜日の朝、自転車置き場から校舎へと歩きながら、奈々を問い詰める。

奈々はちょっとだけ後ろめたそうな表情。

でも・・・面白がっているのは間違いない。


「あのね、笹本先輩を煽ってみたの。」


「どうやって?」


「先週、吉野先輩の事件があった日にね。」


あの日?


「あーちゃんが帰ったあと、笹本先輩が心配そうな顔をしてたから、これはきっと、早瀬くんがあーちゃんを呼びに来たことを気にしてるんだって思ってね、」


「ええ?! 先輩が心配してたのは吉野先輩のことでしょう?」


「違うよ! あたし見ちゃったんだもん。」


「何を?」


「あーちゃんが出て行ってすぐ、あーちゃんに『あとで知らせて。』って言おうと思って、追いかけて入り口まで行ったの。そうしたら、ちょうど笹本先輩が早瀬くんをつかまえて、『どうしてキミが茜ちゃんを連れて行くの?』って訊いたところでね、その慌てぶりを見て、 “これは!” って思ったんだよ。」


笹本先輩が・・・早瀬に?


「でね、そのあとの先輩の様子を見ているうちに、確認してみようと思って・・・、」


確認って・・・。


「最近、あーちゃんと早瀬くんが仲がいいって言ってみたの。」


「仲がいいって・・・、普通の友達だよね?! 特別じゃないでしょ?!」


「そうだよ。だけど、入学した当初に比べたら仲良しじゃない?」


そういう微妙なウソをついたわけ?


「あとね、」


まだあるの?!


「健ちゃんのこと。」


うわ。


「な、なんて言ったの?」


「あーちゃんのことを名前で呼びたいって言った男の子がいた、って。」


「健ちゃんの名前も出したの?」


「うん、出したよ。自分も名前で呼んでほしいって言ったって説明してね。」


ってことは、笹本先輩は、きのうはもう健ちゃんのことを知ってたんだ・・・。


「それにしても、吉野先輩に笹本先輩とあーちゃんのことを頼まれてたのに、急に健ちゃんがあんなこと言い出すから、あのときは必死で反対しちゃったよ。」


ああ。

それで、あたしの代わりに奈々が交渉してたんだ。

そういえば、健ちゃんの提案って、あのときにはよく考えなかったけど、もしかしたらそういう意味だったのかな・・・。

いやいや、気付かないふり。


「奈々。いくら吉野先輩に頼まれたからって、健ちゃんの名前まで出すことないのに。」


「ふふふ。だって、あーちゃんは何を言っても、全然行動に出ないんだもん。」


「そんなこと言ったって。」


笹本先輩は吉野先輩のことを好きだって、ずーっと思ってたんだから・・・。


「だけど、笹本先輩にダメ押しをしたのはあーちゃんだよ。」


「あたしが?」


「そうだよ。あの次の日に、早瀬くんがあーちゃんの家で夕飯を食べたって、先輩に話したでしょ?」


ああ、そういえば。


「あーちゃんは吉野先輩のことばっかり気にしてたけど、笹本先輩がショックを受けたのは早瀬くんの話だよ。」


あら・・・。


「あんなにうまくいくなんてね♪ あのあと、笹本先輩、あーちゃんに勉強教えるって、強引に決めたじゃん。」


奈々が見ても強引だったんだね・・・。


「まあ、そうなんだけど・・・。でも、あたし、奈々にひとことも笹本先輩のことなんて話したことないよね?」


「うん。だから、あーちゃんが笹本先輩を好きだってわかったんだよ。」


「え? 話さなかったから、なの?」


「そうだよ。中学のときから知ってたってことについては、あんまり話したことがなかったから言わなかったのかな、とは思ったけどね。でもそのあと、いつものあーちゃんなら、中学のときの先輩のことを少しくらい話してくれてもよさそうなのに、何も話してくれなかったよ。」


「でも、本当に塾でちょっと会っただけだから・・・。」


「それだけじゃないよ。部活の帰りに先輩と二人になったときにどんな話をしたかってことも教えてくれなかったし、メガネの話題とか、そのほかのことも、笹本先輩については、あーちゃんは何も言わなかったよ。まるで、自分の心の中に大事にしまっておくみたいに。」


「そう・・・だった?」


「そうだよ。前は、かっこいい人の話とか、けっこうノッてきたのに、笹本先輩のことは全然。あたしの話を聞くばっかりで。」


「・・・ごめん。」


「いいよ、謝らなくても。あーちゃんが、あたしに本気で協力しようと思ってくれてるのはわかってたから。でも、あたしの前には真悟くんが現れたから、笹本先輩はあーちゃんに譲ろうと思って。」


「譲るって、そんな簡単に・・・。」


「だって、もともとあたしは、笹本先輩にはもう彼女がいるかもしれないって思ってたんだよ? それでもいいって。言ってみれば、先輩の追っかけみたいなものだよ。」


追っかけ・・・。

なるほど。簡単にあきらめられるわけだよね。


「吉野先輩から協力してって言われたあと、あーちゃんを見ていて思ったの。あーちゃんをけしかけても無駄だって。そうしたら、あの事件が起こって。で、あたしはチャンスを見逃さなかったってこと。」


なんていうか・・・奈々の見極めって、すごい。


「あ。もしかして家庭教師の話もウソ?」


「ああ、それは本当だよ。来てるのは、そこそこかっこいい大学生だけど。」


そんな細かいところでウソをついてたんだ・・・。


「でもね、あーちゃん。笹本先輩があそこまで強引に決めたってことは、あーちゃんをほかの人に渡したくないからだよ。」


「奈々・・・。」


恥ずかしいから、言わないで。


「ねえ、どこまで進んだの?」


「え?」


「笹本先輩と。本当は訊きたかったんだけど、あーちゃんが意固地になるからと思って訊かなかったんだよねー。」


そうだったのか・・・。

あのときに、「断ればいい」なんて言ったのも作戦か。

本当に念の入ったことで。


「どこまでって、勉強を一緒にしてるだけだよ。」


「金曜日ときのう? それだけ?」


「いや、あの・・・、土日も・・・。」


あ〜〜〜、どうしてウソをつけないの、あたし?

まるで、吉野先輩みたい・・・。


「土日も?! どこで?」


「あの・・・、土曜日は図書室で・・・。」


「日曜日は?」


「ええと、その、先輩のお家で・・・。」


「やだ〜! あーちゃん、そんなに仲良くな・・・。」


「やめて〜!!」


急いで奈々の口を塞ぐ。


「仲良くなんかないよ! 先輩は何も言ってくれないんだよ!」


「何もって・・・告白されてないの?」


「そうだよ。だから、今日は気付かないふりをするの。」


「気付かないふり?」


「そう。戦うの。」


「・・・・・ああ! そうか、面白そう。うふふ。駆け引きだね。頑張れ、あーちゃん!」


そう。

もう、先輩だけに主導権を握らせてはおかないんだから。






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