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『吉野先輩を守る会』  作者: 虹色
第十一章 茜
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あれ? ちょっと・・・変?(9)



『茜ちゃん、ごめんね! あたしが余計なことをしたから。』


どうしたの?!

なんで吉野先輩がいきなり謝ってるの?!

それに、このタイミングでこんな電話って、まるで見ていたみたいな・・・。


あ!

お兄ちゃん?!


「あの、吉野先輩? もしかして、お兄ちゃんが何か・・・?」


『え? あ、あの、・・・はい。茜ちゃんがすごく悩んでるみたいだって・・・。』


うっかりしてた。

お兄ちゃん、家にいるんだったよ。

いつもあたしよりも帰りが遅いから忘れてたけど、今日はあたしの方が遅かったんだ。

枕を投げつけたのって、お兄ちゃんの部屋がある方の壁だし、あんなに大きな声で・・・。


はあ・・・、失敗。


それにしても吉野先輩、「悩んでる」なんて言ってくれるなんて、やさしいな。

お兄ちゃんのことだから、「暴れてる」とか「ヒステリー」とか言ったに決まってる。


『茜ちゃん?』


「あ、はい。あの、大丈夫です。」


『『大丈夫』って、まだ何も言ってないのに・・・。あのね、もしかして、茜ちゃん、笹本くんのことで困ってるんじゃない?』


え?!

どうしてそこまで分かるの?!


「ええと、あの、笹本先輩のことって・・・?」


『あのね、実は・・・、笹本くんと茜ちゃんがうまくいくようにって、ちょっと・・・。』


「ええっ?! 先輩が、ですか?!」


恋愛関係にはまったく疎そうな先輩が、あたしのことを?

信じられない・・・。


『うん・・・。土曜日に一緒にいるところを見たから、てっきりうまくいったのかと思ったんだけど・・・、茜ちゃん、本当は笹本くんのこと好きじゃなかった?』


ああ・・・、先輩。

そんなにストレートに訊いてくるなんて・・・さすがですね。


「先輩。あたし・・・。」


どうしよう?

吉野先輩に話してみる?


『言いにくかったら、言わなくていいよ。でも、困ってる原因は笹本くん?』


「・・・はい。」


一人だけじゃないけど。


『やっぱり、そうなんだね・・・。ああ、ごめんね、茜ちゃん。あたし、本当に余計なことを・・・。』


「あの・・・、いったいどんな・・・?」


『え? あのね、最初は茜ちゃんにヤキモチを妬かせようと思って、笹本くんと仲良く話を・・・、』


はい?


「あの、それ、いつの話ですか?」


『プラネタリウムのとき・・・。』


・・・プラネタリウム?

うーん。

たしかに、あのときにも吉野先輩と笹本先輩は仲良しだったけど・・・それは、その前からずっとですよね?


あ!

もしかして、あのときの視線の意味は・・・それですか?!

じゃあ・・・、じゃあ、お兄ちゃんは関係なかったの?!

あたし、あんなにお兄ちゃんにあれこれ言ったりしたけど、全部、余計なお世話だったってこと?!


『あと、プラネタリウムで眠っちゃった茜ちゃんを笹本くんと二人きりになるように・・・。』


ああ、あれ・・・。

やっぱり、わざとだったんですか・・・。


『そのあとの買い物のときも、奈々ちゃんだけを連れて・・・。』


はあ・・・。

なんていうか・・・、かわいいいたずら、みたいな。


「先輩・・・。」


『本当は嫌だったんだね。ごめんね。』


え? 嫌?


「あの、そう言われると、そんなことは・・・ないんですけど・・・。」


ヤキモチ云々は、もともとだし。


『それとね。』


あ、まだあるんですか?


『実は・・・奈々ちゃんに協力してもらってるの・・・。』


「え? 奈々に・・・ですか?」


『そうなの・・・。あたしはあんまり部活に出られないから、奈々ちゃんに頼んで・・・。』


奈々は恐いな・・・。

ある意味、こういう(はかりごと)をするのに超適任者を選んだ、っていう感じ。


「奈々はいったい何を・・・?」


『え? ええと、その・・・、まあ、ちょっと。』


とぼけようとする先輩もかわいいですけど、問題はあたしのことなんですよ?!


「先輩。教えてください。」


『う・・・。あのね、笹本くんをちょっと。』


・・・・・。


『笹本くんに発破をかける・・・みたいな。』


奈々だったらとぼけ通したかもしれないけど、ウソがつけない吉野先輩にはそんなことは無理だ。


『あの、あのね、具体的なことはわからないけど、笹本くんに、茜ちゃんが男の子に人気があるっていう話を・・・。』


「先輩!」


っていうより、奈々!!

よく、そんないい加減なことが言えたね!


『それで、その・・・、笹本くんがあせって茜ちゃんに近付くんじゃないかって・・・。成功したと思ってたんだけど・・・。』


今のお勉強会がその結果だとしたら、もしかしたら、大成功・・・なの?


じゃあ、それって、つまり、笹本先輩は奈々の話を聞いて、あわてて・・・?

ってことは、笹本先輩はあたしのこと・・・?


『ああ、本当にごめんね! そんなに嫌だとは思わなかったから!』


あれ?

・・・先輩?

さっき言ったこと、聞こえませんでしたか?


『てっきり、茜ちゃんが笹本くんのことを好きなんだと思って。』


いやーん!

そんなにはっきり言わないでください!


『でも、困ってるんだったら、あたしが何とかするよ。藤野くんにも『本当に大丈夫なのか?』って言われてたんだけど・・・、』


お兄ちゃん?!

どこまで知ってるの?!


いやいや、それよりも!


「先輩。あたし、嫌なんじゃありません。」


『え?』


「あの、あの・・・、あたし、あの、笹本先輩のこと・・・・好きなんです・・・けど。」


口に出すのって、恥ずかしいよ〜!


『え? あ・・・あれ? そうなの? 合ってた?』


「はい。合ってます。」


『・・・じゃあ、悩んでるのはどうして? 土曜日、すごく楽しそうだったよ?』


「先輩。図書室にいらしたなら、声をかけてくれれば。」


『違うよ。あたしは一時間目に窓から見たの。茜ちゃんたちが学校に着いたところ。』


あ〜。 そんなところからも見えるんだった・・・。

門は教室棟の前だもんね。

いったい、どれだけの人に見られてたんだろう・・・?


まあいいか、そんなこと。


「・・・楽しそうでしたか?」


『うん。』


ふう・・・。


そうだよ。

きのうも、おとといも、あれこれ悩んだけど楽しかったよね・・・。


『何かあったの? けんかした?』


「けんかなんかしません。笹本先輩とあたしは、そういう関係じゃないですから。」


『あれ? もしかして、拗ねてるの?』


「違います! だって、何にも確実なものがないんですよ? あたしが勝手に勘違いしてるだけかもしれないのに。」


『勘違いって・・・。もしかして、笹本くんは何も言ってくれてないの? 確実なものがないって、そういうこと?』


「・・・はい。」


『笹本くんもしょうがないね。茜ちゃんのことを好きなのは間違いないと思うんだけど。』


え?

そんな。

はっきり言われちゃうと・・・、本当は、あたしもそんな気がしますけど・・・。

でも。


ふう・・・。


『茜ちゃん。大丈夫。きっと、うまくいくよ。・・・ねえ。茜ちゃんから言ってみるっていうのは?』


「え・・・? それは・・・、ちょっと・・・、悔しいっていうか・・・。」


『悔しい?』


「だって、先輩。あたしは笹本先輩には好きな人がいると思って、自分の気持ちは隠してきたんですよ?」


『え? 笹本くんに好きな人・・・?』


まあ、それは置いといてください。


「なのに、先輩はいつも余裕の顔で、あたしのことをからかうみたいに。」


そうだ。

今、口に出してみると、すごくよくあてはまってる気がする。


「それなのに、あたしから告白するなんて、なんだか、笹本先輩の作戦にひっかかったみたいな・・・。」


『ああ! なるほどね。今回は笹本くんの方が、茜ちゃんに近付いて来てるんだもんね。最後までちゃんとやってほしいよね。』


「吉野先輩、今回のことって、どのくらいご存知なんでしょうか・・・?」


『え? ええと・・・、奈々ちゃんと藤野くんから聞いた範囲で・・・。』


ってことは、日曜日に先輩の家に行ったことも?

“妹” の話は・・・さすがにお兄ちゃんも言わないか。


そのくらい知られているなら、全部話した方が気が楽だ。

吉野先輩と話すと、なんとなく、悩む必要なんてないような気分になってくるし。


うん!

話してしまおう!


「先輩! 聞いてください!」









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