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『吉野先輩を守る会』  作者: 虹色
第七章 茜
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吉野先輩、変ですよ?(7)



寝る前にベッドの上でごろごろしながら、今日一日のことを思い出す。

いろんなことがあったような気がするなあ・・・。


いろんなこと?

思い出すのは笹本先輩とのことばっかりだ・・・。


電車の中で吉野先輩と話しているところ。

プラネタリウムで起こされたとき。

それから・・・指先だけ握られた手。 ―― まだ握られたときの感覚が残ってる。心臓がドキンとする・・・。


ああ、真琴と里佳が先輩にまとわりついてたっけ。

デジカメやプリンタの説明をしているところ。


でも、一番強く印象に残ってるのはやっぱりあのときの先輩。

いつもと違う、すごく慌てていた先輩。


みんなが知らない先輩の表情。


だけど・・・。

先輩が見てるのは、吉野先輩だけ。

気持ちが乱れた先輩を癒やしてあげられるのは吉野先輩だけ。



・・・吉野先輩の視線。

何だったのかな?


吉野先輩があたしを見たのって、いつだっけ?


朝の電車の中。プラネタリウムが終わったあと。それから・・・電器屋さんからの帰りも。

そういえば、いつも笹本先輩と話してるときだったような気がする。

先輩がこっちを見たって思ったときの景色を思い出すと、吉野先輩の隣に笹本先輩がいるもんね。


そういえば、お昼頃、笹本先輩のことを怒ってるようだったけど・・・?

笹本先輩がミュウたちに囲まれていたとき・・・だよね。


ヤキモチだったりして。


恋愛感情じゃないにしても、いつも一番だった吉野先輩をほったらかしたから。

そんなこと、あるかな? ・・・ちょっとは、あるのかも。


それより、笹本先輩と話しているときに、あたしに関係があることってなんだろう?


笹本先輩と吉野先輩とあたし?


うーーーーん。

関係なさそうだけど・・・。


あたしより、お兄ちゃんなら分かる気がするよね。


あ。

もしかして、お兄ちゃんなのかな?


吉野先輩が笹本先輩と話してるのを、お兄ちゃんには言わないでほしいとか?


・・・吉野先輩らしくない。


もし隠したいなら、あたしの前では笹本先輩と話さないようにするんじゃないだろうか。話しかけられても迷惑そうな顔をするとか。

あんなに堂々と話していながら、お兄ちゃんに秘密にしたいっていうのは考えにくいよね。

長谷川先輩だって見てるんだから。


・・・逆?


お兄ちゃんに、話してほしいのかな?

なんか、この方が吉野先輩が考えそうな気がする。


でも、何のために?

お兄ちゃんに話したらどうなる?

さっきはお兄ちゃん、平気な顔してたけど・・・。


あ!

・・・もしかして、お兄ちゃんにヤキモチを妬かせたいのかな?!


でも、どうして?


・・・お兄ちゃんが冷たい?

浮気してるとか。


うーん、・・・浮気?

さっきのお兄ちゃんの態度を見た限りでは、そんなことなさそう。

それに、あのお兄ちゃんだよ!

真面目で照れ屋のお兄ちゃんが、浮気なんて器用なことをできるわけがない。


でも・・・、ないとは言い切れないよね。

してるのかな、浮気・・・?


でなければ、お兄ちゃんが気が利かないのをどうにかしたい?

笹本先輩がどれほど吉野先輩にやさしいのかを、あたしがお兄ちゃんに話すのを期待してる・・・?


うん、こっちの方がありそう。


お兄ちゃんって野球ばっかりで、吉野先輩のことをあんまり構ってあげられないみたいだし、その分、気を遣って何かしてあげるとか、気がつきそうにない。

しかも、吉野先輩は控え目で、そういうことを口に出せそうにない。


そうだ。

だから、笹本先輩と話しながら、あたしのことをちらちら見てたんだ。あたしがちゃんと見てるかどうかを確かめるために。


それは分かったけど。

それだと、笹本先輩がかわいそうじゃない?


・・・そんなことないか。


吉野先輩が特別に笹本先輩に言い寄ってるわけじゃないし、笹本先輩が吉野先輩にやさしいのはいつものこと。

要するに、あたしがお兄ちゃんにそれとなく話せばいいだけか。


なるほど。


だけど・・・、念のため、奈々に相談してみた方がいいかな? 間違ってたら困ったことになりそうだし。


いや、だめだ。


奈々は、お兄ちゃんと吉野先輩のことについては部外者だもん。

“二人がうまくいってないかもしれない” 、なんてこと言えないよ。

あたしは妹だから、二人のことには関係あるけど。

・・・たぶん。

少しは。


それに。


吉野先輩がメッセージを送って来たのはあたしだけ。(あれをメッセージって言えるのか分からないけど。)

やっぱり、奈々には言えないよね。



『この色は好きなの。』


急に、朝、服装を褒められたときの吉野先輩を思い出した。


“この色” ―― きれいなラベンダー色。


あの恥ずかしそうな様子って、いつもお兄ちゃんの話題を持ち出されたときの・・・あ!


ラベンダー色って考えてたけど、もしかしたら・・・藤色?

紫の、ちょっと淡い色。

うちの・・・つまり、お兄ちゃんの名前に関係がある色の服を選んでたんだ!


そんなふうに服を選ぶなんて、吉野先輩って、なんて可愛いんだろう!

それほどお兄ちゃんのことを好きな吉野先輩を心配させるなんて、お兄ちゃんは彼氏として失格だよ!


わかりました、吉野先輩。

まかせてください!


お兄ちゃんが、もっとちゃんと吉野先輩のことを考えるように、あたしからお兄ちゃんに話します。

あくまでも、さりげなく・・・。




あれ?

メールだ。

この音は奈々じゃない。


・・・・笹本先輩?!


思わずベッドの上で起き上がる。


部活の連絡用にみんなのアドレスは知っているけど、笹本先輩からメールをもらうのは初めて。


どうしよう?

ドキドキしてきちゃう。

ボタンを押す手が震えてる。


この手って、今日、先輩と・・・。


ああ、だめだよ!

それを思い出すのはあとで!!


『今日はお疲れさま。』


ほっと、息をつく。

普通の言葉に、ちょっと落ち着いた。


『俺が老けて見えるせいで、奥さんと間違えられちゃったりしてごめん。だけど、高校生なのに、大学生も飛び越えて、妻帯者に見えたなんてショックだ・・・。もう少し服装に気を遣わないといけないと反省してるところだよ。』


“老けて見える” って・・・、 “妻帯者” って・・・、言葉遣いが先輩らしい。

それに、しょんぼりしている先輩が目に見えるような気がする。


『次に私服で出かけるときには、ちゃんと高校生に見える服装にしたいけど、服を選ぶのって難しそう。それとも、服のせいじゃなくて、俺自身の見た目の問題なのかな?』


いいえ!

先輩は落ち着いてて大人っぽいですけど、ちゃんと高校生に・・・大学生くらいには見えますよ!

間違えられたのはあの場所のせいです。


『変な誤解に巻き込んじゃって、早く茜ちゃんに謝らなくちゃと思っていたんだけど、なかなか立ち直れなくて、こんな時間になってしまった。本当にごめん。もう話したくないとか思わないでくれるといいんだけど。』


なんか・・・どう言ったらいいのか、わからない。

ただ、笑い出しそう。


あたし、変?


でも・・・、だって、これって、部活の連絡じゃなくて、個人的なメールだよ?



いいのかな・・・?



“いいのかな?” って、何が?


何って・・・。

何って、つまり・・・。








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