第7話:感情の乗り換え案内、誤表示中
翌朝。
のぞみは、教室の自席で今日も時刻表を広げていた。
「今日の感情ダイヤは、誤表示中。乗り換え案内、バグってるわ」
(昨日の“手つなぎ仮駅”……あれ、通過したはずなのに……
なんか、車両の揺れが残ってる気がする……)
胸の奥に、まだ微かな“余韻”が揺れている。
そこへ、転校生の男子が教室に入ってくる。
「おはようございます。今日からこのクラスに転入してきました——
北斗惺司です。
この地に引っ越したばかりで、わからないことも多いですが、みなさん、仲良くしてください。
どうぞよろしくお願いします」
のぞみは、顔を上げる。
(……あれ?この人、なんか……)
視線が合った瞬間、胸の奥で小さな“切り替え音”が鳴った気がした。
転校生は、超絶イケメンで……制服のネクタイをきっちり締め、髪も整っていて、
手には分厚い時刻表を持っていた。
「鉄道研究会の友人から推薦されて来ました。趣味は乗り鉄と時刻表収集です」
(えっ……!?時刻表!?乗り鉄!?
この人、私の感情路線図に、勝手に乗り入れてきた!?)
迂闊が教室の隅からのぞみに囁く。
「おい、のぞみ。なんか……あいつ、時刻表持ってるぞ。
お前、あんなのにときめいたりしないよな?」
「え?べ、別に……ときめいてないし!
ただ……ちょっとだけ、乗り換え案内が誤表示しただけで……」
(やばい……私の感情、誤乗しかけてる……!)
転校生がのぞみに話しかけてくる。
「速杉さんですよね?
僕、あなたの“のぞみダイヤ”ってブログ、読んでました。
あの“感情の複線ドリフト”論、すごく面白かったです」
(えっ……!?あのブログ、さすがに自分でもイタいなって思ってたけど、
どうせ誰も読まないだろうから……ってタカを括ってたのに、この人……)
「読ん……でくれてたの!?」
(やばい……この人、私の鉄道脳に直通してきてる……!
こんなふうに“理解される”感覚……久しぶりだ)
その間、迂闊はのぞみの隣でむすっとしていた。
「なあ、のぞみ。俺の“好きかも駅”は、まだ建設中なんだけどさ……
あいつ、勝手にホーム作ってね?」
「ち、違うよ!あれは……仮ホーム!しかも、未認可!
私の感情ダイヤに、勝手に停車しないでほしい!」
(でも……ちょっとだけ、乗ってみたくなったのも事実……。
その“ちょっと”が、自分でも怖い)
のぞみは、時刻表を閉じて、深呼吸する。
《……乗り換え案内、再表示中。
誤乗防止アラート、作動……》
でも、どの路線に進むかは……まだ決められない。
次回予告
次回、「感情の複線ドリフト、発生」
のぞみ、迂闊と転校生の間で感情が並走!?
複線ドリフトの果てに、感情の脱線事故発生!




