第61話:すれ違いは、ほんの一言から
※のぞみ視点
写真を撮り終えたあと、私は「お土産見たい!」って言った。
テンションが上がったまま、城下町の商店街へ向かう。
干物屋、かまぼこ屋、漬物屋──観光地らしい店が並んでて、見てるだけで楽しい。
「これ、家族に買ってく。あと、ひよりにも」
「るいは?」って迂闊が聞いてきた。
「るいは……なんか、うなぎパイとかでいいや」
「それ、静岡じゃねーか!」
笑ってる迂闊の顔を見て、少しだけ胸が痛くなった。
──澪のこと、聞かなきゃ。
干物を手に取ったまま、私は言った。
「ねえ」
「ん?」
「温水プールにいた、あの女の人──」
「……」
「もしかして……迂闊の幼馴染なんじゃない?」
迂闊の目が、ほんの一瞬泳いだ。
「……ああ。そうだよ。澪は、幼馴染」
やっぱり。
私の勘、当たってた。
干物を棚に戻す。
手が、少しだけ震えてた。
「そっか……幼馴染か……」
「べ、別に、昔から仲良いってだけで──」
「仲良いんだ」
迂闊の顔を見たくなくて、私は前を向いたまま歩いた。
──私たちって、何なんだろう。
「……ねえ、私たちって、もう恋人って言っていい関係だよね?」
「え?」
「手、繋いでるし。デートもしてるし。
でも、恋人だったら……キスとか、してなきゃおかしいのかなって……」
言いながら、自分でも何言ってるんだろって思った。
でも、確かめずにはいられなかった。
迂闊は、ちょっと困った顔をして──
言った。
「何焦ってるんだよ。お前らしくない。熱でもあるんじゃないのか?」
……え?
その言葉が、胸に刺さった。
笑いながら言ったのかもしれないけど、私には、ただの拒絶にしか聞こえなかった。
私は、ぴたりと立ち止まった。
そして、何も言わずに迂闊の横をすり抜けて歩き出した。
「……のぞみ?」
呼びかけられても、振り返らなかった。
商店街の灯りが、私の背中を照らしていた。
歩幅を少しだけ速くした。
──私のバカ……。
自分の言葉で、自分が傷つくなんて。
ほんと、バカみたい。
角を曲がった瞬間、迂闊の姿が見えなくなった。
でも、心の中ではずっと、あの言葉が響いてた。
次回予告
※修正予定です。




