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第53話:深夜の再会と、言えなかった言葉の行方

前回のあらすじ


第51話。

女子露天風呂への潜入作戦──迂闊はシュノーケルを装着し、湯の底へ。

そこへのぞみとひよりが入ってきて、彼は“岩”として完全に認識される。

顔面に座られ、足が当たり、でも動けない。そんな中、のぞみの本音が漏れる。


「気づくと目で追ってるんだよね」

──迂闊は湯の底で、心臓が跳ねた。


続く第52話。

今度は澪・さつき・きららの三人が登場。

さつきの格闘技実演で迂闊の顔面にパンチとミドルキックが炸裂。

さらに澪が湯に入り、迂闊の真上に座ってしまう。身動きが取れない中、

シュノーケルの呼吸音で身バレ寸前──そのとき、澪が語り出す。


「“行きます”って、ちゃんと返事書いてたんだよ」

──迂闊はそこで、過去の見落としに気づく。


そして湯上がり。

ようやく脱出……と思いきや、今度は大阪のオバハン三人衆が登場。

姦しいオバハンたちからの逆セクハラの嵐に巻き込まれ、迂闊の青春は完全沈没した。


※あらすじ終わり




※迂闊視点


──湯から脱出した俺は、露天風呂の縁に腰を下ろした。

夜風が頬を撫でる。星がちらりと見える。


「はぁ。俺の純潔……あの大阪のオバチャン達に奪われるんじゃないかって、マジで心配だったぜ……」


俺の顔面は湯の底で先輩のEカップの深い谷間に癒されたかと思えば、格闘技をもろにくらったり、

おばちゃんたちから逆セクハラされそうになったり。

まるで株価のような乱高下を味わったが、心はギリ保った。


──そのまま部屋に戻るつもりだった。

でも、廊下の角を曲がった瞬間、澪の姿が見えた。


(……うわ)


俺は思わず立ち止まった。

澪は、浴衣姿のまま、廊下の窓から夜空を見上げていた。


(俺は澪を冬の寒空の下で一日中待たせた挙句に会いにすら行かなかった。

そんな衝撃的な事実をついさっき知ったげに、今話すのは気まずすぎだろ、俺。

これならまだあのおばちゃん三人衆の相手をしてた方が気は楽かもな……)


でも──黙って引き返すには、廊下が狭すぎた。

おい設計者、絶対俺をここでハメて困らせる気満々だっただろ。


澪が気づいたように、ゆっくりと振り返る。


「……迂闊くん?」


「……あ、ああ。今、戻るとこで」


「……少しだけ、時間もらっていい?」


その声は、静かで、でも確かに俺を呼んでいた。


──俺たちは、廊下の隅にある窓際のソファーに並んで座った。

窓の外には、星がいくつか瞬いている。


俺は澪にぽつりとつぶやいた。


「……さっきは、ありがとな。助かった」


「え、なんのこと?」


「隠さなくていいぜ……あのとき、俺がいること気づいてたんだろ?」


「うん。なんとなく」


俺は、笑うしかなかった。

澪は少しだけ目を伏せていたが、俺は続けた。


「ところで……あのとき、図書館の後のことだけどさ……」


「……ごめん、今はまだ、ちゃんと話せないかも」

澪は、まるで何かを思い出すように少し上を向きながら、ぽつりと続けた。


「なんか……私の心の中の DaiG◯(ス◯夫)さんが、最初は自慢してたのに、最後はホリ(ドラ)ちゃんの道具で“ざまぁ”されるような気持ちって言ったらわかるかな……」


「はい──??」

俺は思わず声が裏返った。


「……それ絶対、意味違うと思うぞ。

しかもなぜ、しず◯ちゃん目線?」


(DaiG◯ってたしか……心理学の人で、テレビやネット動画で人の心を読んだりしてた人だっけ?

前髪がツンと流れてて、口先がちょっと自信満々で、ス◯夫感あるんだよな。

しかも、ちょっと“俺ってすごいでしょ”って空気も……)


「前言撤回、やっぱ澪の勝ちだ」


俺は、またもや澪のボケに付き合ってしまった。

でも、澪の言葉は不思議と嫌じゃなかった。

むしろ、そのズレが、なんか──愛しかった。


「話、脱線しちゃったね」


「ああな」


「え……とさっき話してた図書館での返事の件だけど……少しだけ、時間もらっていい?」


「ああ、わかってる。俺も……整理できてない」


沈黙が流れる。

でも、苦しくはなかった。


「……連絡先、交換しとかないか?」


「うん」


──スマホを取り出して、澪の名前を登録する。

俺は「ありがとう」とだけ送った。

澪からも「こちらこそ」と返ってくる。


するとその瞬間──

ピピピピー!

俺のスマホが鳴り響いた。

のぞみからの着信だった。


「誰……?」

澪が小さくつぶやく。


「ご、ごめん、気にしないで」


「電話……出ないの?」


「いいんだ」


──いや、よくない。

でも、今ここで出たら、もっとよくない。


俺はスマホを握りしめたまま、焦って画面を閉じようとして──


「あっ……!」


指が滑った。

澪からの返信を、のぞみのトークルームに転送しかけていた。


(やばい、今の……まさか……)


着信が鳴り止む。

画面が静かになる。

その瞬間、俺の心臓が跳ねた。


(……今の、送ってないよな?)


慌てて確認する。

……セーフ。未送信。ギリギリで止まってた。


(澪からの返信を、のぞみに送ってたら──

俺、今ごろ問答無用で即死だろ……)


指先が震える。

LINI交換って、こんなに命がけだったっけ?



──澪が立ち上がる。


「私、そろそろ部屋に戻るね……またね」


「ああ。また」


澪の背中が、廊下の向こうに消えていく。


俺はスマホを見つめながら、ぽつりとつぶやいた。


「……俺、今夜だけで何回、澪に“あの時はごめん”って言いかけて飲み込んだんだろうな」


……。


違う!


(……俺、また逃げようとしてないか?

澪の背中を見送って、何も言わずに終わらせようとするなんて最低だ。

“今はタイミングじゃない”とか、“整理できてない”とか、もっともらしい言い訳を並べて。

でもそれって──結局、俺自身が傷つきたくないだけだろ?)


(澪に謝るのが怖かった。あのときの自分の鈍さも、無神経さも、全部見透かされる気がして。

でも、澪は俺に時間をくれた。言葉をくれた。

なのに俺は、また澪に背中を向けようとしてた)


(……違う。もう、逃げない)


「澪、待って!」


──俺は思わず声をかけていた。


澪が振り返る。


──あの言葉を、今度こそ飲み込まずに言った。


「澪……あのとき、待たせてごめん。 俺、ちゃんと見てなかった。返事も、気持ちも。ほんとに……悪かった」


澪は、少しだけ目を伏せて、でも優しくうなずいたように俺には見えた。



「……私、部屋に戻るね……またね」


「ああ、また」



次回予告

朝食会場で澪がぼんやり……。

でも、さつきに異変が!?

恋バナ?コント?謎の空気が炸裂!

次回、「朝の食卓と、まだ揺れる“期待”」

澪の“期待”が、静かに揺れ始める──!

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