表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

第26話:鉄道イケメン舞踏会 瑞風公爵

のぞみがラビュー卿とのダンスを終え、ふわりと息を整えたその瞬間——

会場の空気が、また静かに変わった。


遠くから、深緑のタキシードに身を包んだ青年が歩いてくる。

髪は艶のある黒で、前髪が少しだけ目にかかっている。

歩くたびに、靴音が床に優しく響き、彼の周囲だけ空気が柔らかくなっていくようだった。


彼は、のぞみの前で立ち止まると、深く一礼した。

その動きは、まるで風が葉を撫でるように静かで、丁寧だった。


「お迎えに参りました。《《乗車口》》は、こちらでございます」


「瑞風と申します。私は《《寝台》》のように、ゆっくりとあなたを包み込みたい」


「……寝台!?

それって“寝る電車”のことですよね!?」

(寝台列車の布団……一度でいいかな包み込まれてみたいって思ってたのよね〜♪グヘヘへ)



その瞬間——


ぐぅぅぅぅぅぅ……


会場に響く、謎の低音。


のぞみの表情が一瞬フリーズする。

瑞風公爵が微笑みながら首を傾ける。


「……今のは、汽笛でしょうか? 

随分と腹式呼吸の効いた音でしたね」


「えっ!?あ、はい!汽笛です!たぶん!きっと!」


のぞみ、全力で笑顔を作るが、顔が引きつっている。

(やばい……さっきからお腹鳴りそうだったけど、まさかこんなタイミングで……)


「あなたの鼓動、すでに発車していますね。あとは私が、終点までお連れするだけです」


(待て待て待てーい! 終点て……まさかこの人、女子トイレの中までついてくるつもりじゃないよね!?)


のぞみは、何も言わずにプルプルと震わせた手を差し出した。

瑞風公爵は、その手を両手で丁寧に包み込む。

指先が触れた瞬間、遂に限界を迎えたのぞみのお腹の音がグォー!

とけたたましく高鳴った。


彼は、のぞみの手をそっと引き寄せ、

一歩ずつ、ゆっくりとダンスの輪へと導いていく。

その足取りは、まるで彼女の鼓動に合わせるように静かで優しかった。


音楽が変わる。

ゆったりとした三拍子。

瑞風公爵のステップは、まるで夜汽車のように静かで滑らか。

のぞみの表情と身体が、まるで

ロボットのようにぎこちなく動き出す。



彼の手が、のぞみの背中にそっと添えられる。

「いやんっ!」

(やめれ〜!)

その手は、まるで寝台の毛布のように、安心感とぬくもりを持ってるわけが無かった。


「あなたの感情、途中停車はいたしません。すべて私が受け止めます」


「げぇ、休憩無いの!?」


「げぇ?お嬢様、どうかされましたか?」


「いえ、なんでもないっす……」


のぞみは、無理矢理微笑んでいた。

心臓の音とお腹の音が、羞恥心というレールの上を同時に暴走していた。


次回予告

次回、「鉄道イケメン舞踏会 サフィール侯爵」。

サフィール侯爵の登場編!

宝石のような瞳のイケメンが、のぞみの心を“指定席”に!?

ツッコミは加速運転でお待ちください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ