第25話:鉄道イケメン舞踏会 ラビュー卿
これは……夢?
気がつくと、のぞみは豪華な舞踏会の中央に立っていた。
天井には金の装飾が施され、シャンデリアがきらめいている。
床は鏡のように磨かれ、ドレスの裾がふわりと揺れるたび、光が反射して足元を包んだ。
髪には小さなティアラ。
周囲では貴族たちが優雅に踊っている。
けれど、のぞみはただ、そこに立ち尽くしていた。
そのとき——
遠くから、ゆっくりと歩いてくる青年がいた。
彼は、銀髪。
光を受けて淡く輝くその髪は、まるで朝の窓辺に差し込む光のよう。
瞳は薄いブルー。見つめられると、空気が少しだけ澄んだ気がする。
燕尾服は深いネイビーで、袖口には金糸の刺繍。
歩くたびに、裾がふわりと揺れ、彼の周囲だけ時間がゆっくり流れているようだった。
のぞみは、息を飲んだ。
彼の視線が、まっすぐ自分に向けられている。
その瞳は、笑っていないのに優しい。
そして、彼は立ち止まり、片膝を軽く折って手を差し出した。
「お嬢様、今宵の《《ダイヤ》》は、あなたのために空けてあります」
その声は低く、響きが柔らかい。
のぞみの胸が、ふわりと高鳴る。
「私はラビュー。西武家の令息です。《《窓の広さ》》には定評があります」
そう話す彼は、完璧なキメ顔である。
表情には一切の迷いがなくむしろ誇らしげに。
「お嬢様、私の《《特別車両》》に乗っていただけませんか?」
「はい……よろこんで」
のぞみは、それ以外何も言わずに手を取った。
その瞬間、彼の指先がそっとのぞみの手を包み込む。
温かくて、柔らかくて、でもどこか“指定席”みたいにぴったりだった。
ラビュー卿は、のぞみの手をそっと包み込んだまま、
一歩ずつ、ゆっくりとダンスの輪へと導いていく。
その足取りは、まるで彼女の緊張をほどくように静かで優しかった。
のぞみのドレスが揺れ、髪がふわりと舞う。
彼の手が、のぞみの腰にそっと添えられる。
その手は、まるで“窓際”のように、静かで落ち着いた場所だった。
音楽が変わる。
ゆったりとした三拍子。
ラビュー卿のステップは、まるで風のように滑らかで、のぞみの身体が自然と動き出す。
「ステップは、私に合わせて。あなたの感情、乗り換えなしの直通運転でお連れします」
のぞみの視線が、彼の瞳に吸い込まれる。
その瞳は、まるで車窓から見える遠い景色のようだった。
「あなたの心、終点までご案内します。《《途中下車は許しませんよ》》」
のぞみは、ただ微笑んでいた。
彼の手の温度が、少しだけ上がった気がした。
次回予告
次回、「鉄道イケメン舞踏会 瑞風公爵」。
瑞風公爵の登場編!
寝台のように包み込むイケメン、でものぞみの車両から突然汽笛が鳴り出す緊急事態が!
ツッコミ不在が加速する、鉄道乙女ゲー舞踏会編……青春18切符編……あれ、どっちだ?
まだまだ続きます!




