表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜帝は番に愛を乞う  作者: 浅海 景


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/57

待ち伏せ

何事もなく一月が過ぎ、ルーは勉強に励んでいた。午前中はエルクセリアについて学ぶため家庭教師の授業、午後は礼儀作法や社交の勉強、そして乗馬だ。色々と覚えることが多い中、乗馬は気分転換にもなり、ルーは乗馬の時間が楽しみになっていた。


アレクシスは忙しい中でも必ずルーと朝食を摂るし、執務以外の時間はなるべくルーと過ごそうとしてくれる。使用人たちの態度も変わらず丁寧に接してくれるが、それでも伝わってくるものはあった。

授業では習わないことでも図書室に行けば、歴史書や教本などが豊富に揃っているため調べることが出来るのだ。


(通常、竜帝が番を得た場合や婚約が調った場合はお披露目のためパーティーが開催されるのに……)


国中で祝う慶事であり、竜帝の大切な存在を周知させるためのパーティーは一向に開催される気配がない。準備に時間が掛かるとしても、ルーに知らせない理由はなく、恐らく四家が反対していることから開催できないのではないかと推測された。


パーティーで大勢の前に立ちたいわけではないが、開催されないことについてエルクセリアの国民がどう思っているか考えると気が重くなる。


(……人前に出せないほど問題のある人物かと思われているわよね)


溜息を吐きたくなるのを堪えて、勢いをつけて馬に乗る。最初は難しく踏み台が必要だったが、今は一人で乗れるようになった。


「ルー様、ご準備はよろしいでしょうか?」


先発の護衛が出発したのを確認して、促すように声を掛けたユーリアにルーは手綱を引いて馬を進めた。

今日は森を抜けて海が見える辺りまで周るコースだ。森と言っても城を通らなければ入ることが出来ないため、立ち入りできる人間は限られている。


周辺の景色を見ながら速歩でユーリアと並んで走った。ルーたちの後ろにはオルガを含む護衛が三名とカミラが同じペースでついてきている。


「もうすぐ海が見えてくる頃ですわ」


少しだけ傾斜のある道を上って、ターコイズブルーが見えてきてルーが口元を綻ばせていると、視界に藍色が映った。

ひらひらと手を振る人影が誰か気づいた瞬間、ルーは息を呑んだ。

四家の一人、エドヴィン・ハウザーが優雅な笑みを浮かべて立っていたのだった。


いくら苦手に思っていても、公爵家当主を無視することはできない。この場で最も上位の立場であるルーがエドヴィンの対応をする必要がある。


「ハウザー公爵様、良いお天気ですわね。このような場所でお目に掛かることができるなんて思いませんでしたわ」


微笑みを意識しながら挨拶とともにそう告げると、エドヴィンはにこやかに挨拶を返す。


「気分転換に少し馬で駆けていたのですが、番様にお会いできるなんて俺は運が良いですね。折角ですので、少しお時間を頂けませんか?陛下のことでお願いしたいことがあるのです」


公爵であるエドヴィンの誘いは断りにくく、またアレクシスに関することだと言われれば聞いておきたい。ユーリアの様子を窺えば、微笑みの裏で警戒しているようだが同時に戸惑っているようにも感じられた。

いずれにせよルーが判断しなければいけないものだ。


「ええ、喜んで」

「あちらの四阿で話しましょう。ユーリア嬢もご一緒にどうぞ」


不安な心を見透かされたような一言に、ルーは自分が上手く微笑んでいるか自信はなかった。


「先日は驚かせてしまって申し訳ございません。俺としては番様が陛下のご伴侶となられることに反対しているわけではないのですよ」


ベンチに腰を下ろすなり、エドヴィンは何でもないことのように慎重な対応を要する事柄を軽やかに告げる。


「爺様たちと違って先帝陛下の悲哀のほどを直接目にしたわけではありません。ですが、まだまだ若輩者なのであまり口出しできる立場ではないんですよね。普通に考えたら番様は竜族のために必要な存在なんですけど、長い目で見ると番様でなくてもと考えてしまう気持ちも分かりますし」


奥歯に物が挟まったような言い方に、ルーはその意味を量りかねて困惑してしまった。


「ハウザー公爵!」


その意図に気づいたユーリアが焦ったように声を上げたが、それを無視するようにエドヴィンは笑みを深めた。相手の反応を楽しむかのような色がある。


「番が本能で選ぶ特別な存在なのは、子を成す確率が高いからです。特に竜族は子を成しにくいですから番が最適な相手とされていますが、番以外でも子ができないわけではありません」


咄嗟に言葉を返さなければと思うのに、頭が真っ白で何も浮かばない。侮辱だと捉えるか、ただの事実だと受け止めるかで対応が変わる。


「普段の陛下はとても合理的な判断をなさる方なのですよ。世継ぎは必要ですが、四家としても陛下には幸せになっていただきたい。これは決して番様を蔑ろにするわけではございませんが」


この人は苦手だと思う気持ちがどんどん強くなる。話を聞くべきではなかったと、後悔してももう遅い。


「陛下には本能を抑える薬、抑制剤を服用して頂くよう進言しております。それでもなお番様を伴侶と望むのであれば、四家もこれ以上反対いたしません。俺たちは陛下に冷静なご判断を仰ぎたいだけなのです。番様からも陛下を説得していただけないでしょうか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ