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人気アイドルになった元同級生と小学校以来の再会を果たした話  作者: みつぎ


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最終話:our graduation

 高校の卒業式を終えて帰宅すると、家の前に元アイドルが立っていた。


「おかえり、辻くん」

「お前はいつも突然現れるな」

「あはは、ビックリさせたくて。ちょっと歩こうよ」


 東雲に言われるがまま、二人並んで住宅街を歩く。

 

「前みたく顔隠さないのかよ」

「私もう一般人だし、そんなことしないよ」

「有名人ではあるだろ」

「もう卒業して半年だよ? みんな私のことなんて忘れてるって」


 そんなわけないと思うが……ただもう辞めたわけだし、過剰に気にする必要もないのか。


「君と会うのも、一年半ぶりくらいかな?」

「卒業公演を見に行ったのが最後だから、半年ぶりだな」

「それ会ったって言わないから。楽屋にも来てくれないし」

「行くかよ。変に噂されたらどうする」

「相変わらずだなあ、ほんと……」


 クスッと笑い、「でもありがとうね」と東雲。


「辻くんはそうやってずっと、私のこと心配してくれてたんだもんね」

「……まあ」

「おかげさまで私、アイドルやり切れたよ。悔いなく最後まで」

「ああ。頑張ったな」

「本当にありがとね。あの日、君と再会できてなかったら……私は今、潰れちゃってたかもしれない」


 ふう、と息を吐いてから、彼女は続ける。

 

「辻くん。アイドルって、思ったより辛くて、想像以上に苦しかったよ」

「……だろうな」

「でもね……なれてよかった」


 そう言って東雲は満足げに、上を向いた。昼下がり、青空が広がる。


「すごい景色をたくさん見れたし、幸せな笑顔をいっぱい見れた。アイドル……すっっごく楽しかったよ!」


 横から見るその笑顔は、アイドルの頃とはまた違って見えた。

 まるでただ無邪気なだけの、どこにでもいる普通の少女のような。


「それは、なによりだな」

「うんっ。そういえば辻くんは?」

「えっ?」

「将来の夢。決まった?」

「……ああ」

 

 まさかこの歳になっても聞かれるとは思わなかったな。

 

「大学でしっかり勉強して、公務員になる」

「おおー。私と違って、堅実な良い夢だねえ」

「嫌味か?」

「ううん、君らしいなって思っただけ。じゃあ今度は私がその夢を、応援するねっ」


 東雲はそう言って、元気よく親指を立てる。

 


  

 小学校の頃書いた、自己紹介シート。俺の将来の夢は、()()だった。

  

 俺には叶えたい夢なんて、なかったから。


  

 だけど隣の席の、地味で暗い少女は。


 

『……アイドル?』

『ご、ごめん、やっぱり返して』

 

 

 その性格に似つかわしくない、大きな夢を描いていた。

 

 

 その後、交換したシートを返してもらうと、俺は急いで適当な夢を書いた。

 アメリカ大統領……とかなんとか、もう忘れたけど。

 夢がない自分がなんだか恥ずかしくて。取り繕うように、つまらない冗談で空白を埋めた。


  

 その時から俺は、東雲桜に憧れていた。

 夢に向かってひたむきに頑張っている彼女の姿が、俺はずっと好きだった。

 

 

 だけど東雲はいずれアイドルになる。男の影などあってはならない。

 だからこの気持ちは隠し続けると決めた。それがあいつの夢を応援するための、俺の覚悟だった。

 

 ……でも。

 

 もう隠す必要ないよな?

 だって彼女はもう、『普通の少女』なのだから。


  

「なあ」

「うん?」

「俺も、好きだよ」

「……ん?」

「お前のことずっと好きだったし、今も好きだ」

「……」


 東雲は立ち止まった。

 振り返ると、彼女は口をぽっかり開け硬直していた。


「えっ……今、なんて?」

「好きだから付き合ってくれ。愛してるって言った」

「そこまで言ってた!? ええっ、うそ、うわぁっ」


 両手で真っ赤な顔を隠す、東雲。

 

「私、こんなに幸せでいいのかなあ……」

「いいんじゃね? お前はこれまでたくさんの人を、幸せにしてきたんだから」


 俺は「いこうぜ」と前を向いて歩き出す。

 後ろから足音が聞こえた。スキップでもしてるかのような、ご機嫌な音だった。



 

 *



 

「ついたよ、辻くん」

「……」


 目的地あったのかよ。適当に歩いてるだけかと思った。

 目の前には、新築っぽいアパートが建っている。

  

「……ここは?」

「私、ここに引っ越してきたの」

「は?」


 はあ!?

 

 なんか勝手に『今回は旅行で来たのかな』とか思ってたけど、移住してたのかよ!


「一人暮らしするの。馬車馬のように働いたから、お金に余裕もあるし」

「な、なるほど……卒業後は地元でゆっくりってか」

「ふふっ。これからはいつでも会えるね?」


 いつかのような小悪魔的笑顔で、俺の顔を覗き込む東雲。全く芸能界に揉まれて、一皮も二皮も剥けやがって。


「しかし良いアパートだな」

「まだ外観しか見てないのに」

「いや、だってあそこ」


 俺は建物のすぐ隣を指差す。すると東雲も「ああ」と納得した様子で、


「もうすぐかな。楽しみだね」

「だな」

「せっかくだし上がってって。荷物まだあるけど」

「片付け手伝うよ」


 俺たちはそんな会話をしながら、アパートの階段を上がる。


  

 人気アイドルと普通の高校生。住む世界が違いすぎた俺たちは、それぞれの卒業を経てまた、近くに。

 さて。俺たちの新しい門出は一体、どんなものになるだろう。

  

 

 三月。もうすぐサクラが咲く季節だ。


 

 

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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普段はラブコメを中心に書いています。よろしければ是非過去作も見てみてください。

https://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/1066221/


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― 新着の感想 ―
素敵な作品をありがとう 隣の建物は、主人公が進む大学なのかな? これからの生活が楽しみなるようなものでしょうね。 他の作品を読みます、次回作品も楽しみにしてます。
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