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人気アイドルになった元同級生と小学校以来の再会を果たした話  作者: みつぎ


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3/6

第3話:偏愛レボリューション

「ああ……おめでとう」


 そう口にした瞬間、不覚にも涙が出そうになった。

 あの頃、自信なさげに将来の夢を書き直そうとしていた東雲が、今こうして夢を叶え、念願のアイドルになり目の前にいる。

 

 すまん、流石にエモすぎるわ。

 

 なんか照れくさくてそっけない態度とってたけど、もう泣きそうです、俺は。


「ところで辻くんは最近、どうなの?」


 俺の気持ちなぞ知る由もない東雲は、話題を変えた。しかもフリーな世間話。感情追いついてないって。

 

「別に、普通に高校生してるけど」

「そっか。辻くんももう、高校生なんだね。何年生?」

「二年……いや、お前も同じだろ」

「私は違うよ。籍はあるけどほとんど学校行ってないし、高校生とは言えないかな」


 籍があるなら言えるのでは……。まあ学生という肩書がしっくりこないのも当然か。もう立派に仕事してる芸能人なわけだもんな。


「どう、楽しい? 高校生活は」

「普通だけど……」

「彼女できた?」

「いいや」

「まあいたら『普通』なんて感想にはならないか。じゃあ平凡な日常を送ってる君に、『非日常』のプレゼント」


 余計なお世話だ。

 と、東雲は持っていた小さなカバンから何やら封筒を取りだし、俺に渡してきた。


「……なにこれ?」

「来月のアリーナ公演の、関係者席チケット。土曜だし、遠いけど電車でも行けるから、来てくれると嬉しいな」

「は? いらねえよ」

「そんな冷たい事言わないでよー。生のライブって、全然迫力違うよ?」


 小悪魔的な微笑を見せる東雲。そんな顔もできるようになったんだな。

 

「じゃなくて。もう持ってるから」 

「えっ?」


 俺は財布から、チケットを取りだし見せる。


「……えっ!? な、なんで持ってるの!?」

「抽選通ったからだろ」

「す、すごいね。最近はファンクラブ入ってないとなかなか取れないのに」

「そんなもん、二年前の設立当初から入ってる」

「えーっ!?」

 

 東雲は驚いた様子で、大声を出して立ち上がった。

 

「は、早く言ってよぉ。もしかして、結構ライブ来てくれてたりするの?」

「まあ、行ける限りはな」


 そう言って俺も椅子から立ち上がり、クローゼットの方に移動する。そしてその扉を開く。

 

「ちなみに全CD全ライブBD全グッズ揃ってる」

「めっちゃファンじゃん!!」


 扉の奥には大量のパッケージが並べられ、引き出しを引けば溢れるほどのグッズが出てくる。

 

 まさかこのコレクションを、本人に見せることになるとはな。

 

「そ、そんなにスイスイ好きでいてくれてたの……? えっ、誰推し!? 誰推しかだけ教えて!」

「お前に決まってんだろ!  誰が元同級生を差し置いて別のヤツを推すんだよ」

「そ、そっか。そうだよね。うわ、嬉しいなあ……」

「あと全グッズって言ったけど、お前に関するグッズだけな。流石に全メンバー集めるほどの金はなかった」

「ううん、全然いい。むしろ、その方がいい……」

 

 グループのセンターとしてあるまじき発言をしたように聞こえたが、聞き流すことにした。

 

「ずっと……。ずっと応援してくれてたんだね、辻くん……」

「当たり前だろ……俺はお前の最初の『客』で、『ファン』なんだから」


 それこそエモい台詞を言ってしまい、自分で恥ずかしくなる。

 そんな俺の言葉を受け、


「わ、私も……」

 

 東雲も感極まったのか、泣きそうな顔をして声を震わせた。

 

「私もね……実は昔から、辻くんのことが好きだったんだ……」

「そうか……」

「辻くんも私のこと、こんなに好きでいてくれたんだね。ということは私たち、()()()ってことだよね……?」 

「うん……ん?」

「ねえ辻くん。今、彼女いないんだよね? じゃあちょうどよかった」


 ……あれ? さっきからこの人、なに言ってる?


 東雲の顔を伺うと、彼女はニコッと微笑んだ。

 だけどその大きな瞳の奥は、どろりと黒く濁っているように見えた。


 

「私たち、付き合おうよ」



 


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