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人気アイドルになった元同級生と小学校以来の再会を果たした話  作者: みつぎ


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第1話:会いたかった

 東雲桜(しののめさくら)に対しての第一印象は、地味で暗い性格の『陰キャ』だった。

 

「はーい、みんな自己紹介シートは書けたかな? じゃあ隣同士で交換して、お互いのことを知っていきましょー!」


 新しい担任教師が意気揚々と声を上げる。

 なるほど。小学四年生に上がりたての我々には相応しい、幼稚な企画だ。仕方ない、付き合ってやるか。


「俺、辻春馬(つじはるま)。よろしく」

「……東雲桜です」


 声小さいな。

 それに髪はボサボサで、前髪が長くて顔もよく見えない。

 

 そんな隣の席の暗そうな女と、A4サイズの自己紹介シートを交換する。どれどれ。

 誕生日4月8日、A型、好物はイチゴ、趣味はライブ映像を見ること、将来の夢は――


「……『アイドル』?」

「ご、ごめん、やっぱり返して」


 スッと横から伸びてきた手が俺の持つシートに触れようとしたが、寸前で俺は避ける。


「あっ」

「返さねえよ。まだ読んでるだろ」

「そ、それ、間違えて書いちゃったの。直したいから……返して」

「間違えたぁ? 将来の夢を?」

「うん。だって私なんかが、なれるわけないし……」


 自信なさげに視線を落とす東雲。

 ……意外だな。明らかに地味で物静かそうなこの女が、内心こんな可愛らしい……否。

 

 こんな()()()()()を持っているとは。


「あのな。こういうのって『なれるもん』を書くんじゃないだろ?」

「えっ?」

「『なりたいもん』を書くんだよ。なれるかどうかは、そっからの努力次第だろ」

「で、でも私みたいな陰キャが、なれるわけない……」

「確かにお前はどう見ても陰キャだが、自覚あるならなんとかなるよ。諦めずにまず、頑張ってみろよ」

「……」


 俺がそう言うと、東雲は下を向いたまま黙った。これじゃ交流の深めようもない。

 

 その後、シートは教室の壁に貼り出すことになった。そして休み時間になると――


「え、東雲さんってアイドルになりたかったん!?」

「うそお!? 意外すぎんだけど! あはははっ」


 教室は爆笑の渦に包まれた。東雲の方を見ると、前髪越しでも分かるくらい顔を赤くしていた。

 

 やば。これ俺のせいか……? 俺が余計なこと言って、書き直させなかったから……なんか、悪いことをしてしまった。


「おいお前ら、こっちにもっと面白いのがあるぞ!」

「えっ?」

 

 なので一応罪滅ぼしのつもりで、俺は壁の()()()()()を指さし大声を上げた。

 全員の注目が集まる。

 

「こいつの将来の夢、見てみ」

「えっ? 誰の誰の……って、お前のやつじゃん」

「えっと……将来の夢、『500代目アメリカ大統領』」

 

 と誰かが読み上げると、一瞬にして教室が静まり返った。

 なんだ、面白すぎて全員死んだのか?

 

「なにこれ……つまんな」

「ウケ狙いが透けて見えてウザイ」

「『500代目』が特に寒いね」


 こ、このガキども……! 


「もういいや、いこー」と、さっきまで笑っていた集団は散っていった。

 ふん、こいつらにはまだ早かったか。お笑い弱者どもが。

 

 すると、トントンと後ろから肩を叩かれた。振り向くと、


「私は面白かったよ」

 

 東雲が全くの無表情でそこにいた。嘘でもいいから笑顔で言ってくれ。


「あと……ありがとう。私の夢、笑わないでくれて」

「……別に」

  

 それから東雲とはよく話すようになった。お互いの家にも行くようになり、一緒にアイドルの映像を見たり、芸能界のことを勉強したりもした。


 東雲の熱意は本物で、本気でアイドルを目指しているようだった。そんな彼女の夢を、密かに俺も応援する。 


 だけど小学校卒業を機に、俺たちの関係は途切れることになる。

 東雲が親の仕事の都合で、東京に引っ越すことになったのだ。


「あっちに行けばオーディションも色々あるだろうな。絶対チャンス掴めよ」

「うん……私、絶対にアイドルになるから。必ず夢を叶えるから……っ!」 

 

 あの時のあいつの泣き顔と、小四から卒業までの三年間、共に過ごした日々を。

 高校生になった今でも俺は、忘れられずにいた――。

 

 

 *

 

 

 放課後、高校から帰宅すると、家の前に不審者が立っていた。

  

 キャップを被り、サングラスにマスクを付け、徹底的に顔を隠している。

 だけど首から下は薄桃色のブラウスに膝上辺りまでの黒いスカートという、ガーリーな服装。

 そのギャップが、より怪しさを際立たせていた。

 

「おかえり、辻くん」


 うわ、話しかけられた。警察警察。

 俺がスマホを取り出すと、

 

「あーまってまって、通報しようとしないで。もー、早とちりなんだから」


 その不審者はそう言って、サングラスとマスクを外した。

 あらわになった素顔を見て、俺は絶句する。


 

「久しぶり。会いたかったよ、辻くん」


 

 それは本来、こんな地方の田舎にいるはずのない人物。

 日本が誇る、今や()()()()()()()――


 

 ――東雲桜がそこにいた。


 

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