第7話 大病院の癒し猫
登場人物(と猫)
癒し猫
大きな病院を自由に歩き回っている保護猫。
大抵の猫を「にゃn」の一言で落ち着かせる特別スキルをもっている。
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第7話 大病院の癒し猫
心臓と肺の癒着――
これは先天性(生まれる前から)の病気の可能性が高いらしい。
近所の動物病院の先生曰く、大きな病院へ行って正式な診断書を取り、ペットショップへ提出すると、全額返金で返品が可能。
もしくは同金額のペットと交換が可能とのことだった。
「… … …」
誰がそんなサービスを喜んで受けるの!?
ごめんなさい。
ここに関しては、凄く安心なサービスだと思う方もいるかもしれません。
だけど、私はどちらの提案も選択肢にはありませんでした。
一緒に暮らして半年近い子が先天性の病気だからって返品なんて…。
その後、ルイくんがどうなるのか考えたくなかったし、代わりの猫が来ても、その子はルイくんではないのだから意味がない。
「治る可能性は?」
「手術で何とかなります。ただし保険適用外なので、100万ほどは覚悟が必要かと…」
* * *
家に帰った私とママの気持ちは、すでに決まっていた。
100万出してでも、ルイくんを治す。
しかし、ここは流石に人生経験豊富なママである。
「100万出すのは良いけど、先天性の病気を持った子を販売したことに対する責任を、ペットショップにも持ってもらうべき」
そう意見を出してきた。
ダメ元でも交渉はしておくべきか…。
そう考えた私は、ママと一緒にルイを連れて、片道1時間かけて大きな病院へと向かった。
* * *
大きな病院は、私の知っている動物病院とは異なり、沢山の保護猫がいた。
「臓器移植用の子かな?」
ママがシレっと怖いことを言う。
「いや… うん… どうだろう…」
考え方は綺麗事を言えば嫌だけど……
「ルイくんが助かるためにこの中の1匹が犠牲になる」と言われてしまえば、私はきっとルイくんの命を優先してしまうだろう。
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少しすると先生に呼ばれ、ルイくんを診てもらう。
心電図を取るにあたり、ルイくんがジタバタしてなかなか取れない。
「すみません。この子、本当に体が悪いのか分からないくらい元気で…」
謝る私に、先生は笑いながら看護師さんに「癒し猫連れてきて」と指示を出した。
癒し猫? え? 何の冗談?
少しすると、看護師さんが保護猫を連れてきた。
「にゃん」
保護猫が一声鳴くと、ルイくんはその猫を見つめ――静かになった!!
心電図も急に安定し、緊張が解けたようである。
(毎回言うけど実話です。自分でも信じられませんが…)
「どういう仕組みなんですか?」
驚いた私は先生に尋ねた。
「そういう仕組みだから、癒し猫なんですよ」
先生が笑いながら答える。
そして看護師さんが、保護猫1匹1匹の特性を説明し始めた。
――ここの病院は、保護猫たちを大切に育てているんだ。
その癒し猫の存在は、ルイくんだけでなく、私たちの緊張までも癒してくれていた。
そのことに、この時の私はまだ気づいていなかった。




