第3話 助けたのに猫パンチ
登場人物(と猫)
キー(マンチカン)
大人しいという触れ込みだったはずの女の子。うちに来たらめちゃくちゃ元気で気が強く、ユー様にすら喧嘩を売るお転婆三毛猫。
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第3話 助けたのに猫パンチ
ルイがうちに来て1か月が経った。
生後3か月の猫が新しい環境に慣れるのは早い。
ましてや、どこに行っても「可愛い」としか言われないで育った子にとって、この世界はきっとヌルゲーに見えているだろう。
ルイはもう、完全に我が家を自分のモノだと思っている。
一番心配だったユー様は、なぜかルイ君の遊び相手になってくれていて、珍しく(いや、本当に珍しい)手加減して遊んであげている。
ノンちゃんもルイ君の可愛さを認めたのか、「今だけだからね!」と思ったのかは分からないが、なぜか優しい。
気の強いお転婆娘のキーちゃんでさえ、ルイにはなぜか甘かった。
(何なんだろう……ルイのこの人懐っこさ、猫懐っこさは。)
* * *
しかし、これまで猫を飼ってきた私は、子猫のタフネスっぷりを骨身に染みて理解していた。
忘れもしない――ユー様がうちに来た悪夢の日々。
ユー様は寝る前にたっぷり遊ばせて疲れさせないと、夜中に寝ている人のベッドにやって来て叩き起こすのだ。
「おい! 主人!! てめぇ、何寝とんじゃおらぁ!!」
……もし言葉を話せたら絶対そんな感じで。
寝ている人の足や手や鼻を、起きるまで噛むわ引っ掻くわの大騒ぎ。
私は毎晩4時間、ユー様が満足するまで遊んで――いや、遊ばさせて頂いたのだ。
ルイも男の子だし、ユー様より力ありそうだから、もっときついかもしれない。
……が、ここは人類には獣と違い“英知”がある!
私は天井からゴムを垂らし、その先にねずみのおもちゃを括りつけるという、画期的な自動ねこじゃらし装置を発明した!
「こんな子どもだまし、効くわけない」って?
効くのだ! なんてったって、奴はまだ赤子なのだから!!!
天井からぶら下げた新兵器に、ルイは即食いついた。
(ふ……所詮、獣よ……)
私はルイを一人で遊ばせ、その間に自分の用事を始めた。
* * *
それから10分後。
少し気になって様子を見に行った私は、思わず悲鳴を上げた。
「きゃああああああ!!!」
ルイはゴム紐を噛み切り、そのまま夢中でじゃれ続け――そして絡まっていた……。
慌てて解放してあげると、ルイは私に猫パンチを数発浴びせ、颯爽と逃亡。
(え? 今、自滅して絡まってたのを助けてあげたんだけど……?)
赤ちゃんから目を離すと危ないのは、人間も猫も同じらしい。
結局その夜も、ルイが寝るまで遊びに付き合うことになったのだった。




