第13話 ルイ君戦初冬の陣
猫は自由な生き物である――瀬田川由比研究記録より
そう…自由なのだ。
しかし、やつらは自由過ぎて犯罪をも犯す。
本日は"あいつ"がわずか1日で犯した罪の数々を紹介しよう。
最近は夏の猛暑も過ぎ、過ごしやすくなってきている。
いや、秋らしい気候は1週間も続かず、もはやその寒さは"冬"と言っても過言ではない。
そんな瀬田川家はまだ夏を忘れきれず、扇風機をしまっていなかった。
そんな寒い日の朝――
ドタドタ!!
「寒いけど今日はお休みだからお布団でぬくぬく~♪」と布団のぬくもりを噛みしめていた私の部屋に急にルイが乗り込んできた。
ドスッ!!
そして私のお腹に7kgプレスをお見舞いし――立ち去って行った…。
ルイが立ち去る途中"ピッ"と言う不穏な音がした。
まさか!?
私は不意に感じた嫌な予感に従い、音のした方を見ると…
扇風機が動いている!!!
やろう…。
私は7kgプレスのダメージを負い、扇風機による冷風の直撃に耐えながら扇風機に近づき、電源を消したのであった。
急な寒さで目を覚ましてしまった私は仕方なく、起き上がり、室内用のカーディガンを取りに向かう。
ソファーの上に無造作に置いてあったカーディガンの上には"やつ"が座っていた。
「はいはい。 温めてくれてありがとうね~。」
言いながら私はルイをどかして、カーディガンを羽織った。
――が、すぐに違和感に気付く。
何か匂う。
そして濡れている…。
これはもしや!?
カーディガンを脱ぎ、匂いを嗅いで疑惑は確信へと変わった!
猫のカリカリの匂いだ。
そう!
やつは私のカーディガンをちゅぱちゅぱしていたのだ!!
濡れているし… 洗うか…。
私は泣く泣くカーディガンを洗濯機に入れた。
* * *
その後、別のカーディガンを羽織りリビングへ――
ルイ君が床の水を舐めていた。
床に水?
私は訝し気に、水の出どころを確認する。
そこには、ひっくり返った金魚鉢…。
まさか!!
私は急いで金魚鉢へと向かって確認する。
昨日、寒くなってきたので外に出していた赤ちゃんめだかを室内に退避させて、この金魚鉢に入れていたのである。
ひっくり返った金魚鉢の残った水の中に赤ちゃんメダカは5匹ほど元気に泳いでいた。
ホッとするが、2匹減っている。
私は急いで床の赤ちゃんメダカを探すが、メダカの赤ちゃんは小さくて透明なので見つからない――私は捜索を断念し、金魚鉢を戻し、床を拭く。
寒いのに寒い仕打ちばかり与えがって…。
落ち着いた所で私の怒りはルイに向かう――
「ルゥ~イ~!!」
私の殺気に気付いたルイは逃げ出すが、本気になった人間に猫が勝てる訳もない。
私はルイを捕獲し、床に腹ばいで押し倒す。
そしてルイのお腹の顔うずめてモフモフをする。
ルイはジタバタするが、私の怒りは収まらない。
押さえつけてひたすらモフモフし続ける私だが、やがて、私のモフモフ攻撃から抜け出すルイ。
素直に逃げれば可愛いのだが――
パンパン!!
猫パンチを2発私に放ってから逃げて行った――
やろう…。
私はルイとの戦争の予感を感じながら逃げるルイの背中を見つめていた――




