08-解放
「じゃあ、ホントに昔の記憶はねえのか」
レオンは俺の話を聞いて、改めて驚いた表情をしていた。
名前を告げなかったのは、俺が彼の事を警戒しているからだと思っていたようだ。
「レオンは何でここに居るんだ?」
俺は改めて聞き直す。封印されていると言ってはいたが……
「このダンジョンに閉じ込められてんだよ。言い換えれば封印ってやつだ。だから、ここにいたくているわけじゃねえよ」
レオンは"けっ"と呆れたように、口で音を鳴らした。
「誰に封印されたんだ?」
「世界を司る神……ってやつだよ」
神……か。
俺には出会った覚えがないが、"神"という単語自体は身近に感じた。
「何かやらかしたのか?」
神が無闇矢鱈に封印するとは思えない。
「神に逆らっちまった」
「あぁ、なるほどな」
そして負けたと。
「何が許せなかったんだ?」
「フェリスを封印すること、だな」
フェリス……あぁ、さっきレイを家に招いた女のことか。
「お前の女なのか?」
「俺の所有物って感じはしねえが、まあそうだな」
そういう関係性か。
自分の守るべき相手を、おいそれと他者に自由にさせる方が可笑しい。
だから、レオンの抗いも理解できてしまう。
……俺にも、そういった事があった気がする。
いつも通りで、正確には思い出せないが。
がちゃり──俺と彼の声以外の音が、静けさを破った。
やがて、一軒家の玄関扉が開かれる。
「レイ、話は終わったのか?」
その玄関扉から出てきた彼女に声を掛けた。彼女の後ろには、長い銀髪を携えたフェリスという女性が立っていた。
「はい、マスター」
レイは普段と変わらずに、俺の言葉に頷いてくれる。だが、その直後に少し真剣そうな表情をつくって、
「一つ相談があるのですが」
と言った。
「相談?」
思わず聞き返してしまった。
レイとの付き合いは、もうすぐ400日になる。
これまでの彼女は、俺を助けてくれたり、何か行動を促してたりはしたが、こうして改まって相談を持ちかけてきたりは……記憶にない。
「はい。彼女たちの封印を解いてあげて欲しいのです」
封印を解く、か。
レオンもさっき言ってたな。このダンジョンに閉じ込められてると。
「俺は封印の解き方を知らない」
首を横に振って、素直に口に出した。
「マスターなら、新たな能力を創造すれば対処できるはずです」
そんな簡単に言われてもな……
そもそも、どんな能力を作れば、封印を解くことができるのだろうか?
「封印には様々な形があります」
「……まあ、そうだろうな」
「全てが、何らかの自由を阻害する物です」
「封印って言うくらいだから、行動を抑えるものなんだろうけど」
「ですので、マスターが創造すべき能力は"全ての拘束を解放する力"です」
会話からわかったが、レイの頭の中では、封印を解除するための概念が既に組み立てられていた。
あとは、概念を俺が能力にすれば良いだけってことか。
『"全解乃誓:Lv.ERROR"を取得しました』
レイの声でアナウンスが鳴った。
彼女は俺の中から消えてしまったはずなのに、この能力は俺に残ってるんだよな……
ここら辺の理屈は正直よくわからない。気にする必要が無いから、理屈理由理論を掘ろうとしないのもある。
「やってみる」
創造したばかりの能力を使用する。俺は手始めに隣に立っていたレオンに手をかざす。
「全解」
能力が発動された瞬間、俺の身体が急に重たくなった。
それと引き換えに、レオンの筋肉隆々の身体が光を放ち始めた。
「おおっ……」
彼は自らの身体を、その両腕を、驚き半分興味半分といった感じで見ていた。
「何か変わったか?」
「めちゃくちゃ変わったぜ。
俺さ……封印される前は最強の悪魔だったんだぜ?」
少し勿体ぶったように、彼はにかりと笑った。
褐色な肌と明るい金髪が、夏場の綺麗な海に居そうな南の男のようであった。
「へえ……
つまり、最強に戻ったって?」
やべ、意識が朦朧としてきたな……
「そういうこったな。
……まあ、あんたに勝てる気はしねえけど」
それは随分と買ってくれるじゃないか。
「はは、そうかい」
あ……本格的に……やば……
個別情報一覧
名前:
種族:???
能力
・直感:Lv.MAX
・個別情報一覧
・創造:Lv.MAX
・暗視:Lv.MAX
・解析眼:Lv.MAX
・火魔法:Lv.MAX
・雷魔法:Lv.MAX
・全解乃誓:Lv.ERROR
技術
・格闘術:Lv.MAX