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英雄の欠片、化物となりて。  作者: 言ノ悠
00-プロローグ
5/19

05-ダンジョンマスター

 俺とレイは、1000階層の底から、ようやく400階層に辿り着いた

 俺が初めて目覚めてから、既に300日以上経っていた。


「……特殊な階層ですね」


 俺たちが立っている階層は、今までの階層とは違いドーム型の空間になっていた。


 そして、その中央にひとりの人間がいた。


 こんな空間に存在する人間が、ただの人──ヒューマン族であるはずがない。


「……何者だ?」


 素直に問いかけた。会話ができるならそれに越したことはない。


「人に正体を訊ねるならば、先に名乗ったらどうだ?」


 その男はそう言った。ごもっともな指摘だが俺には少し厳しかった。


「俺には記憶が無くてな。だから、名乗れる名前を知らないんだよ」


 名前くらい教えてくれたって良いだろ?

 と、無言の圧力をレイに向けておく。彼女は美しい黒髪を揺らして拒んだ。

 まあ、わかっていた結果だから、それに対して何かを思うことはない。


「それは、随分と哀れだな」


 憐憫の篭った視線で、ダンジョンマスターは言った。その瞳はある種の老練さを感じさせる。


「だろ?

 会話ができるなら話が早い。俺は上を目指してるんだ。通してくれるか?」


 話は通じそうだ。だがしかし、大人しく通してくれるとは思わなかった。


 何でそう思うのかって?


 ただの直感だよ。


「私はこのダンジョンのダンジョンマスターだ。

 ここを通りたければ、私を殺してから往け」


 ダンジョンマスターはそう言った。

 ほらな、俺の直感は当たるんだ。不用意な殺しは嫌いなんだがなぁ。


「ダンジョンマスターってなんだ?」


 隣に立っていたレイに耳打ちする。


「ダンジョンマスターとは、ダンジョンを管理、支配する存在です」


 彼女の話を聞いて、そこまで強くは思えなかった。恐らくは、戦闘が得意な種族ではないだろう。


「ダンジョンマスター、本当に良いのか?」


 目の前に立っている彼が、俺の相手になるとは思えなかった。


「構わん、掛かってこい」


 だがしかし、ダンジョンマスターはそう言った。

 知性的な瞳を宿す男だから、俺との力の差を理解してくれないかと、そう願っていたんだが……どうやら、戦いは避けられなさそうだ。


 大地を蹴りこんだ。次の瞬間には、俺はダンジョンマスターの真正面に立っていた。


「速いなっ」


 ダンジョンマスターはこの速度を見ても、喋る余裕があるらしい。


 俺は拳を手加減無しで振るった。すると、ダンジョンマスターの身体は弾けた。


 それでも、倒せていないことはわかった。

 何故なら、身体は木で出来ていた──いわゆる変わり身という奴だろう。


「流石だ。下から登ってきただけはある」


 そんな声が聞こえた瞬間、ダンジョンマスターの攻撃を、この身に受ける以外の選択肢は俺にはなかった。

 無数の岩肌が剥き出しになった槍が、身体に突き刺さった。


 俺の身体は、槍の先端に叩き付けられて宙を舞う。俺が先程まで立っていた場所に、ダンジョンマスターの姿があった。


 ……あれもたぶん変わり身なんだろうなぁ。


「……ほう?」


 ダンジョンマスターは不思議そうな顔をしていた。

 槍が俺の身体を貫けなかったからだろう。普通は槍を突き立てたら刺さるんだよ。


「随分と頑丈な身体をしてるな?

 耐久値だけ見れば神話級以上だ」


 ダンジョンマスターは上手く着地した俺を見て、不思議そうな、はたまた興味深そうな表情をしていた。


 そう言えば、その神話級とやらってどれくらい強いんだろうな?

 レイも神話級って言葉を使うが、俺はその階級とやらを詳しく知らない。


「お前は何級なんだ?」


「私か?

 ダンジョンマスターは基本的に神話級だな」


「……そうか」


 再びダンジョンマスターの目前に身体を潜り込ませる。

 それなりの速度で懐に入り込んだつもりだが、ダンジョンマスターはしっかりと俺の速度を目で追っていた。 


 ここで拳を振っても、ダンジョンマスターには当たらないだろう。

 だったら、当たるまで殴る。どれだけ変わり身を使おうが、殴って殴って殴り倒してやる。


 俺の拳とダンジョンマスターの間に岩壁が差し込まれる。そのまま叩き割って、更に一歩進もうとすると、既にダンジョンマスターと俺の距離は離れてしまっていた。

 こいつ、移動も早いのか。


「マスター、倒す必要は無いのでは?」


 少し離れた所から、レイの通る声が聞こえた。


 冷静にダンジョンマスターを見据えて、少し考えてみた。

 レイの言う通りだな。このまま強引に突破する分には、そこまで困らなさそうだ。


「方針変更だ。付いてこい」


「イエス、マスター」


 踵を返して走り出す。

 戦いを選ばないというのは、弱さではない。勝つ必要のない戦いを避けるのは、選択肢の一つだ。


「行かせんっ」


 レイと合流しようとすると、それを阻むように岩壁が地面から生えてくる。それを拳ひとつで爆砕すると、そのまま彼女と合流した。


「彼には、マスターを止める手立てがありません」


「俺も倒す手立てが無いから、条件的には引き分けって感じだな」


 俺たちの現状認識はほぼ同じだった。


「急ぐぞ」


 俺はレイを抱えて、399階層に繋がる階段に向かって走り出した。

 レイを腕に抱え上げると、そのまま全力で駆け出した。


 レイは俺よりも足が遅い。

 だから、全力で移動する時は、レイは抱えて移動する。


 ……そもそも、俺より足が速いやつがいるのか些か疑問ではある。


 振り返ることはしなかったが、ダンジョンマスターが俺たちを追い掛ける気配はなかった。


「結局、あいつは何だったんだろうな?」


 今までの敵とは違い、どうしても相手を害してやろうという殺意が感じられたんだが、あのダンジョンマスターからはそれが感じられなかった。


 今も追ってくる気配がない。


「マスターが試されたような、そんな感じがしました」


「試された……か。門番的な立ち位置だったのかな」


「それはあると思います」


 岩肌に削られた、上の階層に繋がっている階段に辿り着いた。


「後は階段を登るだけだな」


 俺はレイを地面に降ろす。彼女と共に399階層に足を踏み入れる。


「またか──」


「変わり映えしない道が続きますね」


 その先に続いていたのは、何度も通ったような岩肌の一本道だった。

 個別情報一覧ステータス


 名前ネーム

 種族レイス:???

 能力アビリティ

 ・直感センス:Lv.MAX

 ・個別情報一覧ステータス

 ・創造クリエイト:Lv.MAX

 ・暗視ナイトビジョン:Lv.MAX

 ・解析眼アナリシス:Lv.MAX

 ・火魔法ファイアマジック:Lv.MAX

 ・雷魔法ライトニングマジック:Lv.MAX

 技術スキル

 ・格闘術マーシャルアーツ:Lv.MAX

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