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英雄の欠片、化物となりて。  作者: 言ノ悠
00-プロローグ
4/19

04-レイとの出会い

「んっ……」


 俺の意識に光が差し込んだ。よく眠っていたようだ。


「お目覚めですね。マスター」


「ああ、おはよう。レイ」


 レイの声が聞こえた。俺はその言葉に挨拶を返した。


 ……挨拶を返し、た?

 あれ、えっと……?


 その信じられない事実に、頭が全力でフル回転させながら、上体を勢いよく起こした。


 えっと、今、俺は喋ったよな?

 ってか、俺の目の前に黒髪黒目のとても美しい女性がいるんだけど、これってどういうことだ?


 改めてまじまじと観察する。彼女は長く美しい黒髪を下ろしていて、その瞳は吸い込まれそうな程に真っ黒であった。


「マスター。目を白黒させてどうしたのですか?」


 隣に座っていた彼女は、そんな俺の動揺を察したのか、優しい手付きで俺の頬を撫でた。


「……君は誰だ?」


「忘れてしまったのですか?

 私はレイルバレル。マスターの従者ですよ」


 えっ、えっ……


「え"え"え"え"え"え"え"えぇえぇェェェェっ!?」


 思わず絶叫してしまった。

 確かに1000階層から500階層までの間で、こいつ俺の能力の一部なのにやたら自我を持ってるな、とかはずっと思っていた。

 でも、能力は自分の一部なんだから、自分の自我の裏面みたいなものだと考えていた。


 まさか、完全に別人格だったとはな。


「驚き終わりましたか?」


 彼女は面白そうな表情を浮かべてていた。


「いや、まだ驚いてる」


「マスター、感情の上がり下がりが大変ですね」


「いや、レイのせいだからな?

 って、こうやって出てこれるなら、最初から出てきて話し相手になってくれれば良かったのに」


 1000階層から500階層まで、誰も話す相手が居なかったんだぞ?

 それなりに寂しかったんだけどなぁ……


「マスターの考えに、偶に返事はしてたかと思いますが?」


「いや、そうかもしれないけど、実際に口で喋るのとは違うだろ?」


 温かさが違うっ!

 温かさがっ!!


「そうですか?

 そういう所は昔から変わりませんね」


 言葉だけの時からは想像ができないほどに、レイは柔和な表情をして話していた。


 って、今とんでもないこと言ったな?


「俺の昔を知ってるのか?」


「あっ……」


 レイは"しまった"といった表情をしていた。そして、少しだけ顔を引き締めてから、更に言葉を続けた。


「マスターの言う通りですね。私もついつい緩んでしまったのかもしれません。

 ですが、マスターの過去に触れることはできないのです。

 もちろん、勝手に思い出す分には問題ないのですが……」


「……そうなのか」


 どんな理由があるのかは、過去の記憶がない俺にはわからない。

 だけど、こうやって面と向かってレイと話してみると、とても俺の敵に回るような存在には見えなかった。


「レイはどうして、こんなに美しい女性になったんだ?

 いや、どうやって……と聞くのが正しいのか?

 それとも、元からレイはこういうことができたのか?」


 だから、別の疑問を彼女にぶつけた。

 美しいというのは、皮肉ではなく紛うことなき事実だ。


「この姿は、私が霊体になる前の姿なのです」


 霊体──物質的な肉体を持たない精神的存在のことだ。


「へえ、そうなのか」


 俺の知らない過去の話だから、ふわっと流すしかない。


「マスターを包んだスライムの身体を乗っ取って、この身体に変身したのです」


「あぁ、あのスライムを……いやまて、乗っ取るってなんだよ?」


 意味がわからない。


「元を正せば、私の霊体はマスターの身体に定着していませんでした」


「霊体はひとつの物理的身体にひとつ、という常識は知ってる」


「マスターのおっしゃる通りです。

 少し訂正します。

 マスターの霊体が定着した肉体に、新たに私の霊体は定着させられませんでした」


「だから、俺の肉体から離れやすかった?」


「はい。

 スライムとは意識の薄い生命体ですので、私ほど強い意識があれば、その身体を乗っ取れると思ったのです。

 上手くいけば、私も身体が手に入るかもしれないと、そう思いました」


「その予想が当たった、ということか」


「はい。ですので……こんなこともできますよ」


「おおっ……」


 レイの右手が液体状の触手に変わった。その様子を見て、思わず感嘆の声がこぼれた。


「面白い身体だな」


「……その点では、マスターもまた服が……」


「あっ……」


 また服が無くなっていた。いや、なんでだよ……

 ってか、面白い身体ではないだろ。何が"その点では"だ。


 能力"創造"を使用して、前まで着ていた一張羅を作成した。黒の長袖の軽衣に長裾の脚衣を身につけた。


 この「創造」という能力は、「能力創造」や「衣服創造」など、いわゆる“創造系”の能力を統合したものだ。


「先に進むか」


 少し気まずさを感じて、立ち上がった俺は進行方向に視線を向けた。


「ふふっ、そうですね」


 どうやら、そんな俺の感情も筒抜けになっている感じがした。


「そんなに苦い顔をしないでください」


 レイも静かに立ち上がった。無駄のない動きと美しい姿勢が、どこかしなやかな印象を与えていた。


「本当に俺の昔を知ってるんだろうなって、そう思ってさ」


「そうですね。私から見ると、マスターとは長い付き合いです」


 レイから見た俺との付き合いと、俺から見たレイとの付き合いは、同じようで全く違う。

 少し寂しいような、けれども、彼女は教えられないと言うから黙るしかない。


 ……気になるなぁ。


「先に進みましょう」


 レイは変わらずに俺の行動を促した。

 声色は機械的にも聞こえたが、表情はとても柔和であった。


 変わらないことを悩んでも意味がない。

 レイに反抗する理由もないから、言葉の通りに先に進むことにした。

 個別情報一覧ステータス


 名前ネーム

 種族レイス:???

 能力アビリティ

 ・直感センス:Lv.MAX

 ・個別情報一覧ステータス

 ・創造クリエイト:Lv.MAX

 ・暗視ナイトビジョン:Lv.MAX

 ・解析眼アナリシス:Lv.MAX

 ・火魔法ファイアマジック:Lv.MAX

 ・雷魔法ライトニングマジック:Lv.MAX

 技術スキル

 ・格闘術マーシャルアーツ:Lv.MAX

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