表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄の欠片、化物となりて。  作者: 言ノ悠
00-プロローグ
13/19

13-衣食住の変化

「んっ……」


「おはようございます、マスター」


「おはよう。キング」


「おはようございます、主君」


 目を覚ますと、俺──シンはレイの腕の中にいた。

 声を頼りにあたりを見回すと、レオンの姿があって、すぐそばにフェリスもいた。

 それから、レイの顔を見て、さらに周囲に視線を向ける。


 まわりの景色が、さっきまでとはまるで違っていた。

 レオンやフェリスと出会った、あの草木が生い茂るフィールドは跡形もない。

 代わりに広がっていたのは、ゴツゴツとした岩の壁。見慣れた、ダンジョンの風景だった。


「……恥ずかしいな」


 レイは力はあるけど、見た目は華奢な黒髪の美女だ。

 そんな彼女に抱きかかえられてるなんて、なんというか……絵面的にどうなんだ、って感じだ。


「下りますか?」


「ああ、下ろしてくれ」


 俺は彼女の腕から下りた。


「キング、調子はどうだ?」


 厳つい身体で、気さくそうに言った。


「レオン、そのキングって呼び方を止めろ」


 キングって言われるのはこそばゆい。俺は王様じゃないしな。


「いいじゃねえかよ。俺にとってはキングなんだし」


「せめて、名前で呼んでくれよ」


 俺には名前があるんだ。マスターとかキングとか言われ続けると、意味が無いじゃないか。


 すると、レオンが嫌そうな顔をした。


「そうですね。私も主君ではなくシン様とお呼びしますね」


 話が平行線になるかと思いきや、フェリスが事の顛末を決めるように告げた。


「レオンも良いですね?」


「うっ……わかったよ……」


 短い期間でもわかったが、レオンは彼女の尻に敷かれている。

 フェリスが"こう"だと決めてしまえば、彼は何も言い返すことができない。


「レイさんも良いですか?」


「私はマスターとお呼びします」


「……レイさん?」


 レイの言葉を聞いて、フェリスは銀色の美しい視線を鋭くした。


「……嫌です」


 その視線から逃げるように、レイは顔を背けてしまった。


「まあまあ。どうしても嫌なら、無理にとは言わないよ。な?」


 空気が悪くなりそうだったから、俺は深追いしないことにした。


「じゃあ俺もキングって──


「レオン、ふざけるのはその辺にしておきなさい」


 ──はい」


 フェリスにピシャリと言われて、レオンは一気にしおれた。借りてきた猫みたいだ。


「シン様、こんな奴ですが力はあるので、使ってやってくださいね」


「……まあ、必要になったらな」


 とはいえ、俺が騎士を使う場面なんて、あるんだろうか。

 でも、レオンがそばにいるだけで、それなりに威圧感は出せそうだ。少なくとも見た目だけは。


 レオンは悪魔らしい褐色肌であり、めちゃくちゃ筋肉隆々だからな。

 俺みたいにヒョロい奴よりも、視覚的によっぽど強そうなんだよな。


「──敵だ」


 急に、レオンの声が変わった。軽口を叩いていたさっきまでとは違う、とても冷えた声。

 彼は肩に大鎌を担ぎ、大盾を構えて正面を睨みつけていた。


「蹴散らしなさい」


 フェリスがそう告げると、レオンの身体が光った。彼女が何かをしたのだろうが、それを調べる気にはならなかった。あまり興味が湧かなかった。


「おうよっ」


 レオンの前に立ち塞がったのは、大きな大きな蛇だった。

 そして、あっという間に一刀両断されて、息を引き取った。

 レオンの大鎌は、特に抵抗なく蛇を斬り裂いたのだった。


「こんなもんだぜ。どうよ?」


 彼にドヤ顔された。俺は大人しく親指を上げて、グッドサインを出してやった。


「レイ、あの化け物はなんだ?」


「あれはレジェンド・サーペントです。伝説級の蛇種の……その定番ですね。

 他にも蛇種には伝説級が多く存在します」


 あれが伝説級か。今までの神話級とは雰囲気が違った。

 神話級は"触る神に祟りなし"って言葉が似合うが、伝説級は"強大な何か"って感覚を抱いた。


「先に進みましょう」


 レイは伝説級の化け物を前にして、何の感慨も持たずに淡々と前進を促した。


「おいおい、伝説級を倒したんだから、もうちょっと何かあっても良いだろ?」


 その冷淡さにレオンは声を上げた。


「……たかが伝説級を倒したくらいで、何があると言うのですか?」


 レイは冷酷な視線を向けた。そこには心做しか、様々な感情が含まれているように見えた。


「そんな言い方──


「レオンっ!」


 ──わかったよ」


 フェリスの言葉で、レオンは不貞腐れながらも、渋々と口を閉じた。

 レイの冷淡さは、今までの俺は気にならなかったが、他者から見ると気になるものらしい。

 何が彼女を冷淡たらしめるのか。そんなことを、つい考えてしまうくらいには、俺も気になってしまった。


 神話級も伝説級も、どちらも倒せば英雄と呼ばれて相応しいはずだ。

 それを軽々と一刀両断したのだから、レオンの腕前や実力は折り紙付きだ。


 伝説級だとか、神話級だとか、さっきレイに聞いたばかりなのに、理解している知識になっていることに違和感を感じるな……

 過去の俺が知っている事柄なんだろうな。


「俺はいい騎士だと思ったよ。だから、これからも頼んだ」


 俺は、レイが落胆させた気持ちを拾い上げるように、レオンを賞賛した。


「おうよ。シン王のお心のままに」


 キングとは言われなくなったが、シン"王"と呼ぶことにしたらしい。

 そもそもキングとか王とか、呼ばれたくないんだけどな……

 騎士に名を与えた時点で、それは無理な話か。騎士ってそういう生き物だからなぁ。


 それはある種の諦めにも近い感情で、訂正する気も起きないから、俺は肩を竦めるだけにした。


 349階層からは、出現する化け物に偏りがあった。

 例えば、349階層は蛇系の化け物ばかりが姿を見せ、それを見てはすぐにレオンが一刀両断した。

 更にひとつ登ると、今度はトカゲのような爬虫類型の化け物が多く現れた。火を噴いたりするのもいた。


 俺たちは旅人数が増えたから、一階層を抜けるのに今まで以上に時間が掛かった。

 俺が三人抱えて走るわけにもいかないから、進む速度は当然落ちた。

 だがそれ以上に、レオンやフェリスは、俺やレイとは違い食事が必要で、衣食住に掛かる時間が増えたんだ。


 何を食事にしたかって?

 倒した化け物を調理する以外に方法はなかった。


 倒した化け物は、レオンが鮮やかな手つきで捌いていた。火もレオンが起こしていた。ただ、焼くのはフェリスがやっていたな。


 レオンとフェリスは黙々と作業のように食べていた。俺も一口齧ったが、食べた化け物は美味しくなかった。


 そう思うってことは、過去の俺は、美味い食事をしたことがあるのだろう。

 ……なんて、過去の俺に想いを馳せてはみたが、それ以上は何も思い出せなかった。



 そんな感じで、俺たちは一つひとつ階層を登って行った。

 ちょうど300階層にたどり着くと、そこには岩肌の通路ではなく、金属製のより強固な通路が広がっていた。

 個別情報一覧ステータス


 名前ネーム:シン・エルヴァディア

 種族レイス:???

 能力アビリティ

 ・直感センス:Lv.MAX

 ・個別情報一覧ステータス

 ・創造クリエイト:Lv.MAX

 ・暗視ナイトビジョン:Lv.MAX

 ・解析眼アナリシス:Lv.MAX

 ・火魔法ファイアマジック:Lv.MAX

 ・雷魔法ライトニングマジック:Lv.MAX

 ・全解乃誓オールリベレートオース:Lv.ERROR

 技術スキル

 ・格闘術マーシャルアーツ:Lv.MAX

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ