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英雄の欠片、化物となりて。  作者: 言ノ悠
00-プロローグ
12/19

12-天使として

「フェリスさん、何故あんなことを?」


 レイさんは、どこか怒りを滲ませた表情を浮かべていた。

 その腕には、彼女が何よりも大切にしている彼が抱えられている。

 その気迫に押されたのか、レオンが私の前へと進み出て、庇うように立ちはだかった。


「レオン。今は、あなたの出番ではありませんよ」


 私はレイさんと、話をしなければなりません。

 彼女の腕の中にある彼──その過去に、私が踏み込んだことについて。

 どうして、なぜ、そんなことをしたのか。言葉にして、向き合う必要があります。


 私は、エルヴァディアの名を拝して在る者。

 かつて夫婦であり、今はそうではないとしても。

 本来ならば消えるはずもない過去を、無かったことにしようとする彼女と、向き合わずにいるという選択は、私にはありません。


 そして何よりも、彼女自身が「無かったこと」など、本心では望んでいないのです。

 彼女の魂は、忘却を強く拒んでいる。

 理性ではなく、感情がそれを否定しているのです。


 ……私には、それがわかってしまう。


 だからこそ、嘘を吐く彼女に、はっきりと「否」を突きつけなければならない。

 天使の性なのでしょうか。魂の在り方と正しく向き合い、心のままに、幸せへと歩んでほしいと願ってしまうのは。


 私は一つ、息を吸って、そして──


「貴女は、彼に愛されたいと思っているのでしょう?」


 確信を、そのまま言葉にして突きつけた。


「……違います」


 レイさんは、少し気圧されたように言った。


「それは、理屈と理論による否定ですよね?」


 “私が関わらないほうが、彼は幸せになれる”という思い込みに過ぎない。

 仮にそれが事実であったとしても、それは貴女が“そうしたい”ことではないはずです。


 “正しさ”と“願い”は、同一ではありません。


「それは……そうかもしれません。けれど、彼は……私がいたから……」


 私はレイさんの過去を知りません。

 彼と彼女がどんな時間を過ごしてきたのかも、見てきたわけではない。

 けれど──


「……それの何が、悪いのですか?」


 彼が不幸だと、貴女は思っているのでしょうか?


「……ええ。彼はもっと自由に生きられたはずなんです。それを、私が……」


「自由に生きられなかったことが“悪”だと、そう決めつけているのは、貴女自身ではありませんか」


「……では、自由を失うことが、不幸ではないと?」


「人によります。

 それを不幸だと感じる人もいるでしょう。けれど、そうではない人もいるかもしれません」


「でも……私は……」


 レイさんは、愚かではないのです。

 シン・エヴァルディアという存在の強大さを、その名を通して知ってしまった。

 だからこそ、“愚か者に彼の妻が務まるはずがない”と、そう思ってしまうのでしょう。


「……私は、自信が持てないのです」


 その言葉こそが、彼女の本音なのだと、私は確信しました。


 彼女は、とても悲しそうな顔をしていました。

 胸が締めつけられるような、そんな深く沈んだ表情。

 あまりに悲しげで、あまりに痛ましくて……


「いつか、自信が持てるといいですね」


 積み重ねた年月が、かえって“自信”や“自我”と呼べるものを蝕むことがある。

 そんな話を、どこかで聞いたことがあります。


「それは……無理な話です」


 その返答には、取り繕いの欠片もなく。

 今の彼女には、本当にそうとしか思えないのだと伝わってきました。


 けれど、だからこそ。

 封印を解いてくださった恩を、私は“支える”という形で返していきたいと思っています。


 天使として──誰かの心を照らし、導く役目を果たせるのなら。


 個別情報一覧ステータス


 名前ネーム:フェリス・エルヴァディア

 種族レイス:プリモーディアルエンジェル

 能力アビリティ

 ・識魂ソウルディサーンメント:Lv.MAX

 ・祝福ブレッシング:Lv.MAX

 ・浄化ピュリフィケイション:Lv.MAX

 ・加護ディヴァインプロテクション:Lv.MAX

 ・封滅結界セラフィック・セイル:Lv.1

 技術スキル

 ・飛翔エンジェルフライト:Lv.10

 ・護身術アイギスアーツ:Lv.10

 ・生活雑務ライフメンテナンス:Lv.6


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