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100ものアレルギーを持つ男  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
第一章 触れられない恋
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第9章 触れられない距離

研究室の空気はいつもより重く、静かだった。

 陸と楓は向かい合って座っているが、間に見えない壁が立ちはだかっているようだった。


 「もう少し近づきたいのに……」


 陸の心の声が聞こえる気がした。だが、彼の体はそれを許さない。

 ほんの少しの接触さえ、体に激しい反応を引き起こす。


 「僕たちは、どうしても“触れられない”」


 楓はそっと陸の手を見つめた。

 「でも、心は繋がってるよね?」


 陸はうなずいた。

 「うん。でも、それだけじゃ足りない時がある」


 彼女は微笑んだ。

 「だからこそ、私は工夫する。君が安全に過ごせる方法を、一緒に考えたい」


 その言葉は、陸の心に染み渡った。

 触れ合うことができなくても、心はいつだって近くにある。


 ***


 その日、楓は特殊な素材で作られた薄いバリア手袋を持ってきた。

 触れても陸の皮膚に刺激を与えない、特注のものだった。


 「これなら、少しは近づけるかもしれない」


 陸は手袋をはめた楓の手を見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。


 その瞬間、世界が少しだけ優しくなった気がした。


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