光翔の恋愛編『風の向こう、君の隣へ』(全6話)
第1話:出会いの季節
春。都内の大学に進学した光翔は、講義やサークル勧誘で慌ただしい毎日を送っていた。
高校時代の恋──未衣奈の面影が心の隅に残っている彼は、どこかで“もう恋なんてできないかも”とさえ思っていた。
そんなある日、軽音サークルの新歓ライブで、ピアノを弾く女子・**栞**と出会う。クラシックピアノ出身の彼女は、ロックとの融合を試みていた。彼女の音は、理屈ではなく、まっすぐ胸に響いた。
栞「人って、音楽で惹かれ合うことってあると思うんです。なんか、光翔くんとはそういう感じ。」
胸の奥で、何かがかすかに動き始めた。
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第2話:近づく距離、すれ違う心
同じ軽音サークルに入った二人は、自然と行動を共にすることが増えた。光翔はギター、栞はキーボード。バンドを組むことになり、リハーサルで何度も顔を合わせる。
だが、ある日栞がライブ後の打ち上げを断った。理由を訊くと、「そういう場、ちょっと苦手なんだ」とだけ答えた。
光翔「俺たち、ちゃんと話してるようで、何も分かってないのかもな…」
光翔は、彼女との距離が近づいたようで、何か大事な壁があることに気づき始める。
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第3話:揺れる想い
夏の合宿。深夜の海辺、栞と二人きりになる時間が訪れた。
波音を聞きながら、光翔はふと未衣奈の名前を口にしてしまう。
光翔「…高3の時、ずっと好きだった子がいた。結局、自分の想いをうまく伝えられなかったんだけど。」
栞「…そっか。そういう人、誰にでもいるよね。」
栞は静かに笑ったが、その瞳は少しだけ寂しそうだった。
合宿が終わってから、栞のLINEの返事は少しずつ遅くなる。心がすれ違っていくのを、光翔は感じていた。
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第4話:伝えられなかった言葉
大学祭のライブの日。トラブルでバンドメンバーの一人が来られなくなり、急遽二人だけでのアコースティック演奏に。
曲の終盤、光翔はギターを止め、マイクを通して観客ではなく、栞に語りかける。
光翔「過去のこと、ずっと引きずってた。でも今は、栞の音が一番、俺の心に響く。…好きだ。」
演奏が終わった後、栞は何も言わず、会場を去った。
栞「……ごめん。今の私じゃ、ちゃんと向き合えないの。」
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第5話:一歩、踏み出す勇気
栞がサークルを休み始めた。光翔は彼女の部屋を訪ねる。
栞は、音楽家だった父親が病に倒れ、家計と夢の板挟みになっていたのだ。
栞「恋とか夢とか、甘いことに逃げたくなかった。でも……逃げるの、もう疲れちゃった。」
光翔は手を伸ばす。
光翔「逃げるんじゃなくて、誰かと歩くんだろ? 俺と、もう一回…始めようよ。」
彼女はゆっくりと手を握り返した。
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第6話:恋は未来に続いている
冬。二人で初めて書いたオリジナル曲「風の向こうへ」を披露する日。
歌詞には、過去を乗り越え、未来を信じようとする強い意志が込められていた。
栞「あなたとだから、音楽がもっと好きになれた。」
光翔「俺も、ようやく“今”をちゃんと生きられる気がするよ。」
ライブハウスの小さなステージで、二人は確かに「未来」の始まりを踏み出した。
そしてその音は、風の向こう──未衣奈の知らない場所へと、静かに響き渡っていた。
あとがき
光翔の恋は、未衣奈との別れを経てようやく始まる「新しい愛」です。
音楽を通して出会い、ぶつかり合い、理解し合う物語は、青春の痛みと成長を象徴しています。




