自殺して転生すると、とんでもないものになるんだわ…
異世界転生ものって、アニメなんかじゃよくある話だけど、本当にこんなものに転生するとは想像すら出来なかったわ…
もう、一生ご主人様にぶら下がって生きていくしかないのかなぁ…
そんなわけで…
吾輩は息子さんである。
名前などあるわけないが、友達からは「ブンさんの息子さん」と呼ばれている。友達はけっこういる。いわばご主人様の裏の顔としてこういった社交場にてさまざまな情報を収集している。しかしながら、たまに誤作動勃起を起こすこともあれば、逆にいざ鎌倉ってときに突撃もできずに、ご主人様を悩ませてしまうこともあるんだいね。
「そいつぁ違うよ、吾輩の知ってるヤツは、もっと上品なんだけんどね」
「はぁ?あにこいてるだぁよ、おまいさんは!あんにも分かっちゃねぇな…、高級品はホントにツプツブがいっぱいなんだってばよ!」
吾輩と茂さんの息子さんとの会話に周りは白けムードだ。
右端にいる壮太さんの息子さんは、もうそんな話にはトンと興味がないね、とでも言いたげにダンマリを決め込んでいやがる。おや、身体をひねってそっぽを向いたね。
茂さんの息子さんよ、おめえのご主人さんは、もう40半ばを過ぎているよな、ちょっとメタボ気味だぜ、その腹。お?、その左のステップ脇にいる安二郎さんの息子さんは、また始まったよコイツらは、とでも言いたげな表情で吾輩らを見つめてやがる。だけど、いつもいつもどっしりした態度には貫禄あるよなぁ。このお方のご主人様がじいさまだなんて、とてもじゃないが誰も考えられねぇよ。この貫禄と風格は、いったいどこから来るのかねぇ。
いまの時間この薬湯ぬるま湯に浸かっているのは、この4人だけさね。
平日の午後…つってももう夕方だ。4時を廻っちまったい。晩秋のこの時期、日の入りは本当に鶴瓶落としのようだなぁ。夕闇が辺りに漂い始めてやがる。けんどよ、ここのスーパー銭湯内はホント、のどかな雰囲気だいなぁ。露天風呂の方にも5、6人ほどしか人影が見えなかったぞ。やっぱ同じ首都圏でも、神奈川や千葉と違って埼玉はリラックスできるんだいね。ここから小1時間も電車に乗りゃあ大都会に着くってのによぉ。至る所に武蔵野の面影を残す樹林はあるし、純朴で世話好きな人は多いし、住むにゃあホントいいところだいなぁ。人間らしい生活ってのは、やっぱりリラックスは大切だいね。おっと話がズレちまったわ…
「でもさ、そのツブツブ、気持ち悪くねぇか?なんか変な病気みたいじゃねぇか」
吾輩は苦虫を噛み潰したような表情をしていたと思う。だが茂さんの息子さんも負けちゃいねぇ。
「あにこいているだぁよ、これが気持ちいいんだってばよ!ツブツブが俺の頭をずりんずりん刺激してくれるんだからよぉ、おまいさんにはわからねぇやなぁ」
吾輩は、ああそうかい、てな感じで顔を横に背けた。どだい茂さんの息子さんの話は、いつも具体性に欠ける。ただ単に、いいやね・凄いやね・良かったいね、の繰り返しだ。武州弁丸出しの品のねえ言い方でさ、どのようにいいのかどのようにすげえのかが、まったく説明されていねぇんだぜ。埼玉はいいところなんだけど、武州弁だけはやだいなぁ…
「あんだかやぁ、聞いてんかよぉ〜ブンさんの息子さんよぉ」
茂さんの息子さんは身を乗り出して説明しだした。
「あのよぉ、数の子天井ってのはよぉ!」
吾輩は益々不快になった。茂さんの息子さんはしつこい。なぜそんなにまでして数の子なんとかを説明してえのか。吾輩は壮太さんの息子さんに振ってみた。
「なぁ今の話、どう思いなさる?おたくは数の子なんとかの御経験はあるんすか?」
壮太さんの息子さんは、暫し考えてから睨みつけるような表情で吾輩に言った。
「儂もまだそいつには会ったことはない。でも噂には聞いたことがある。なんでもスグにゲロってしまうくらい良い感じだそうじゃ。茂さんの息子さんは別段嘘をついているわけじゃないと思うがの」
そう言うと壮太さんの息子さんは深く沈み込んだ。
ぬる湯の温度は約38度。何分入ってものぼせない。いいねぇ。こういう他愛のない話題を論じる井戸端会議には、最適な水中空間だ。対角線の長さは3メートぐれえかな…正六角形の御影石浴槽に、4人のご主人様たちが深〜く沈み込んでいる。後頭部をヘリに乗せて、顎のあたりまでどっぷりと浸かっている。まさに湯ったりリラックスだいなぁ。そんでもって、ご主人様たちが足を伸ばすと吾輩らの距離はホントにスグ近くになるんだいな。平日の夕方は空いてていいねぇ。吾輩らもゆっくり会話が楽しめるってもんよ。
「ブンさんの息子さんよぉ、ホントはよぉ、あんまり経験がねぇんじゃねぇのかい?いつも俺たちに言ってる経験値だったら、数の子の1つや2つ、当たってやしねぇかなぁ」
茂さんの息子さんが何かを含んだような言い方をする。吾輩が嘘の経験値を吹聴してる、って思ってやがるのか?いんやぁ、そんなことはねぇよ。吾輩のご主人様はホントに女にモテるんだぞ!吾輩はいつもご主人様の命令どおりに穴に突撃するだけだ。今の姿よりも数倍も大きくなって、そして鋼鉄のように硬くなるんだ。膣という名のダンジョンに入ると、ご主人様が作るリズムに合わせて、その穴を攻略していく。こいつぁ長時間の突貫作業なんだぞ!何度も何度も突いて攻略してゆく。やがて俺の高揚感も限界点に到達してくる。そうなってから、やっと穴の中で大量のゲロを吐き出せる。時々きゅうくつなゴムに包まれての作業のときもあるが、概ね直の作業が多いかな。
そのダンジョン内に直に大量の白いゲロを吐き出し、相手を恍惚の人にして攻略したときは、本当にすっきりした満足感。そして、なんとも言えない充実感があるんだいね。
吾輩のご主人様も満足感そうな笑みを浮かべ、最後に絞り出す一口ゲロを優しく拭き取ってくれるんだ。
でも吾輩のご主人様も、もう40だ。そろそろ決まった穴を持たなきゃいけねえ、って思ってるんだけど、ご主人様はそんな気持ちは全然ねえみてえだ。毎日が忙しいらしいやね。仕事も私生活も毎日がフル稼働。いつか身体が壊れちまうんじゃねえか、って思っちゃうよ。週一、ここのスーパー銭湯に来ることがご主人様の唯一の息抜きかな。
吾輩は、このようにモテるご主人様の倅だ。ご主人様のお陰で、もう百個以上の穴に特攻したんだぜい。でも茂さんの息子さんが言うような、数の子なんとか、って言う穴には遭遇した経験がねえ。茂さんは、どう見てもモテるタイプじゃねえぞ。なんか河馬のような体型だし、顔も饅頭のようにボテっとしてる。そんな茂さんの息子さんが、どうして吾輩より色んな穴を知っているんだ?