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11/21

出産後の日々

今回、クリスsideだと思われていた方、申し訳ございませぬ。

この次の次くらいかな?

もう少しお待ちくださいませ。

( ´>ω<)人スマヌッ





ジュリアは出産翌日の診察で、ある事を告げられた。


「妊娠中はリューイくんの魔力と、魔力焼けの中和剤を服用していたから感知できなかったけど、ジュリアさんあなたの体内に別の人間の魔力残滓を感じるわ」


その言葉を聞き、思わずジュリアの眉間にシワが寄る。


「……それって、もしかしてマーキングされている、という事ですか?」


「おそらくは。他者の体内に残滓が残るほどの濃度の濃い魔力を注ぎ込むなんて結構な高魔力保持者でないと出来ないから、意図的に仕込まれたのは間違いないわね……相手に心当たりは?」


そう聞かれ、ジュリアは眉間にシワを寄せたまま答えた。


「……あります」


そんなの、クリスしか有り得ない。

ジュリアがキスや肌を許したのはクリスしかいないのだから。


深々と刻まれたジュリアの眉間のシワを見ながら、医師は言った。


「もし、その相手に居場所を特定されていると思うなら、中和剤を薄めたものを定期的に接種するのも手よ?」


「そんな方法があるんですか?」


「ほとんど知られていないけどね。どうする?」


返事を促され、ジュリアは考えた。

以前のクリスのジュリアに対する執着ぶりなら、マーキングをされていたと聞いてもナルホドなと思うし居場所を特定されて追って来られるという可能性が高い。


だけどクリスの元を離れてほぼ七ヶ月、その間六ヶ月ほどは中和剤を服用していた。

もし当初は探していたのだとしても半年も見つからなかったのだ、きっと早々に見限って探索はやめているだろう。


───でも絶対にリューイの存在を知られる訳にはいかないし……。


ジュリアは医師に答えた。


「念のため服用します。処方をお願いできますか?」


「もちろんよ。授乳中でも服用出来るから安心してね」


「ありがとうございます」


こうしてジュリアは産後も定期的に中和剤を服用し続け、クリスとの繋がりを絶ったのであった。


一週間の入院の(のち)にジュリアはリューイを連れて自宅に戻った。

産院まで八百屋のおかみさんが迎えに来てくれ、ひと月後に産褥期が落ち着き床上げとなるまで親身になって世話を焼いてくれた。

産後、無理をしてでも一人で頑張らねばと思っていので本当に感謝してもしきれない。


そしてリューイが生後3ヶ月になり、託児所で受け入れて貰える月齢となった。


それを機にいよいよ店をオープンさせる。


クリスに散々強請(ねだ)られて作らされた、ジュリアの一番の得意料理となったドリア専門の店だ。


“町の小さなドリア店” それが店名だ。


この小さな店がジュリアのこれからの職場になるのだ

数種類の熱々のドリア、これを武器に親子二人で生活してゆかねばならない。


「頑張らなくちゃ!」


それにしてもご近所と仲が良いと、店を始めるにあたっても大いに助けとなってくれる事がわかった。


八百屋のおかみも親父さんも、酒屋のおじさんもおばさんも、町内の皆がジュリアのドリア屋を知り合いや方々に宣伝してくれ、そのおかげで早い段階から固定客が出来たのだ。


この町に移り住んで本当に良かった、ジュリアはそう心から思った。


リューイは夜泣きもせずに毎晩ぐっすりと良く眠り、大きな病気一つしない親孝行な子だ。

人見知りもしないので託児所やご近所の人たちにも可愛がられている。

ドリア屋をはじめて早や数ヶ月、商売が軌道にのったのはリューイのおかげでもあるとジュリアは思った。


本当に奇跡のように愛らしく可愛い天使そのものの我が子。


ジュリアはすやすやと眠るリューイの寝顔を見ながらつぶやく。


「こんな可愛い子の存在を知らないでいるクリス、ある意味ざまぁね」


だけど知らないのだからざまぁも何もないかとジュリアは考え直す。


クリスと別れてもうすぐ二年。

きっともうあの次席秘書官令嬢と結婚しているのだろう。

もしかしたらもう向こうにも子どもが生まれているのかもしれない。


クリスの幸せを心から願っているが、リューイのことを思うとどうしてもやるせなくなってしまう。


リューイはこれからも父親の力強い大きな手に抱かれる事はないのだ。

父の温もりを知らずに育つ、我が子が不憫でならなかった。


だが、生を授かった事を疎まれる、厭われる子になるくらいなら最初から父親なんて居なくていい。


───この子が出来た所為で輝かしい人生への道を絶たれたとか、この子さえいなければ、なんて絶対に思われたくない……。


そしてリューイの存在を知られて義務的に責任を取ろうとされるのも嫌だ。


真面目なクリスの事だ。妻やその実家との軋轢が生じたとしても無理にリューイを認知して、養育費を払うだとか父親としての義務を果たすだとかウダウダ言うのは間違いないだろう。


───そういうのは要らない。勝手に生んで勝手に育てているのは私だもの。義務的な責任なんてありがた迷惑だわ。



そんな面倒くさい事になるのはご免なので、絶対にクリスには会いたくない。会うわけにはいかない。


「まぁ心配しなくても、もう会うことはないか」


ジュリアは可愛い息子の寝顔にそう語りかけた。



それなのに……それなのに。



何故、どうして。



三級魔術師資格の更新のためにリューイを連れて訪れた役所で、

ジュリアはクリスと再会してしまったのであった。




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