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禁止事項 out_list

 禁止事項 -out list-①

 ――本日は魔法私立エンデュミオン入学式です。

 街から甲高い声でアナウンスが流れてくる。


 四月七日。時刻は七時一〇分。


「入学式ねえ」


 朝加鍵人(あさかけんと)は新調された制服を身にまとい、学生寮という名の(ただのワンルームマンション)自宅の窓から活気たつ街並みをボッーと覗き見ていた。


 街ではお祭りのように人が朝から出入りしていて、人が多い。

 屋台なんかも出ていて、今日が特別な日なんだと肌で感じるほどに盛り上がっていた。


 ただ一つ違うのは、目の前ではありえないほどに()()が使われているという点。


 手を使わずに物を持ち、足を使わずに歩く。

 そんな当たり前がこの街にはあった。


 そんな世界で朝加鍵人は手を使って物を持ち、足を使って歩くという現実に悲しさを覚えるほどだった。


「いいですねえ、魔法使えるっていうのは」


 魔法や魔術というものが栄えて何百年、魔法適正がある人物はこの魔法都市(まほうとし)に招待される。

 中には魔法が使えない人もいるらしいが、大体は親が使えるとか仕事でこっちに来てるとかそんなところである。


 そして今日はそんな魔法都市が誇る最大で最高最強の魔法学園エンデュミオンの入学式。

 噂では毎年すごい盛り上がりを見せるようで、生徒数は何万といるとパンフレットに書いてあった。


 そんな朝加鍵人も本日、エンデュミオン入学初日。

 世界が誇る最高の魔法学園に入学できたわけだ。

 鼻が高い――とはならなかった。


 なぜなら、朝加鍵人は魔法が使えない。

 魔法の知識もない。

 けれど、実家には入学案内が届いていた。


「なーんで俺が入学なんてするんかねえ」


 魔法学園はエンデュミオンだけではないが、世界最高峰の魔法学園。

 そこに入学を許されるというのは光栄であり、誇りであり、うんぬんかんぬん。


 朝加にとっては魔法なんて縁遠いもので、自分には関係ないことだと思っていた。

 しかし入学案内と制服が届き、流れるままに学生寮へと入寮してしまった。


(さあ、そろそろ出ますかね)


 時刻は七時三〇分。外へ出るには少し早い時間ではあるが、遅刻するよりはマシなのでいってきますと一言残して家を出た。


 ○


 制服を着て、街を歩くと色々な人からおめでとうー! と祝福される。

 ネクタイの色が新入生の学年カラーだと一目でわかるらしい。

 みんな朝加の胸元に視線を置いてから、目を見ておめでとうと祝福していた。


 きっと街に住んでいる人たちには将来有望な魔法使いになるんだろうな、という期待の眼差しに違いない。

(申し訳ないが俺にそんな未来はない)


 エンデュミオンに向かって歩いていると、徐々に生徒も増えていく。

 ネクタイやリボン見ると、みんな学年カラーである緑色を身につけていた。

 つまり朝加の同級生になるわけで、逆にこの中から将来有望な魔法使いが生まれるんだと心の中で祝福していた。


 嫌味っぽく心の中で祝福しながら、学園へと足を向ける。

 すると、緑色のリボンをした同級生が俺をじっと見つめていた。


「?」


「あ、ごめんなさいっ。ポケットが……」


 ポケットと言われズボンのポケットを確認すると、何もなってない。

 いたって普通。

 胸ポケットを見ても、何もない。


「私の勘違いかな、そうなのかな。ごめんなさい、なんか変だなって」


「変ですか?」


 不思議そうに朝加を見つめる瞳はとてもキラキラしていて、長い黒髪が風に(なび)いていた。


「初対面で突然すみません。えっと、風雲(かぜくも)セリカっていいます。あ、同じ緑色だから同級生ですよね!」


「どうも朝加鍵人です」


 朝加はよそよそしくお辞儀をすると、セリカは笑顔で応える。


「よろしくお願いしますっ」


 お互いに自己紹介を済ませた後にセリカは言った。


「よかったら、学園まで一緒に行きませんか?」


 まさかの初日から美少女と登校ですか! と朝加は内心テンションが上がっていた。


 ○


「エンデュミオンに入学できるだけで、すごいって言いますよね」


 朝加とセリカは並んで歩きながら、他愛もない会話をする。

 エンデュミオンはどうとか、魔法がどうとか。

 朝加にとって魔法とは縁遠いものなので、話半分で聞いているのは否めない。


 きっとこのセリカも凄い素質のある魔法使いとして学園に招待されて入学するのだろう。

 朝加にとっては自分とはかけ離れているのだと実感するだけだった。


 でも一体どうしてこんな美少女と並んで登校しているのだろうか。

 朝加の周りの生徒を見ても、誰かと並んで歩いている人なんてどこにもいない。

 ちなみに、基本的に親元を離れて魔法都市で生活するためか皆一人。


 それに関しては朝加もセリカも該当する。

 と言っても親もすごい魔法使いみたいな血筋的な血統的な何かもあるみたいなので一概には言えない。


 他愛もない会話のなかで、セリカは気になることを口にした。


「そういえば鍵人くんは、禁止事項(アウトリスト)って知ってる?」


「あう、なんだって?」


禁止事項(アウトリスト)。今回入学する生徒の中にいるみたい」


「なんだそれ」


「魔法都市法に抵触するらしい危険な人物ってことみたいで、誰なんだと噂になってるみたい」


「へー、そんなのがいるのか」


「噂だけどね。その人が誰なんだってみんな気になってるわけです」


「誰かわからないなら、意味ないな」


「噂では、千石(せんごく)家の人だって言われてますけどね」


「俺にはそういう類のことはまったくわからん」


「鍵人くんもきっとエンデュミオンに入学するくらいだから、凄い素質があるってことだよね。一緒に勉強できるといいなー」


「そのイメージはとっとと捨ててほしいもんだぜ…」


 そんなこんなで歩いていると、世界最高峰の魔法学園エンデュミオンの校門に辿り着く。

 まるで大きなテーマパークの入り口なのではないかと勘違いしてしまうほどの大きな敷地。


 わざわざ校門から敷地内に入るために、並んでいる状態。

 今日は新入生しかいないのに、この人数。

 何千人? 何万人? 数えるのが面倒だった。


「すげー生徒数だな」


「いろんな地方から招待されて、入学するみたいだし…並ぶとは聞いてたけどこんなにとは私も思わなかったよ」


「あれは何やってるんだ?」


 校門へ入る前に、検査場みたいなところで生徒がみんな何かをしている。

 セリカは意気揚々と応えた。


「あれは、本当にここの生徒なのか魔力(マナ)を確かめてるんだと思う」


魔力(マナ)? そんなんでわかるものなのか?」


「わかるみたいだよ。登録されてるみたいで、不正に敷地内に入ろうとした人は罰せられるらしいね」


「ほー」


「基本的には不正で入学しようなんて人いないと思うし、心配することないけどね」


 列に並んでいると、ついに朝加たちの番が来たみたいだった。

 セリカは先に行くね、とゲートのようなものを通る。


 ゲートは緑色に光った。

 緑色に光ると合格というか、入学を許される者らしい。


「鍵人くんも早く早く〜!」


 ゲートの先で、大きく手を振るセリカを見て朝加も足を踏み入れた。

 赤色だった。


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