夏祭りの夜、君は男を脱いだ
アキラとは幼い頃からの付き合い。
いつもいじめっ子から守ってくれてた頼り甲斐のある用心棒だ。
高校生になった今でも、僕はアキラに守ってもらっていた。
そのせいで……なのかな。
アキラがあまりにも男らしく育ってしまったのは。
「おう、裕翔! 一緒に帰ろうぜ」
「ごめん、アキラ。今日はどうしても部活に外せない用事があって……」
「手芸部か。忙しそうだな。じゃ、一人で帰るけどよ、帰り道襲われないように気をつけろよ?」
「あ……、アキラ!」
「ん? なんだ?」
「あのさ……。明日の夜、神社でさ、夏祭りやるだろ?」
「そうだな」
「一緒に行かない?」
「いいぜ? 楽しみだなー。何食おっかなー」
「で……。その……さ。できればでいいんだけど……。浴衣、着てきてくれないかな」
「浴衣なんて俺が持ってっと思うか!? 言っとくがトレーナーとかTシャツしか持ってねーぞ!?」
「うちの姉ちゃんの貸すからさ」
「なんでだよ!? きっっしょいな(笑)! 俺に女みてーな格好させてーのか? 何の罰ゲーム……」
「たまにはさ、女の子らしいアキラが見たいんだ」
「は……? はっ!? 何それ、珍獣に可愛い服着せたいみたいな好奇心か!? 大体、浴衣なんて着てたらおまえのこと守ってやれねーんだけど!?」
「いいよ、もう、守ってくれなくても。これからは僕がアキラを守るから」
「何言ってんだよ、おまえ! 俺がいねーとおまえはなんにもできねーだろ!」
「そんな自分が嫌なんだ!」
===
そして夏祭りの夜、アキラは白地にピンクの水玉模様の入った浴衣を着て現れた。
筋肉のムキムキは隠せてないけど充分女らしい。眩しかった。
「似合ってるよ」
僕がそう言うと、初めて見るような、女の子の笑顔を照れ臭そうに浮かべた。
「男がスカート穿いてるみたいじゃね?」
「そんなことない」
「わあっ! 兄ちゃん、可愛いね!」
おっといつものように僕に絡んでくる不良が登場だ。
「俺らと付き合えよ! なぁ、いいだろ? ハァハァ」
これもいつものように、腕まくりをして全員ぶちのめそうとするアキラを僕は止めた。不良の前に立ち塞がると、言ってやった。
「僕、彼女がいるんです。ごめんなさい」
「はあっ!? もしかして後ろのソイツ、女なの!?」
不良たちをボコボコにしたアキラと手を繋いで境内を歩いた。
「裕翔……。さっき、カッコよかったよ」
振り向くと、彼女が男を脱いでいた。
明るい月に背中から照らされて、僕の目の中で、他のどんな女の子よりも可愛く見えた。